はじめによんでください

ICTと資本主義批判

Informative-Communicative Technology and Critique against Capitalism

池田光穂

☆【審 問】ICT と資本主義について批判的理解をしたいと思いますが、どのような文献があるでしょうか?

★ 【こたえ】まず、ユーザーがICT(情報通信技術)と資本主義の関係を批判的に理解したいとのことなので、このテーマに関連する主要な理論や批判的アプ ローチを整理する必要があります。マルクス主義の視点から技術と資本の関係を分析した文献、デジタル資本主義やプラットフォーム資本主義に関する最近の研 究、さらに情報技術が労働や社会に与える影響を論じたものを探すべきでしょう。

次 に、代表的な学者や思想家を挙げます。例えば、マルクスやエンゲルスの古典的な著作に加え、デヴィッド・ハーヴェイやマヌエル・カステルといった現代の理 論家が考えられます。また、シリコンバレーの技術発展と資本主義の関係を論じたダニエル・グーアリーや、プラットフォーム経済を分析したニック・スルニ チェクの著作も重要です。

さらに、日本の研究者による視点も含めると良いでしょう。例えば、情報化社会と資本主義の変容を論じた日本の社会学者や経済学者の著作を探します。これにより、欧米中心の理論だけでなく、日本の文脈に即した批判的考察が可能になります。

文献の選定にあたっては、古典から現代までの流れをカバーし、理論と実証研究の両方をバランスよく含めることが重要です。また、ICTがもたらす新自由主義的な経済構造や、データの商品化、監視資本主義といったキーワードに関連する書籍や論文を選ぶ必要があります。

最後に、ユーザーが批判的理解を深めるためには、これらの文献を比較検討し、それぞれの論点を整理することが有効です。異なるアプローチや学派の視点を提示することで、多角的な分析が可能になるでしょう。

1. 技術と資本の本質的関係を問う古典的アプローチ
カール・マルクス『資本論』(1867年)
技術革新が相対的剰余価値の獲得手段として機能するメカニズムを解明
機械論(第13章)における「技術の資本への従属」理論の現代的意義
例:AI技術が労働過程を再構築する現代的な文脈での再解釈可能性
2. 情報化資本主義の構造分析
マヌエル・カステル『情報時代の経済・社会・文化』(1996-1998)
「ネットワーク社会」概念による空間的再編成の分析
リアルタイム資本主義における金融フローと情報技術の共進化
デジタル・デバイドが生み出す新しい階層構造のメカニズム
3. プラットフォーム資本主義批判
ニック・スルニチェク『プラットフォーム資本主義』(2017)

4. 監視資本主義の病理
ショシャナ・ズボフ『監視資本主義の時代』(2019)
行動余剰データの収集・加工・販売という新たな商品形態
予測商品市場の成立と社会操作の可能性
人間の未来可能性の商品化がもたらす倫理的課題

5. 東アジア視点からの批判的考察
吉田徹『デジタルファシズム』(2022)
中国の社会信用システムと日本のマイナンバー制度の比較
東アジア型監視社会の文化的土壌(共同体主義との親和性)
ICTを媒介とした新たな権力編成の可能性
補足:分析視点のフレームワーク
これらの文献を相互参照しながら、特に以下の3つの論点を軸に批判的考察を深めることを推奨する:

技術の二面性:生産力向上と支配強化の弁証法

[例:ブロックチェーン技術の分散型可能性 vs 暗号通貨投機の暴走]

労働の再定義:クリエイティブ労働の幻想と実態

[例:YouTuberの自己商品化と不安定就業のパラドックス]

公共性の変容:デジタル・コモンズの可能性と囲い込み

[例:オープンソース運動の資本による収奪(コモディフィケーション)]


総括
研 究を進める際は、ICTの具体的な技術特性(アルゴリズム、ネットワーク効果、データ構造など)と資本蓄積プロセスの相互作用を、常に歴史的文脈で相対化 することが重要である。特に、AI技術の発展が労働価値説に与える影響や、メタバース空間における仮想地政学など、新たな課題領域にも目を向ける必要があ る。






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