調査ができる条件とはなにか?
How do we legitimize academically
and socially our own field work?
(1)研究対象
(2)研究をおこなう理論的枠組や先行研究
(3)対象への接近(aproach)のやり方、あるいは方法論、そして、
(4)倫理的配慮である。
大学における教育では、主に(2)に力点がおかれ、なぜそのような(1)研究対象がそもそも存在するのか、そして、ともすれば詰め込み教育 されがちな(2)理論や先行研究が、どのような方法によって、それらが紡ぎだされてきたのか不明瞭なことが多い。
幸い、この学部においては、調査実習という授業科目のほかにも、研究対象への接近のやり方や方法論について授業の中で教えられることが多 い。それは、この学科の学問領域のすべてが、フィールドワークを通して、実証的に資料を収集し、それをそれぞれの学問 領域の理論的枠組の中で独自に分析する方法をもってきており、経験によって築かれてきた蓄積もまた多いからである——ただし、経験の単純な蓄積が研究の質 を本質的に規定するわけではない、つまり老練な研究者が常に質の高い研究者であることを意味しない。
文化人類学の研究において「学生が研究対象をどのように選べばよいか?」 という疑問に教師として答えるとするならば、「そ れはあなたが最も関心をもっているもので、文化人類学調査方法を通して、あなたが解明したいと思って いる問題が解決可能であるようなテーマを、すきなように選んでよい」ということになる。
私の返答の要点をもう一度整理しよう。
(1)あなたが最も関心を抱くいくつかのテーマがあるか?
(2)それには解決・解明されるべき問題があるか?
(3)その問題は、これまで学んできた文化人類学の方法で解決可能 か?
(4)そして、あなたの調査や研究課題は、調査をうける対象の人々適切な「倫理的かつ道徳的関係」のもとにあるか?
ということになる。ただし、(3)については、ある種の留保が必要である。と いうのは、伝統的な方法は、それに従事する研究者をして、自ず から限定した研究領域を生み出し、その狭い問題設定の中でその解決方法チマチマ探すという研究様式を生み出しがちである。そのために、学問領域が厳格に規 定されすぎると、自ずから研究テーマが限定されるという弊害が生じる。そのために新しい方法を受け入れる素地がなくなってしまうことになる——たとえば古 典的な民俗学者が多変量解析の資料整理をおこなっている姿を想像することは極めて難しい。
このような学問的な弊害から逃れるためには、上の3つの要点のほかに、さらに もう1点加える必要がありそうだ。
(4)その問題解決にふさわしい他領域で開発された方法論を学び、それを援用 するための用意があるか?
ということである。
クレジット:文化人類学調査研究入門02,リサーチ・プロポーザルへの5つ のステップ,調査ができる条件とはなにか?
【おさらい】
調査研究の3つの要素 (1)研究対象 (2)研究をおこなう理論的枠組や先行研究 (3)対象への接近(aproach)のやり方、あるいは方法論 |
文化人類学調査ができるための4つの前提 (1)あなたが最も関心を抱くいくつかのテーマがあるか? (2)それには解決・解明されるべき問題があるか? (3)その問題は、これまで学んできた文化人類学の方法で解決可能か? (4)その問題解決にふさわしい他領域で開発された方法論を学び、それを援用するための用意があるか? |
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