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カラー・ブラインドは本当に人種偏見から自由になれるか?

Can the person who intend to become "race" and color-blind be free from her/his own "racial prejudice"?

池田光穂

カラー・ブラインド(color blind)とは、色盲(しきもう=多色構成の人工物において色認識の峻別のタイプが多数派とは異なる人たち)のことである。

このような人間の生理感覚の多様性から、黒人と白人 が共存しながらも肌の色による峻別と差別や偏見が存在する社会状況において、カラー・ブラインドとは、肌の色で人びとを峻別しない態度、つまり人種偏見の ないという表現が使われるようになった。OEDには、それが米語であることを示唆されており(生理感覚上の色盲の意味の次に)"Taking no note of differences in racial colour, in sex, etc."とその定義が記載されている。

また、この意味での、カラーブラインド/カラー・ブ ラインドの用法は、OEDによると、すでに19世紀後半にみとめられるという。

1865 Commonwealth (Boston, U.S.) 18 Feb., A government color-blind; no distinction of race in the camp or the senate.    1888 Pall Mall G. 17 Sept. 4/1 The National Association of Journalists‥agreed that their body should be colour-blind as to sex.    1890 Ibid. 15 May 3/1 Neither in the Dutch republics nor in the English colonies is the law absolutely colour-blind as between Black and White. - OED.

このことからアメリカ合衆国では、差別や偏見が存在 する社会状況(=人種主義)から、自由になるためには、カラーブラインドたることを人びとに 要求する「カラーブラインド原則」なるものも掲げられるようになった。しかしながら「黒人や白人」という人種的インデックスを使っている限り、いくら批判 的見地をもっても、カラーブラインドが論理的に前提にしている「人種主義」が克服されている わけではない。また、黒人という色のインデックスが問題があるのではないかという意味で「アフリカ系米国人」という言い換えで、実態としてカラーブライン ドが可能になるというわけでもない。下記の事例は、CNNというメディアにおいてすら黒人とアフリカ系という語彙が混合しており、黒人へのヘイトクライム を黒人自身が自己防衛するという「当然」の事態もまた、黒人=カラーのプレゼンスをメディアが強化していると言えなくもない。

「米国でドナルド・トランプ氏が大統領に選出されて 以来、アフリカ系米国人の銃愛好家団体の会員数が前年同時期の倍のペースで増えている。銃の購入者も黒人が目に見えて増加傾向にあるという。/全米アフリ カ系米国人銃協会(NAAGA)には、大統領選挙でトランプ氏が選出された昨年11月以来、これまでに9000人が加入した。同団体の設立は2015年2 月28日。同年11月から16年2月にかけての加入者は4285人にとどまっていた。……新しくできた支部の1つは、大統領選挙の投票日翌日からわずか1 週間後に設立され、66人が加入した。支部長によれば、トランプ陣営の集会で起きたアフリカ系米国人に対する暴行や、支持者がソーシャルメディアに投稿す る憎悪発言を受けて不安が高まったことが、新しい支部設立の動機になったという」出典:http: //www.cnn.co.jp/usa/35097296.html(2017年3月1日閲覧)

これに対するオプションとしては、20世紀前半にメ キシコ合衆国で考えられた混血の讃美——メキシコでは先住民・白人・黒人らによる——「宇宙的人種(raza cósmica)」 がホセ・バスコンセロス・カルデロン(José Vasconcelos, 1883-1959)によって提唱されたが、人種の選別からの克服のためには、その逆方向の混交を讃美するという論理 的なユートピア的発想が強すぎて、逆にその実現のためには「新たな人種の創成」というパラドックスを抱えることになり、今日にいたるまで歴史のエピソード と理念の提唱に終わっている。

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