拡張するヘルスコミュニケーションを考える
解説:池田光穂
「拡張するヘルスコミュニケーション」を考える:日本におけるヘルスコミュニケーションの 研究と教育の動向と2011年度日本保健医療社会学研究大会に向けて 池田光穂(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)
■2011年度日本保健医療社会学研究大会
大会テーマ:拡張するヘルスコミュニケーション
日程:2011年5月21日(土)〜5月22日(日)
場所:大阪大学文系総合棟(豊中キャンパス)
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka.html
の地図の38番(DONDON=食堂)と8番(国際公共政策研究科)の間の建物
■ヘルスコミュニケーションの定義(再掲:出典はこちら)
・ヘルスコミュニケーションの同義語:保健コミュニケーション、健康コミュニケーション
・ヘルスコミュニケーション(ヘルス・コミュニケーション, health communication)とは、健康と病気にかんする保健領域における(個人対個人、個人対集団、集団対集団などの様々なタイプの)対人コミュニケー ションのことである。
・米国の疾病予防研究センター(CDC, the Center for Disease Control and Prevention)では、ヘルスコミュニケーションを「健康を増進する個人とコミュニティの決定に情報や影響を与えるコミュニケーションの諸戦略の研 究と利用のこと」(the study and use of communication strategies to inform and influence individual and community decisions that enhance health)[2001]ととらえている。
・ヘルスコミュニケーションとは、対象となる個人や集団の(定義がいかなるものであれ)「よい健康」(good health)というアウトカムを求めるコミュニケーションの実践と研究のことである。 ・そのため、研究や実践をはじめる前・行っている最中・終わった後に、ヘルスコミュニケーションでは、その「よい健康」ならびにコミュニケーションとは何 かということが常時検討されていなければならない。
・ヘルスコミュニケーション研究にはいくつかの認識論的次元がある。
■ヘルスコミュニケーション教育(再掲:出典はこちら)
A.ヘルスコミュニケーション概論
(1)対人コミュニケーション研究の動向の把握
ヘルスコミュニケーションを含む、個人対個人、個人対集団、集団対集団などの様々なタイプの対人コミュニケーションに関する基礎理論や研究 の新しい潮流の把握
(2)コミュニケーション過程に影響する変数
ヘルスコミュニケーションにおける、文化的、民族的、ジェンダー的、宗教的、地理的な諸要因の変数に関する基礎情報やその動態の把握
(3)健康と病気に関する基礎理論
B.ヘルスコミュニケーション実践に関する社会的取り決め
(4)対人コミュニケーションに関する契約概念とその倫理
(5)コミュニティ活動に関する契約概念とその倫理
(6)コミュニティの動態性
(7)専門職による医療的コミュニケーション[ナラティブ研究を含めて]
(8)ヘルスコミュニケーション・プロモーションにおける当事者の活動の位置づけ
C.ヘルスコミュニケーション技法
(9)ヘルスコミュニケーションの計画と立案(リサーチと実践のデザイン)
(10)健康状況の把握、対象者・対象集団の輪郭形成
(11)プログラムの目的とその諸戦略の確立
(12)個々の戦略を実現するための戦術の構築と、プログラム途上のフィードバックのための評価技法
(13)履行状況把握、経過観察、プログラム総括評価
■重要論文アンソロジー(再掲:出典はこちら)
Health Communication, 5 vols, 2010. Edited by: Gary L Kreps; George Mason University. Sage, ISBN: 978-1-84787-578-5
■ヘルスコミュニケーション関連学会
日本において、ヘルスコミュニケーションに関連する学会・研究会は、大きくわけて、(1)コミュニケーション研究を含む教育系、(2)工学 を含む認知科学系やヒューマンインターフェイス研究、および(3)心理・精神医学系、の3つの大別することができる。以下の学会は、日本学術会議に登録さ れている学会研究会である(現時点では網羅的なものではなく、あくまでも掲載者である池田が任意にピックアップしたものです)
■ヘルスコミュニケーション教育機関
■日本ヘルスコミュニケーション研究会(動向)
第1回 2009年7月10日:東京大学:大会会長:木内貴弘(承前)
1.開会挨拶 木内貴弘
2.挨拶 新木一弘(文部科学省高等教育局医学教育課長[2010年6月現在も同様])
3.講演
3.1 東大大学院医療コミュニケーション学教室のヘルスコミュニケーション学教育の概要 木内貴弘
3.2 医療コミュニケーションと日本語の教育 野呂幾久子(東京慈恵会医科大学日本語教育研究室)
3.3 効果的治療のための医療コミュニケーションの知識と技能 町田いづみ(明治薬科大学薬学部医療コミュニケーション学)
3.4 看護系学部におけるヘルスコミュニケーション教育 杉本なおみ(慶應義塾大学看護医療学部)
3.5 医療学教育におけるコミュニケーションとナラティブ−現状と展望− 斎藤清二(富山大学保健管理センター)
3.6 ヘルスコミュニケーションの課題と可能性:EBM・診療ガイドライン・患者参加の視点から 中山健夫(京都大学大学院医学研究科健 康情報学)
3.7 医学コミュニケーションについて 岩隈 美穂(京都大学大学院医学研究科医学コミュニケーション学)
3.8 医療制度改革とコミュニケーション教育 池田光穂(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)[→実際の発表は「臨床コミュ ニケーション教育:PBLから対話論理へ、対話論理から実践へ」としました:http://www.cscd.osaka- u.ac.jp/user/rosaldo/090605RimCom.html]
3.9 広島大学歯科医学系のコミュニケーション教育 小川哲次(広島大学病院歯系総合診療科口腔総合診療科)
3.10 九州大学における医療コミュニケーション教育の現状 荒木登茂子(九州大学大学院医学研究院医療コミュニケーション学)
第2回 2010年9月17ー18日:京都大学:大会会長:中山健夫:京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授
プログラム(予定)
S1: 医療者・患者間コミュニケーション1
S2: ヘルスコミュニケーションのメッセージとメディアの研究・実践の現状
S3: 専門教育1: 臨床と研究の対話について考える
S4: インターネット・コミュニケーション
S5: 医療現場におけるチーム医療
S6: ジャーナルキーワードに見るヘルスコミュニケーションの動向
S7: 医療者・患者間コミュニケーション2
S8: 健康医療政策とコミュニケーションの研究と実践の現状
S9: 専門教育2: 教育と臨床の対話について考える
S10: 異文化コミュニケーション
■臨床コミュニケーション教育(スライド・レジュメ)
別途配布ハンドアウトをご参照ください。
「臨床コミュニケーション教育:PBLから対話論理へ、対話論理から実践へ」:http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/090605RimCom.html
■2011年保健医療社会学会研究大会に向けて
・関西圏は数多くの医療・看護・福祉の大学や専門学校が集中し、保健医療研究と教育の場としての関心を大いに持たれる地域
・近年の保健医療科学の総合化・ITシステム化・文理融合化の流れのなかで、社会調査技法や質的研究への関心が近年頓に高まっている。
・医療保健看護福祉介護の分野では「コミュニケーション技法」を銘打った書籍が陸続として刊行中
・資格試験においても、接遇に関する実技を重んじる動向
・コミュニケーションは社会・文化・経済・政治的な諸関係の基盤にもとづくものであるかぎり、保健に関わる諸問題の解決にとって万能という わけでなく、むしろ、ディスコミュニケーションという言葉があるように、しばしば問題の発端やより深いレベルでの問題の兆候である可能性を示すもの
■ふさわしい基調講演・シンポジウム・分科会・若手向け教育セッション等はなにか?(20分のブレインストーミング)
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