か ならず読んでください

サービス産業としてのコミュニケーションデザイン

Comunication Design as Service Institution

池田光穂

ピー ター・ドラッカー「マネジメント」(1974)は、アメリカ合衆国における戦後の経営が、専制から解放とともに、合理的に組織を運営し、また、経営におけ る人的要素を強調した名著であることは言うまでもない。

こ こでは、サービス産業としてのコミュニケーションデザイン(センター)について考えてみよう。

そ こでポイントとなるのは、コミュニケーションデザインおよびコミュニケーションデザイン・センターは、学内外にヒューマンコミュニケーションのサービスと その契機をもたらすことにあることを、自覚することである。

そ して、このことを考察するために、私はドラッカーの『マネジメント』の11章〜14章および38章を参照しようとと思う。

各 章のタイトルは以下のとおりである。

さて、ドラッカー先生に関する脱線。

ICT時代のイノベーションの預言者としてのドラッカーなんて僕は信じません。いまの提灯持ち状況は、ドラッガーの新しい読者が予言の自己成就のように彼の片言隻句にいまの現象を当てはめているにすぎないんじゃないかな?僕にとってドラッカーの最大の魅力は全然外している部分。そこを古いと考えるのじゃなくて路線がいつ分岐したのかと考えること。これが楽しいです。

例 えば、公共サービス部門における多元的な組織やその不振をめぐる議論ってのは、完全に冷戦期の両体制の比較が前提にあり、そこから効率性をあげたり、なん のためのマネジメントかをそれぞれの労働者が考えるべきだと言っている。しかし、今日、この問題が再浮上したのは、考えなくても利益の効率化のほうが重要 だというトレンドが席巻した時代を経由したらからなのだ。その後になにがおこっただろうか?冷戦構造のおわり、政府が信用に足らない組織に転落したこと、 グローバル企業の急速成長とICT、そして地球環境問題の世界的な意識化——これは端的に地球観が変化したのである——などなど。ドラッカーの価値は、一 週遅れのランナーがトップを走っているように見えるだけ。あるいは基礎の基礎を僕たちは忘れていたにすぎないんじゃないかな?

 ●予言の自己成就(self-fulfiling prophecy)とは?

予言の自己成就(よげんの・じこじょうじゅ)とは、(1)最初の誤った状況の前提=「僕は意志が弱いので勉強はできないだろう」)が、(2)あたらしい行動(=「今は試験期間だが新しいゲームソフトがリリースしたので、ちょっとだけならいいだろう」)を引き起こし、(3)それ以外の要因で結果が引き起こされたにもかかわらず(=ゲームに触れた時間は少なくのめり込んだとはいえず、たまたま試験のヤマが外れただけなのだが…)、(4)その行動が最初の誤った考えを真実なものとみなす(=「試験の成績が悪いのは新しいゲームソフトに触れたはずで、それをコントロールできなかったのは意志が弱かったからだ」)というものです。社会学者のロバート・キング・マートン『社会理論と社会構造』みすず書房,1961年に定式化されました。

整理しましょう。予言の自己成就とは、(1)最初の誤った状況の前提が、(2)あたらしい行動を引き起こし、(3)それ以外の要因で結果が引き起こされたに もかかわらず、(4)その行動が最初の誤った考えを 真実なものとみなす、という ものです。

上述のゲームソフトの例は、自分の意志の弱さを、試験の成績の悪さから、本当に弱いと感じてしまうものです。でも、実際は、ゲームにのめり込んだ時間は短く、それなりに勉強したので、おなじような生徒でたまたまヤマがあたり、成績がよかった生徒のことを羨んでしまうような場合です。これは予 言の自己成就の否定的な側面ですが、よいこともあります。たとえば、生徒を2つのグループに分けて、片方のグループだけには、「前回の試験には心理テスト が含まれていて、君たちにこっそり教えておくけど君たちは勉強しなくても成績がよいという証拠がみつかったんだ」と説明してやると、その次のテストでよい スコアをあげるという結果が出たことがあるそうです。現在では、生徒のことを思っても「嘘を言うことは絶対的な悪」 なので、このような実験をすることができませんが、生徒への心理的な事前の暗示(=予言)が、しらない間に、それを告げられた生徒の習慣を勉強に関心を もったり、成績をあげるような行動を導いたりして、実際に成績があがりました。これは、典型的な、プラスの意味での予言の自己成就です。

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