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芸術は社会の変容を予言する

fine arts in society or sociology of art system

By David Diaz Martinez(?) from the FaceBook, "Banksy" fun site

「芸術のための芸術と一口にいってしまえば、社会と の関係などは初から論にならないかも知れぬ。けれども芸術を人生の表現だとすれば、そうして、人が到底社会的動物であるとすれば、少くとも芸術の内部にお のずから社会の反映が現われることは争われまい。芸術の時代的、または国民的特色というのも畢竟(ひっきょう)ここから生ずるのである。まして、芸術の行 われる行われない、発達する発達しないというような点となると一般社会の風俗や思潮やに支配せられないはずはない」——津田左右吉「芸術と 社会」(1913)

日本社会学会:テーマ別セッション(公募課題)「芸術は社会の変容を予 言する」

コーディネーター:落合仁司(同志社大学)

趣旨:
「芸術は社会に対して独特の位置を占めている。近代社会成立期の18世紀、近代社会成立の鍵となった科学的真理は、近代社会共同体成員に共有された共通思 考であり、倫理的あるいは法的正義もまた、近代社会共同体成員に共有された共通感覚であることを、カントはその『純粋理性批判』と『実践理性批判』におい て主張したにも関わらず、芸術は、より限定すれば美しい芸術、美術は、共同体ではなく個人に固有の感覚における快楽、個人に固有の趣味によって判断される 他はないことを、その『判断力批判』において力説した。芸術は近代社会成立の当初から、近代社会共同体の外部、真正の市場、真正の自由、真正の個人が生成 される場所に位置していた。

「近代社会がその絶頂を迎えた20世紀、芸術は、キュビズム、ダダイズム、シュルレアリズム、抽象表現主義、ポップ・アート、ミニマリズム、コンセプチュ アリズム、YBA (Young British Artists)と18世紀カントが想定していた美しい芸術とは全く異なる世界に到達した。芸術に対する哲学的反省である美学は、この新しい芸術に直面し て、改めて芸術とは何かを問い質される。この問いに最も適切な答えを与えたのが米国の哲学者アーサー・ダントーであった。曰く芸術とは、具象化された意 味、具象化された固有の思考である。芸術は、必ずしも美しいとは限らないが、芸術家個人に固有の思考を他者の感覚に触れることが出来るよう具象化したもの である。共同体ではなく個人に固有の感覚のみならず、個人に固有の思考が芸術の本質的な契機となった。個人に固有の思考の具象化、個人に固有の視点の具象 化は、まさしく遠近法と呼ばれるに相応しい。

近代社会において芸術は、個人に固有の感覚における快楽の位相を担っていた。現代社会における芸術は、個人に固有の思考の具象化、遠近法の位相を担ってい る。近代社会において快楽の追求が社会の功利主義的個人化という変容を招来したように、現代社会において遠近法の追求が社会の視点主義的個人化という変容 を招来すると考えるのは無理のない予言ではないか」。

コーディネーターリクエスト:芸術社会学、社会美学、現代社会論、ポピュリズム等、芸術と社会の変容を巡る諸問題への多様なアプローチによる発表を求む。

使用言語:日本語

出典:https://jss-sociology.org/meeting/20210420post-11572/ (2021年6月1日)

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