「デューラーのメランコリーのまえにひしめいている小道具には、犬が含まれている。メ
ランコリカーの心の状態を描いたアエギーディウス・アルベルティーヌスの記述が狂犬病
に連想を向けさせようとしているのは、なにも偶然ではない。古い伝承によると、「脾臓
が犬の生体を支配している」。犬はこの点で、メランコリカーと共通しているのである。
とりわけデリケートだと記されているこの臓器が悪化すると、犬は元気を失い、狂犬病に
かかるのだという。この点で犬は、メランコリー気質の暗い局面を具現しているのであ
る。その反面、犬の嗅覚と持久力を根拠に、倦むことなく研究にはげみ思索にふける人の
姿を犬に見たてることもあった。「ピエリオ・ヴァレリアーノは、このヒエログリュフ(ヒエログリフ)の
注釈のなかではっきりこういっている。〈メランコリーの相貌をはっきりと示している〉犬
は、ものを嗅ぎつけることと走ることにかけてはもっとも優れている。とくにデューラ
ーの版画では、犬が眠っている姿で描かれているため、このような寓意の二面性が増幅さ
れている。つまり、悪夢が牌臓に由来するのだとすれば、一方、予言の夢もメランコリカー
の特権なのである。予言の夢は、君王や殉教者の共有財として、悲哀劇ではおなじみの
ものである」(ベンヤミン 2001:238)。
Albrecht Dürer.Melencolia I. 1514
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