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分析「生成AIの利活用に関する国立大学協会会長コメント」国大協News, 2023.05.29

On Comments by the President of the Association of National Universities on the Use of Generated AI

池田光穂

★「生成AIの利活用に関する国立大学協会会長コメントを公表いたします。 本コメントにおいて、生成AIは、負の側面を克服しつつ、積極的な活用を試みるべき、というスタンスのもと、教育及び研究の両分野において特に留意すべき 事柄について、現時点における考え方を示しております。 国立大学は、我が国の教育研究の中核を担う国立大学として、生成AIの利活用を積極的に推進する立場と懸念を示す立場が学内で相対して存在する場合におい ても、それらの立場の両立を図りつつ、国立大学の使命として、今後も将来に向けた人材育成と学術研究の推進に努めてまいります。」https://www.janu.jp/news/13499/

生成 AI の利活用に関する国立大学協会会長コメント

〇 近年の人工知能(AI)の発展により、AI の様々な活用の可能性が示され、同時に社会において AI を利用する際の懸念等も示されるようになっている。今後 AI の利活用は一層加速するものと見込 まれ、特に、ChatGPT に代表されるような文章や画像等を生成する AI(生成 AI)の利活用は、人 間や社会そのものの変容を導くことが想定される。

○ この生成 AI に対し、新たな知を生み出し有為な人材を育成する機能を持つ大学は、学生の教育を はじめ、研究における利活用の可能性はもちろん、生成 AI をはじめとした情報技術自体の研究の推 進についても関わりを持つことになる。そうした大きな関わりは、他のセクターと比べても著しい ものがある。

 ○ 生成 AI に限らず新たな知見や技術の出現は、時に、その登場や発展により様々な軋轢をもたら し、ひいては社会から批判され制限されることさえある。しかし、これまでも大学は、そうした軋 轢や批判すらも学問研究の対象とし、それら新しいものに対しても、一層知見を深め、それらの価 値を正しくかつ適切に評価し、広く社会にその成果を提供することで、社会が変革を受け入れる際 の一助となってきた歴史を持っている。

○ このように、生成 AI と関わりが深く、かつ、新技術が社会から受容される際に一定の役割を果た すことのできる大学には、その生成 AI とこれから交わしていく広く深い関わりの中から、効果的に 生成 AI を活用し、新たな知見等を生み出し、同時にそれが持つ負の側面を克服して、さらに新しい 技術に展開させていくことが求められる。こうした役割を担うことができるのは、大学が新規性と 独自性(originality)を追及し、そこから社会を新しい時代に導いていく「学問の府」であるからこそ である。それゆえ、大学における生成 AI の利活用は、負の側面を克服しつつ、新しい時代につなが りうる技術として積極的な活用を試みるべきである。

 〇 しかしながら、現時点においては、生成 AI 技術自体にプライバシー侵害や機密情報の漏洩に関す る懸念、さらには用いられる大量のデータの出自やバイアスの可能性などの問題点が指摘されてお り、社会においても制度やルールが未整備であるなど未だ課題が多く見られる。したがって、生成 AI の利活用にあたっては当面、それぞれの利用機関が一定の考え方に基づいて自律的な運用を行う ことが求められると考える。

 〇 以上の観点から、国立大学においても、適切な形で生成 AI の効果的な利活用が進むことが基本的 に望ましいことと考える。以下には、教育及び研究の両分野において特に留意すべき事柄について、 現時点における考え方を示しておきたい。

1.国立大学が行う教育における生成 AI の利活用について

国立大学が行う教育活動において、生成 AI の利用を一律に禁止することは求めない。生成 AI を適 切かつ効果的に利活用することは、学生の知的欲求や能力を高めることに寄与する可能性が大いに考 えられる。

ただし、レポートや論文、課題等の作成において、学生が安易に生成 AI を利用することにより、企 図した教育効果等が得られないことなどが大学の内外から強く懸念されている。このことを踏まえ、 各国立大学はそれぞれの判断に基づき一定の方針を定め、明確なルール化を図ることが推奨される。

 大学における教育はすなわち、学問を通じた人間としての成長機会の提供であり、単純にインター ネットや AI 等を利用して知識や回答を得ること以上に、その過程としての問題の発見・設定、仮説の 構築・検証や思索、自らの手による実地調査・文献調査等が、自身の研鑽と成長にとって大きな意味 を持つ。生成 AI の利用にあたって、このことを明確に学生に伝えることは、きわめて重要である。

 他方で、社会における利活用が広がるとともに、教育において生成 AI の積極的な活用方法や技術を 習得させる工程も必要となることが想定される。その際には、現状の生成 AI に関する信頼性や透明 性、プライバシー保護、著作権等に関する課題等、正しい知識や使用上の注意について学生に十分に 理解させる責任が大学に生じることにも留意が必要である。

2.国立大学が行う研究における生成 AI の利活用について

国立大学の存在意義はその研究にある。また研究を通じて社会に貢献することも求められている。 国立大学における研究については、生成 AI を含む AI 技術の研究推進のみならず、その他の研究分野 における生成 AI 等の利活用が研究そのものを著しく推進する結果となることも想定される。

一方で、生成 AI の抱える各種の課題解決をはじめとした AI 技術の発展に関する研究とともに、制 度面、倫理面等の関連分野が主体となる研究の推進も期待される。また、大規模データの処理や作業 の効率化等といった、研究活動を加速するような利活用の在り方についても前向きに検討されるべき である。こうした生成 AI に関わる様々な研究分野の展開は、大学に新しい可能性を開くことが予想さ れる。

 ただし、生成 AI は現状においては、既存のデータにない新たな知見に関する分析や記述はできない ことや、データの正誤についての判断はできないこと等について留意する必要がある。

また、「ねつ造」、「改ざん」、「盗用」という研究不正へのリスクにも留意が必要である。この観点か らは、例えば生成 AI の作成した文章には、出典を明示できないケースや、他者の論文等の剽窃となっ ているかどうかを判別できないケースに加え、データの操作によるねつ造や改ざん等のケースも想定 されることから、各大学は研究不正の生じないような生成 AI の利用に向けた注意喚起等に努めるこ とが必要と考える。

〇 国立大学は、我が国の教育研究の中核を担うことから、「学生を最新の知見と方法により教育し成長 させ、社会に送り出す」ことと、「新たな知見を創造する研究を推進し、その成果を還元することで社 会の発展に寄与する」ことの双方が求められていることを忘れてはならない。この生成 AI の利活用に 関しては、積極的に推進する立場と懸念を示す立場が同じ学内で相対して存在する事態も生じうるが、 そのような場合においても、これら二つの立場の両立を図りつつ、いかにして新しい科学技術を自分 のものとして、国立大学の使命を達成していくか、真摯に検討されることを望むものである。

 令和5年5月 国立大学協会会長 永田恭介

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