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砂川闘争の現場のエスノグラフィー

July 8, 1957, Sunagawa Village, Tokyo

Municipio de Sunagawa, Tokio, 1955

池田光穂

(1957年7月8日)

「五日市街道に沿う砂川村の基地飛行場拡張問題が盛んに新聞の紙面を埋め、反対の村民対警官のいざこざが書き立てられているころだ。町に出て大新聞の支局 に寄ると、本社からも応援が来ていて支局は異常に興奮し、ざわめいていた。記者たちは、明日は砂川の測量とくい打ちがはじまるので、さはさせじとする拡張 反対の村民と警官隊の衝突が必至だから見学に行かないか、行くなら八時半までにここに来てくれとぼくを誘った。ぼくは幾つかの理由から、との誘いに大きい 興味をもった。まず自分で現場に行って現場の動きを見たら、ぼくと同じく欠陥多い記者の筆をう呑みにしないでもすむ。第二にその場の空気にさらされたとき ぼくの心はどう感ずるかその感じ方で自分の心を限定することができる。この二つはともに興味あることだ。つぎの日の朝ぼくは約束の時聞に支局に行き、報道 班員であることを示す腕章を左腕に巻いてもらい、皆と一緒に車に乗り込んだ。車は拝島橋を渡り、砂川一番に出て、村を縦走した。郵便局のある砂川三番の辺 は一番賑わっていた。応援のカンパ学生やポンポコ太鼓の民族主義(現在では、ナショナリストという、引用者)の日蓮さんたちやその他わけの解らない連中や とこを先途と忙しそうに走りまわる現代の英雄のニュースマンたち、それからこんな人出で家にじっとしていられないで誘い出された人のいい村人たちが興奮の 空気を作っていた。各新聞社も通りに面した家を借りて休憩所を兼ねた連絡本部にしていた。

ぼくたちはそこで車を降りた。ぽくは一人の記者と歩 きはじめた。彼は教えた。

――この奥の農家には社会党の代議士たちが交代で缶詰になってるんですよ。だから外車がこんなに並んでるんです。

――へえ、とぼくは驚いた。なんで代議士が缶詰になっているんだね。

主権在民のその民の代表者を缶詰にするなんて、誰がそんな力を持っているのか、これは誰でも知りたいことだ。

――代議士も点数を稼がにゃならんですからなあ。つぎの選挙民費用と票の配分をもらうには。

この言葉でぼくのものの理解は一歩進みもっと現実と一致することになり、それまでのぼくの迂愚(うぐ)を笑った。点数を稼ぐという表現は前から知ってはい たが点数を稼いで何になるか的確に考えたととはなかった。点数は実利の反対給附がついているのだ。

――しかし労組側も一億投入の用意があるなどと宣言して農村に肩を入れるようになってきてるんじゃあないかね。

――そりゃあ、回収の見込があるからですよ。労組は慈善団体じゃあないですからなあ。

とんなととはもうぼくは知っていた筈だ。

ここで記者は肩にかけた文明の利器ウォーキートーキーの試験をはじめた。

――ハアハア、と彼は歩きながらいった。コチラハXXX、コチラハXX。ホンジツハテンキセイローナリ、セイローナリ。カンドイカガ、カンドイカガ……カ ンドリョウコウ、リョウコウ……リョウショウ、リョウショウ。

――きだみのる『にっぽん部落』pp.16-18、東京:岩波書店、1967年(旧字体等は改めてある)

資料

文献

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

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Municipio de Sunagawa, Tokio, 1955