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「報道した事実を真実と信ずるについて相当の理由」があるときには名誉毀損は成立しないこと

Defamation is not established when there are "reasonable grounds for believing the reported facts to be true."

池田光穂

「報道した事実を真実と信ずるについて相当の理由」 があるときには名誉毀損は成立しないこと。 以下の情報はクリエイティブ・コモンズの情報である、Ikuko Komachiyaさんの「名誉毀損における相当性の抗弁は……」から引用しています。

これは多くの報道関係者が知識として知っているらしい。最高裁判所は1966(昭和41)年6月23日の第一小法廷判決でこれを判断している。当該事案の 第1審判決および控訴審判決を含む多くの下級審判決や学説が、刑法230条の2の規定と同様の法理を民事上の名誉毀損についても適用すべきであるとしてき たことが、最高裁で確認された。現在の裁判実務はこの理論にしたがって名誉毀損に関する不法行為の成否を判断している。

最高裁判決はいう「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された 事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明さ れなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しな いものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨からも十分に窺うことができる。)」

刑法230条の条文

(名誉毀損)

第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわ らず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなけれ ば、罰しない。

条項1は、1907年の刑法制定の時期から存在する。当時は、1875年の讒謗律(ざんぼうりつ)に準拠して、人の栄誉を害する行為(讒毀)と、人の悪名 を公布する行為(誹謗)とを罰し、「凡そ事実の有無を論ぜず」に讒毀の罪を成立させていた、という。

旧刑法も、それを引き継いでおり、真実を表明しても罰する名誉毀損罪が引き継いでいた。さらに、讒毀と誹謗の対象となった人の身分(天皇、皇族、官吏な ど)に応じて刑罰に軽量をつけていた。

しかし、新憲法制定に際して、「真実の言論もすべて罰するという規定は、憲法の表現の自由と深刻な矛盾を生ずる。そこで、『改正された日本国憲法の表現の 自由と調整するために、刑法の一部改正の際に230条の2が急遽新設された』と説明されることが多い」こととなった。そこで(公共の利害に関する場合の特 例)が付されている。

第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、 真実であることの証明があったときは、これを罰しない。2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公 共の利害に関する事実とみなす。3 (公務員の行為なので3は省略)

犯罪の証明は、検察官に立証責任がある。つまり「犯罪の証明は合理的な疑いを容れない程度まで検察官が行うこととなっており、名誉毀損については、検察官 は230条の事実の摘示が名誉毀損となることを立証する。無罪推定の原則からすれば、検察官の側で事実が虚偽であることを立証し、230条の2の特例にあ たらないことを明らかにするというのが筋道だろう。しかし、刑事裁判実務では、230条の2の事実が真実であることを合理的な疑いを容れない程度に立証す る責任は被告人側にあることになっている。つまり事実が真実であるか否かが不明に終わった場合には免責は認められず有罪となる」。

また、民事訴訟で名誉毀損が争われる場合は、「名誉を毀損する表現行為が、(1)公共の利害に関する事実であること(公共性)、(2)もっぱら公益を図る目的があ ること(公益性)、(3)摘示された事実が真実であること(真実性)、を証明した場合には、違法性がなく不法行為は成立しない。また、摘示された事実が真実で あることを証明されない場合でも、(1)と(2)を満たしている場合で、表現行為をした者にその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには(相当性)、 故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しない」という。「民事裁判実務では、これらはすべて被告(表現行為をした者)の側で主張立証することとなってい る」が、実際に「民事裁判でも、公共性、公益性、真実性および相当性は抗弁として被告の側に主張立証責任を負わせるという見解が受け入れられ」ているとの ことだ。

参照文献

Ikuko Komachiya「名誉毀損における相当性の抗弁は報道時点で把握していた証拠に限られる-ロス疑惑北海道新聞社事件」 http://informationlaw.jp/category/defamation-libel/(2022年6月16日)

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