チャレンジャー号事故とファインマンさん
Surelly you're not Joking Señor
Feynman in Washington
ス ペースシャトル「チャレンジャー」の事故(1986年1月28日)における事故調査委員会(ロジャーズ委員会 Rogers Commission)に招かれたファインマンさんが、事故原因を探究するプロセスを、科学コミュニケーションの問題として考えると大きくわけて次の3つ のポイントに絞られると思われる。
1) NASAの官僚制度のあり方。ポスト・アポロ計画における宇宙開発へ連邦政府の予算獲得のために、安全性よりも話題性(=広報)に力点が注がれ、肝心かな めの飛行の安全性に関する問題解決がないがしろにされたこと。
2) NASAのシャトルの「安全率」の計算は、他のロケット開発のように設計がボトムアップにおこなわれる安全率の低さにくらべて、トップダウンで設計された ために、安全率を高くみつもる(=事故率を低く見積もる)という問題が構造的にあった。
3) Oリングが、寒冷条件で硬化してその気密性が大いに損傷をうけ、致命的なものとなることについて、発射時の早朝に氷点下を示していたこと、また、現場では Oリングの硬化については、早くから問題点が指摘されていたのに、改善されてこなかったこと。——チャレンジャーの発射時に氷点下を切っていたことは「不 運」であると同時に、氷点下時におけるリスクマネジメントの発想が「なかった」ということ。
が あげられる。
《課 題》
・
ファインマンさんの2つのテキストを読んで、我々の身の回りにある事故や問題を、ファインマンさん流の探求心をもって、その問題解決に導きなさい。またそ
のような実習から得られる、我々自身自身の問題とはなにかをあぶりだし、その解決には、どれほどの時間をコストがかかるか、試算してみよう。
発射前に灰色の煙がチャレンジャーから出ている/真 ん中の黒い2つの●がOリング(オー・リング O-Ring)の断片——Oリングは輪ゴムのように円柱のエンジンを取り囲むようにして気密性を高める役目 をしている。
ファ インマンさんは、委員を委嘱されることを想定もしなかったし、また、当初採用されることを嫌がってもいた。NASAの官僚的な扱いや、調査委員会そのもの の原因探究精神の欠如に、かなり苛立っていたことが「ファインマン 氏、ワシントンにゆく:チャレンジャー号爆発事故調査のいきさつ」に読み取れる。
他 方で、Oリングの硬化は、調査委員会で好感をもった、ドナルド・クティーナ空軍将軍(Donald J. Kutyna, 1933- )——彼はICBMの開発にも関与したことがある——との邂逅や、彼が自動車のキャブレターをいじっているときにふと思いついた「寒さとOリング」の関係 についての疑問をファインマンさんにつげて、この問題についての調査が格段に進んだことを記している。
《O-Ring をめぐるエピソード》
リンク(ファインマンさん関係:サイト内)
リ ンク
リンク
文 献
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2019