On Harvest of Violence: The Maya Indians and the Guatemalan crisis.
Norman: University of Oklahoma Press.334pp., 1988.
編者:カーマック、ロバート・M.
著作:Carmack, Robert M. (1934- ) ed., Harvest of Violence: The Maya Indians and the Guatemalan crisis. Norman: University of Oklahoma Press.334pp., 1988.
1980年代前半の内戦下におけるグアテマラ先住民が直面する困難について、13名の人類学者を中心とする研究者(他に地理学者と政治学者が各 1名)が書く報告論文集である。
20世紀後半に36年間続いたグアテマラ共和国の内戦は、反政府勢力が先住民を革命主体に取り込む1970年代以降の政策転換により勢力を取り 戻しつつあった。他方、政府軍はベトナム戦争を教訓した反ゲリラ戦術を展開し、後に先住民への選択的虐殺とよばれる攻勢を展開した。70年末から80年代 冒頭に、この政治的暴力がピークを迎える。グアテマラの政治社会研究の泰斗R・アダムス(Richard N. Adams)が巻末で分析するように、グアテマラのマヤ系先住民が受けた暴力の社会的影響は、個々の社会集団が抱える歴史的(政治的実権をめぐる将軍と軍 人グループの動き)、経済的(多数派先住民と政治的経済的有意なラディノ系支配層の依存=搾取関係)、さらには宗教的状況(伝統的民俗カソリックとカソ リック改革派の確執、ならびに原理主義的プロテスタントの改宗運動)の相互の複雑な関係の影響を受け極めて多様であった。その多様性は1990年代後半に 陸続と公刊される虐殺経験を踏まえた民族誌の多様性に反映されている。民族誌家にとって内戦の暴力は限定された特殊なテーマではなく、今日を生きるすべて の人びとの問題なのである。
グアテマラ内戦下における政府軍や右翼テロ集団の反政府勢力や先住民への選択的虐殺などの政治的凄惨さに関する報告は、それまでも多数出版され
ていた。しかし類書と大きく異なる本書の特色は、編者でキチェ系先住民のエスノヒストリー研究者であるR・カーマックが指摘するように、フィールドワーク
を通して長期間にわたり個々のコミュニティに住み、現地人と親密な関係をもつ人類学者ないしは長期フィールドワークを旨とする人文学者が、ヒューマニスト
的信条に基づき直接に見たり聞いたりした経験を正確により多くの人に報告することをよしとしたその記述のスタイルにある。学術的よりもジャーナリスティッ
クなスタイルに訴えた書式とその内容の深刻さが、今日においても政治的暴力の文化人類学を学ぶための基本文献としての名声を確保し続けている。
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