01　なんともまあ猫に関するウンチクとも駄弁ともつかない言の葉を重ねてきたものだ。では、猫類学とはいったいなんなのだろう。わしが、狗 類学で定義したことをそのまま展開すれば「猫（類）による、猫のための、猫自身による研究」こそが猫類学(felinology)である。さて、狗類学を 含めて獣医学やペット研究では東欧諸国が最先端を切っていることをご存知だろうか。猫類学の英訳であるフェリノロジーは、ラテン語の猫をさすフェリヌス （felinus）に由来する。そしてセルビアのベオグラード大学獣医学部のカリキュラムの一科目として由緒だだしくも採用されている学問である。もっと も、これは猫類をケアするための人類がおこなう獣医学の分野のレベルにとどまり、未だに、わしのいう「猫による、猫のための、猫自身による研究」のレベル には到達していない。

02　人類がやれ自分たちの起源や祖先がアウストラロピテクスだ、ホモ・ハビリスだ、と騒ぐように、イエネコ（tabby cats）にとっては、今から十年以上前に国際研究が米国の学術誌『サイエンス』（317(5837):519, 2007）が明らかしたように、わしらの祖先がリビアヤマネコと共通だととわかったことの喜びの大きさは、ここでは十分に表せられない。このご先祖様の確 定に、わしらはニャンニャの喝采をあげたものじゃ。

03　というわけで、わしのエセーは、猫類としてこの世に生を受けることがいかに幸せかについて若干の考察をしつつ、岩合さんの映画監督デ ビューを寿ぐものであった。かように、今日では人類と関わることが、猫類を幸せにすることだけでなく、聖なる学術の力を受けて、猫類そのものの社会変革の 契機をもつことができたのは、わしらにとり誠に慶賀すべきことだった。

04　ビバ猫類！　猫類万歳！　そして文化猫類学もついでに万歳！——【肉球の花押】

リンク

• 文化猫類学入門
• 吾が輩は猫である学
  

文献

• 垂水源之猫「文化猫類学入門」『ユリイカ』2019年3月 号、Pp.172-179, 2019年

その他