カントの健康の概念について
On Human Health, Gesundheit, by Immanuel Kant
イマヌエル・カント(Immanuel Kant, 1724-1804)は医療や健康の専門家ではなかったが、健康について、つぎのような発言をしている。
「健康というものは、それを所有するだれにとってであれ(すくなくとも消極的に、すなわち身体的苦痛のすべてを遠ざけることとして) 直接に快適である。だが、健康を善いものとよぶためには、それをさらに理性によって目的に方向づけなければならない。つまり健康とは、私たちをじぶんのあ らゆる仕事へと向かわせる状態であるということになるだろう」——カント『判断力批判』[1790]熊野純彦訳(p.124)
他方、それと対極的(あるいはほとんど無関係)な意見を言うのが、フリードリヒ・ニーチェである。
汝の徳とは汝の魂の健康である。なぜなら、健康そのものというものはないからだ。君の肉体にとってすら健康とは何を意味すべきかを決定するのに
は、君の目標、君の視界、君の力量、君の衝動、君の錯誤、とくに君の魂の理想や幻想が極め手となるのだ。それゆえに、数かぎりない肉体の健康がある。われ
われが個別なもの独特なものに発言権を更めて認めてやるようになればなるほど、われわれが人間の平等というドグマを忘れれば忘れるほど、それだけますます
われわれの医師たちは正常の養生とか病状の正常な経過という概念ものともに正常の健康という概念をもなくしてしまうに違いない。そうなってこそはじめて、
魂の健康と病気について熟考し、各人の固有の徳をそれぞれの健康の道につかせる、時がめぐまれるだろう※。
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