病気からの回復や健康の希求を目的とする移動が人びとに受け入れられ一定の様式化をとげるとき、それを健康観光（ヘルス・ツーリズム）とよぶ。空間の移動や日常とは 異質の時空間が、人間の意識や身体の状態を変容させるという信念によって可能になる。この観光の原型は病気平癒を目的とした巡礼であるが、今日では温泉湯 治や転地療法さらには臓器移植などの高度医療や心霊手術を求める旅行などに専門化している。しかしながら今日における観光にはスポーツや健康保養の要素が 取り込まれ、他方で健康観光は社会現象として大きな広がりをもつ。［池田光穂,copyright 1997］

【出典と解説】

ここに収載されている観光学研究に関する語彙集は、長谷政弘　編著『観光学辞典』同文館、 1997年に収載された、池田光穂執筆になる用語です。この辞書は、小さいながらも、日本における観光研究におけるデ・ファクト・スタン ダード（基本とすべき標準）ともいえるものです。観光研究に興味をもたれる学生は、本体の辞典のほうを是非とも参照してください。

【関連リンク】

池田光穂「健康を希求する旅のゆくえ：医療観光論序説」（原典：医療観光論序説— 健康を希求する旅のゆくえ，中央公論，1992年7月号，pp.251-256，1992年7月）

垂水源之介「温泉諸學体系」「温泉雑学リンク」