かならずよんで ね!

インフォデミック

Infodemic, an introduction

池田光穂

インフォデミックとは、情報 (information)と疫病(epidemic)の合成語で、(1)情報の横溢(=エピデミック状態)のなかで、その解決が困難になる状態、ならび に(2)デマ、流言、誹謗中傷などを含む誤った情報(misinformation)が疫病のように広がる現象である。再度くりかえします:「インフォデミックは、情報=インフォメーションと疫病=エピデミックの合成語で、(1)情報の横溢のなかで、その解決 が困難になる状態、ならびに(2)デマ、流言、誹謗中傷などを含む「誤った情報」が疫病のように広がる現象のことである」。

この状況の背景にあるのはここ数年のインターネット 化にメディア環境の大きな変貌の結果であると思われる。とりわけ第45代米国大統領であるドナルド・トランプ氏によるツイッター発言でみられた、反大統領 発言に対する「フェイク・メディア(fake media)」中傷は現在もなお常に論争のテーマでありつづけている。フェイクであるとか、真実ではないという言挙げが、実証による真偽判断ではなく、自 分の主観によるものだという「奇妙な」真理観は、以前の正常で常識的な議論ではパラノイアであるとか、病理であると社会から指弾されて、撤回するものであ るが、トランプ氏はその後も物議をかもす発言を続けている(2020年6月時点)。このような、真理と真偽を社会のコンセンサスにもとめない、「奇妙な」真理観をめぐる政治状況を、一般には「ポスト・トゥルース(ポスト真理)」の政治と呼ばれることになった。

インフォデミックに関する問題が、インターネットに 急速に登場するのはいわゆる、2019年末から中国の武漢で発生したと言われるSARS-CoV-2(ウィルス名)とそれに引き起こされる疾患COVID -19の流行以降における、このウィルスの来歴をめぐる、さまざまな憶測とその流布であり、とりわけ2020年5月以降本格化する、武漢のウィルス研究所 からの漏出あるいは、中国の生物兵器という情報の流布である。さらには、ミネアポリスでの警察官による逮捕拘束中に死亡したジョージ・フロイド氏(Killing of George Floyd- Wikipedia)の事件以降、全米で巻き起こった抗議デモや暴動誘発でも、インフォデミックだと主張されるようになる。

もともと、情報(information)と疫病(epidemic)の掛け合わせた言葉なので、疾病は隠喩として使われているのであるが、2020年2月末の英国の医学雑誌 "Lancet" (DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30461-X) は、John Zarocostasの "How to fight an infodemic" というオピニオンを掲載した。以下の3つの文脈のなかでこの用語が登場する。特に二番目の引用パラグラフではツナミ(津波)という用語を使った a kind of tsunami of information が登場する。

"WHO is leading the effort to slow the spread of the 2019 coronavirus disease (COVID-19) outbreak. But a global epidemic of misinformation—spreading rapidly through social media platforms and other outlets—poses a serious problem for public health. “We’re not just fighting an epidemic; we’re fighting an infodemic”, said WHO Director-General Tedros Adhanom Ghebreyesus at the Munich Security Conference on Feb 15." -https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30461-X)

「WHOは、2019年のコロナウイルス感染症 (COVID-19)の流行拡大を遅らせるための取り組みを主導している。しかし、誤った情報がソーシャルメディアなどを通じて急速に広まり、世界的な流 行となっていることは、公衆衛生にとって深刻な問題である。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、2月15日に開催されたミュンヘン安 全保障会議で、「私たちは単なる伝染病と戦っているのではなく、インフォデミックと戦っているのです」と述べた。

"Sylvie Briand, director of Infectious Hazards Management at WHO's Health Emergencies Programme and architect of WHO's strategy to counter the infodemic risk, told The Lancet, “We know that every outbreak will be accompanied by a kind of tsunami of information, but also within this information you always have misinformation, rumours, etc. We know that even in the Middle Ages there was this phenomenon”." - https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30461-X)

「WHOの保健緊急計画で感染症管理部長を務め、イ ンフォデミックリスクに対抗するWHOの戦略の立役者であるシルヴィ・ブリアンは、ランセット誌の取材に対し、『私たちは、すべてのアウトブレイクには一 種の情報の津波が伴うことを知っています。中世にもこのような現象があったことを私たちは知っています』と述べた。」

Aleksandra Kuzmanovic, social media manager with WHO's department of communications, told The Lancet that “fighting infodemics and misinformation is a joint effort between our technical risk communications [team] and colleagues who are working on the EPI-WIN platform, where they communicate with different…professionals providing them with advice and guidelines and also receiving information”. - https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30461-X)

「WHOのコミュニケーション部門のソーシャルメ ディアマネージャーであるアレクサンドラ・クズマノビッチ氏は、ランセット誌の取材に対し、「インフォデミックや誤った情報との戦いは、私たちの技術的リ スクコミュニケーション(チーム)と、EPI-WINプラットフォームで働く同僚との共同作業です」。」

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