研究倫理入門
Introduction to Research Ethics for Young Students
■まず自分自身を欺[=あざむ]いてはいけません。自分自身こそが 最も欺きやすい人間だからです。このことに気をつけましょう。自分を欺かなくなったら、ほかの科学者を欺かないようにすることは容易です——リチャード・ファインマン(1974)
■研究倫理・研究公正は1人では学ぶことが困難かもしれません。その理由は、 倫理というものは人と人の間になりたつ規約だからです。でも、3人以上のグループなら、研究倫理は、研究というものを経験した人であれば、必ず学び、そし て身に付けることができます。授業は終わりましたが(日付が00月00日とあるのは皆さん自身が作るものです)、自習者は同僚とチームを組んで以下で提供されているテーマで30分議論、30分討論で一通りの 「研究倫理(Research Ethics)」を学ぶことができま す。
■以下の資料は、The National Academy of Science, Engineering, Meicine, 2009. On Being a Scientist: A Guide to Responsible Conduct in Research, Third Edition, The National Academies Press. に収載されている事例集からの引用と改変したものです。もともとは、大学の学部ならびに大学院(修士)向けのアクティブラーニングの授業用のシラバスから、発展し、みなさんが各個人あるいは自発的組織したグループで学べるようにしたものです。
討論(研究倫理事例検討集より)上のリンクと重複している場合が あるので御了承ください。
関連リンク(サイト内リンク)
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教科書
参考書 授業時に適宜紹介します。
成績評価
研究倫理の説明と定義(→出典)
研究倫理(Research Ethics)とは、研究活動がなんらかの社会性をもち、かつその成果が社会に影響を与える時に、社会がその成員とりわけ科学者集団に対して、なんらかの 規範を与えて、それを適切に制御(コントロール)することを意味します。通常、人が考えたり、研究したりすることは、研究する人の独自で自 由な活動であ り、それが何らかのかたちでコントロールされることは、一見理 不尽なような印象を与えます。しかし、社会性をおびた人間の属性から、研究が他の人々になんらかに危害を及ぼすことは、その量や数の多寡にかか わらず常に起こりうる危険性をもっています。さらに、研究が「人類を幸せにする」という社会的使命を標榜し、社会から承認され研究費や声援(モラルサポー ト)を受けている場合において は、研究倫理上の規範をを、研究者自身あるいは研究集団そのもののが作り、それを遵守することは避けられません。他方で、研究の正しさ、客観性の担保、そ して「人類の福利」などの基準などは、時代や社会によって相対的に決まるという特性があるために、研究倫理上の正しさや正当性の基準もまた変化します。そ れゆえに、研究倫理は、研究者集団およびそれを見守る社会によって、定期的に管理、点検 され、必要に応じて改訂してゆく作業が不可欠です。[池田光穂「研究倫理」医療人類学辞典]
研究倫理を考える
近代科学やそれを実用化した革新的技術は飛躍的に発展し、人間や社会に対して多大な恩恵をもたらしてきた一方で、環境・生態系の破壊や大量 殺戮などの問題を引き起こしてきたことも歴史的事実です。科学や技術はまた、政治権力や巨大ビジネスと結びつくとき、様々なマイノリティの人権の侵害につ ながるということもあったし、その成果が万人に享受されないことも珍しくありません。自由かつ独創的で、質の高い科学研究は、そうした人間生活や社会との 関係を視野に収めた研究倫理に裏づけられたものでなければならなりません。言い換えれば、科学研究は、それが人間や社会に対してどのような影響を及ぼすの かを意識し、絶えず自らの営みを反省することが必要となるのです。従って、科学研究における責任ある行動が、誠実さ、正確さ、効率性、客観性といった基本 的な価値を尊重するものでなければならないことを踏まえ、科学研究の健全な発展を図ることが研究に従事する者一人一人に求められます。
今、なぜ、研究倫理か
近年、成果至上主義や利潤追求などの圧力によると思われる科学研究の不正行為が頻発する傾向が見られます。科学研究において不正行為が行わ れると、健全かつ正しい科学研究の発展が阻害されるだけでなく、研究に対する社会の信頼が損なわれ、多くの人々に対して重大な悪影響がもたらされる可能性 があります。それゆえ、多くの国では、不正行為を予防し、かつ起こった場合にこれを適切に処理して再発防止に務めるために、国家レベルあるいは各大学・研 究施設がそれぞれ指針を定め、研究不正行為に対処するための研究倫理委員会を設置しています。これに対して日本では、研究の不正行為が頻発している中で、 十分な対応ができているとは言えない状況にあり、政府や学術会議あるいは各大学・研究施設がようやく取り組みを開始しているところです。
研究倫理観の向上のために
本講義では、医学・工学のみならずすべての大阪大学大学院で研究者を目指す大学院生(3年次以上の学部学生を含む)を対象として、研究開発 (R&D)の社会的意味、研究実践上における公正、研究者集団と社会における公正、研究室内の人間関係における公正などについて多角的に考察しま す。そこでは、科学研究を取り巻く社会的な課題が具体的に取り上げられ、受講者自身が自分自身の問題として考える姿勢を身につけること、そして受講者各自 の研究倫理観を向上させることが目指されます。
この授業科目は、本年度(2011[平成23]年度)をもってこのタイトルと内容での最終年度となる可能性があります。次年度以降の開講タイト ルと内容は未定です。
【資料】
科学者の行動規範(日本学術会議:2006年10月3日)より再掲→2013年に改訂版です。こちらを参照してください。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-s168-1.pdf
【クレジット】研究倫理入門(けんきゅうりんりにゅうもん, 科学者になるということ)Introduction to Research Ethics for Young Students
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099
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