かならずよんで ね!

学術論文投稿者の倫理規定

On Ethics of Contributors for Academic Journals and Books

池田光穂

論文の著者性をめぐっての不正行為には、ギフトオー サーシップ、ゴーストオーサーシップ、オノラリー・オーサーシップ、サラミ・スライス化などのものがあげられる。まずそれを解説しておこう[出典:「だれが論文の著者としてクレジットされるのか?」]。

ギフトオーサーシップ】:ift authorship:論文に貢献していない他人(研究者)を共著者に仕立て上げること。論文への「貢献」をグラント提供やスーパーバイズまで含めるべき だという主張と、純粋に具体的な研究の範囲にまで留めるべきだという主張があり、それぞれに根拠があり、一概に決められない。しかし、科学的論証過程が厳 密になり、捏造問題などで、グラント責任者にも塁が及ぶケースもあり、グラント提供者は、共同研究者に研究レベルまできちんとコミットするべきだという考 え方が主流になると、ギフトオーサーシップは、やってはならないし/やらせてはならない、ということになる。また、論文作成への貢献は、実験をスーパーバ イズして、喩え一字の修整字句があれば、その著者への貢献を認められるべきだろう。学術投稿論文は共同で書くというスタイルが主流であるが、これまでない と言われてきた人文社会系の研究も多くなりつつあるので、ギフトオーサーシップの問題は他人事ではありません。

ゴーストオーサーシップ】:ghost authorship:論文に関わっているにも関わらず、著者として掲載しない行為。(リストに登場していない)幽霊が論文を書いているという風刺からこ う呼ばれる。典型的なものは、ゴーストライターに書かせて、あたかも自分が書いたようにふるまうことです(これは洋の東西を問わず、また理系・人文社会 系・学際融合系を問わず、しばしば見受けられますので要注意です)。データの捏造に対して、これは論文の本人以外の作成ですので、(あたかも自分が作成し たと嘘を言うわけですから)捏造の一種とみていいと思います。また、実際に論文作成にかかわらず、謝辞に載せればその責任が問われないというのも誤った考 え方です。

名誉オーサーシップ、オノラリー・オーサーシッ プ】:honorary authorship:ゴーストオーサーシップとは逆に、論文に関わっているにも関わらず、著者として掲載してしま うケースです。これは、推奨されるべきことがらではありません。こんな奇妙なことがどうして起こるのでしょうか? それはその学問領域で著名な人から「ア ドバイス」受けた理由で、著者として招いてしまうケースですが、その招待には、下心があって、著名な人(=セレブ)との共著だと論文に掲載されやすくなる だろうという思惑からです。残念なことに、そのような申し出をうけるセレブ研究者もいるという理由で、実際にこのようなことは存在します。しかし、名誉 オーサーシップへの申し出がきっかけに後に共同研究者になることもあります。ただし、論文執筆や論文ための基礎データ収集時に、論文に貢献しておらず、必 要がありどうしても掲載したい場合は、謝辞に掲載すべきです。その際には、何をどのように貢献したかを明確にし、また、出版の前に本人に了承をとることが 必要です。

サラミ出版・サラミ・スライス化】:salami slicing:1本でまとめられるような研究を、複数の発表論文に小分けして出版・発表する方法です。サラミないしは金太郎飴のように、どの断面も類似 のもので、共著者が順繰りに筆頭著者にするというものがあります。恐ろしいことですが、私の知る旧・帝国大学の医学部のある研究室は、小さな学会発表の時 に、そのような類似の発表を延々をおこなっていたことを目撃したことがあります。このようなサラミ発表やサラミ出版は、論文の中身とは関係なしに、出版点 数を安易にあげるための方法で、学問や研究の真理探究とは何の関係もありません。本当に重要な研究は、必要不可欠なこと冗漫にならない範囲で適格にまとめ たもののはずです。

自己剽窃】Self-plagiarism:すべての論文投稿者が気づかずに、あるいは昔の流儀のままにおこなっている研究倫理違反が自己剽窃で す。自分の著作物の重要な部分、同一の部分、またはほぼ同一の部分を、そうしていることを認めず、 元の著作物を引用せずに再利用することは、「自己剽窃」です。先行作品の著作権が別の団体に譲渡されている場合には、著作権の問題が発生することもある。 自己剽窃は、出版や事実に基づく 文書など、ある出版物が新しい資料から構成されていると誰かが主張する場面では、深刻な倫理的問題とみなされている。しかし他方で、通常新聞や雑誌に掲載 される社 会的、専門的、文化的な意見など、公益性の高い文章には適用されないこともあるため、自己剽窃の判断においては、本人と自己剽窃であると判断する他者の間 の線引きにはグレーゾンが生じる可能性がある。

また、論文を投稿する際には、開示の声明 (DISCLOSURE STATEMENT)という手続きが必要になる。今、手元にある Annual Review of Anthropology の最新号にその記述があったので、掲示しておこう。

The author is not aware of any affiliations, memberships, funding, or financial holdings that might be perceived as affecting the objectivity of this review (or paper).

この内容を少し丁寧に意訳すると次のようになる: 「このレビュー(もしくは論文)の客観性に影響をあたえると思われるような、いかなる関連団体、メンバー、助成財団、あるいは財政支援団体を承知していな い(=内容に影響を与える団体とは完全に無関係である)ことを理解しています」。

さて、日本医学雑誌編集者会議(Japanese Association of Medical Journal Editors: JAMJE)では,Committee on Publication Ethics (COPE:出版倫理委員会) (http://publicationethics.org/)をつくり、医学雑誌への投稿に関する不正のチェックについて努めている。COPEのフ ローチャート・アドバイス、すなわち、ミスコンダクトが疑われた時の対応手順についての条件をいくつかあげている。これらのことは、逆に考えれば、そのよ うなことが、研究公正の維持においては回避されていることを意味する。以下の項目を読んで,君たちが研究公正のためには、どのような策を講じればよいのか 考えてみよう。

また、「だれが論文著者(クレジット)として掲載されるか」には、不正投稿の種類のう ち、以下のものが記載されているので、参照のこと

● ARS ARTIUM(諸芸術の技)雑誌の編集倫理/出版倫理(http://www.arsartium.org/publication-ethics/)より

"The journal accepts only original and unpublished research paper which is not sent for publication elsewhere. It does not republish any paper. There is zero tolerance for plagiarism./ The journal follows the general publication ethics in research declared by the Committee on Publication Ethics (COPE) at: https://publicationethics.org/ "

"Besides the above information, author of a research paper is requested to follow the following guidelines: 1. submit only an original and unpublished scholarly research paper for consideration following the latest MLA style 2. mention all sources in research paper 3. wait for the response of the review process 4. mention the funding agency of research, if it has been funded"

"Editors shall: 1. not disclose the identity of authors, referees or reviewers 2. work independently and impartially 3. inform the author about acceptance or rejection of the paper as soon as possible 4. inform about the publication of paper on time"

"Reviewers shall: 1. review the papers honestly 2. follow the provided guidelines in the format for suitability and quality of the papers 3. suggest all issues regarding breach of ethics and ‘research standards’ clearly 4. help and cooperate with the editors by providing useful feedback on time 5. keep review process confidential"

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