ポスト真実の政治状況
On
post-truth politics
ポスト真実の政治状況、あるいは「ポスト真理の政治(post-truth politics)」——類似語として「ポスト事実の政治」「ポスト現実の政治」——とは、政策の実際の詳細や、それまでの客観的な事実よりも、それらが背景化され、個人の信条や感情 (思い)が主題化(=重要視)され る政治状況あるいは政治文化のことである。具体的に は、第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・ジョン・トランプ(Donald John Trump, 1946- ) 氏による、2016年時の選挙キャンペーンと、当選、就任後の、アメリカの政治文化は、典型的な「真理の後の政治状況」あるいは「ポスト真実の政治」と 言っても良いだろう。マイナーな事件ではあるが、同じ2016年のDeNAによる、ネットに虚偽情報を拡散させ、サーキュレーション閉鎖に追い込まれた事 件も「ポスト真実の政治」性が示唆される現象である。
さて、西欧リベラリズムの歴史的淵源は破壊と暴力に裏付けられていた(→「リ
ヴァイアサン・テーゼ」)。それゆえ、現代人が希求するように、リ
ベラリズムを主張した啓蒙主義者たちからそれらの冷酷さと残忍性を除いたら単なる幼稚園の「よい子の約束」になってしまう。それゆえに、啓蒙主義者たちの
著作にある毒に痺れることがなくなる.これがポスト真理論者の免疫力のなさ原因だ。
ウィキペディア(英語)では、これが現在では世界的な現象であるよ うで、次のように説明されている。
"Post-truth politics (also
called post-factual politics[1]
and post-reality politics)[2]
is a political culture in which debate is framed largely by appeals
to emotion disconnected from the details of policy, and by the repeated
assertion of talking points to which factual rebuttals are ignored.
Post-truth differs from traditional contesting and falsifying of facts
by relegating facts and expert opinions to be of secondary importance
relative to appeal to emotion. While this has been described as a
contemporary problem, some observers have described it as a
long-standing part of political life that was less notable before the
advent of the Internet and related social changes./ As of 2018,
political commentators have identified post-truth politics as ascendant
in many nations, notably Brazil, Russia, India, the United Kingdom and
the United States, among others. As with other areas of debate, this is
being driven by a combination of the 24-hour news cycle, false balance
in news reporting, and the increasing ubiquity of social media and fake
news websites.[3][4][5][6][7][8] In 2016, post-truth was chosen as the
Oxford Dictionaries' Word of the Year[9] due to its prevalence in the
context of that year's Brexit referendum and media coverage of the US
presidential election.[10][11]" - Post-truth
politics.
これに関連する現代用語を列挙してみよう。
● 著 者たち(シンガーとブルッキング 2019:39-41, 414-415)の認識:「現代のインターネットは単なるネットワークではなく、40億に近い人びとのエコシステムで、その一人一人が独自の思想と望みを もち、広大なデジタルの広場に自身の小さな一部を刻むことができる」(シンガーとブルッキング 2019:41)。
大きな嘘(Big lie) |
チェリー・ピッキング(cherry picking) |
サーキュラー・レポーティン
グ(Circular reporting) |
欺瞞(Deception) |
ダブルスピーク(Doublespeak) |
エコーチェンバー(Echo
chamber in media) |
ユーフェミスティック・ミス
スピーキング(Euphemistic
misspeaking) |
ユーロミス=EUの神話(Euromyth) |
偽旗作戦(false flag) |
ファクトイド(factoid) |
誤謬(Fallacy) |
虚偽報道(Fake news)フェイクニュース |
フィルターバブル(Filter bubble) |
ガスライティング(gaslighting) |
半分真実(Half-truth) |
[イデオロギー]フレーミング(Framing
- social sciences) |
ネット操作(Internet
manipulation) |
情報操作(Media
manipulation) |
プロパガンダ(Propaganda) |
文脈から外れた引用(Quoting
out of context) |
科学での捏造(Fabrication
in science) |
ソーシャルボット(Social bot) |
スピン(Spin in
propaganda) |
ハイブリッド戦争(Hybrid warfare) |
‘Gerasimov
Doctrine, 2014- ’ [Valery Gerasimov,
1955- ] |
フェイスブックドリル
(ウォールバンキング)26 |
サイバーバング、サイバータ
グ 26 |
ネプチューン・スピア作戦
90 |
オープンソース・インテリ
ジェンス (Open-source intelligence, OSINT)125 |
Human
intelligence, HUMINT |
Signals
intelligence, SIGINT |
ソックパペット(偽名ユー
ザー)179 |
インフルエンサー 183 |
ヘイトメッセージ |
いかに異様であっても「馴染
みやすい情報は拡散しやすい」 |
ボット |
「テロリズムは劇場である」
ブライアン・ジェンキンス 239 |
バイラル・マーケティング(Viral marketing) |
感情の操作 257 |
信憑性 264 |
マイクロターゲティング |
ナラティブ (→ナラティブ・ターン) |
「三戦」(心
理戦・法律戦・世論戦)中国人民解放軍 293 |
アテンション・エコノミー(Attention
economy) |
ソーシャルメディアの兵器化
(NATO)294 |
ミーム(meme)
301 |
ミーム学(Memetics)303 |
「カメラが私の銃」314 |
ハクティビスト(Hacktivist) | ハ クティビズム(Hacktivism) |
ソーシャル・エンジニアリング [社会科学] Social engineering (political science) |
ソーシャル・エンジニアリング [不正技術] Social engineering (security) |
敵
対生成ネットワーク(Generative
adversarial network, GAN)406 |
Joint Readiness Training Center
(JRTC), a U.S. Army
training center at Fort Polk, Louisiana |
Social Media Environment
and Internet Replication, SMEIR |
デンジャラス・スピーチ 422 |
情報における公衆衛生 (Public Health in Information) |
ファクト・チェッキング (Fact-checking) 検証行為 |
側面思考(Lateral thinking) |
プラトンの洞窟→洞窟の寓意(Allegory of
the Cave) |
陰謀論・陰謀理
論 |
で
たらめを見破る方法 |
感情 |
コミュニティ |
情報氾濫 |
サイボーグ |
戦争 |
構造的暴力 |
テロリズム |
ク
リティカル・シンキング |
インフォデミック |
もう一つの事実
(alternative fact) |
反撃すること
(fighting back) |
ファクトチェッキング |
政治的変態たちの生態研究 |
上掲の数字は、(シンガーとブルッキング 2019)による。
●
日本におけるポスト真理の政治状況(前川喜平さんのコラム)——ポスト真理の舞台を裏側から支えていた元官僚の暴露趣味的解説
出典:前川喜平「萩生田氏と加計学園」『東京新聞』2019年9月15日
● もっと冷静な分析も必要かもしれない
Anthony Downsの実質的デビュー作An Economic Theory of Democracy,
1957に二大政党制はイデオロギー的マンネリズムに陥りトランプのような新党が簡単にイ
デオロギーの配分を変えると予言しているよ。1957年にだ
ぜ!! 1980年に邦訳されている→民主主義の経済理論 / アンソニー・ダウンズ著 ; 古田精司監訳, 東京 : 成文堂, 1980年(→「民主主義の経済理論」)
● ポスト真実に関する審問(Lee McIntyre 2018 による)
1. ポスト真実ってなんだろうか? |
2. ポスト真実を理解するためのロードマップとしての科学拒否 |
3. 認知的バイアスの起源 |
4. 伝統的メディアの衰退 |
5. ソーシャル・メディアの隆盛とフェイクニュースの問題 |
6. ポストモダニズムははたしてポスト真理を生み出したのか? |
7. ポスト真実(の政治的状況)と戦うには? |
● フェイスブックならびにその運用会社であるMetaに送った異議申立書(2022.07.01)
タイトル「画像を検閲して一方的に禁止するのではなくメインのタイムラインをみて総合的に判断してください」。
これは、ナチスが発行していた『国家社会主義女性モニター(NS-Frauen-Warte)』誌の表紙映像です。画像そのものは、ハイデルベ ルグ大学でデジタル公開化されており、コモンズ化されており、著作権保護のないものです。私の投稿が禁止された理由はFBの側がきちんとアナウンスしない ために不詳ですが、画像の中にある、ナチス党のシンボルマークあるいは鉤十字が、親ナチと判断したようですが、ナチスのプロパガンダによるものでありませ ん。それは、そのメインのスレッドにおける文言から、ナチスの女性意識や優生政策との関連を批判的に紹介したものであることが、人間ならきちんとわかるは ずです。そのため、この禁止措置はネット上における「言論の自由」に抵触し、反ナチズムの啓蒙ためにナチの資料も公開されて広く論議されるべきという原則 を検閲により制限するという「言論の弾圧」をフェイスブックならびにその運用会社であるMetaは容認していると判断せざるをえません。この措置が人為的 なものなのか、AIによるものかは、私(=異議申立人)にはわかりませんが、安易な検閲手段が、重大な人権の侵害につながるものとして、フェイスブックな らびにその運用会社であるMetaは猛省していただきたいと思い、この抗議文を認めるものです。なお、この投稿には文字がありませんが、私は追加情報を記 載する時に、1)画像情報を投稿する、2)画像がアップされた時点で、さらに出典情報を追記する、という手順で、投稿記事をさらに加工することを常態的に おこなっていますが、フェイスブックならびにその運用会社であるMetaは、画像入力の投稿直後に検閲措置を講じたために、修正や抗弁する機会を一切与え ずに24時間の利用制限をかけ、またそれ以外の機能の制限をかけたままです。そのために、投稿者の良心ならびに精神衛生において多大な損害を生じせしめま した。このような事故がおこったのは、フェイスブックならびにその運用会社であるMetaの管理上の責任でもあり、事前の約款においてすでに通告済であっ たとしても、きわめて利用者の利便性と快適性を損なうものであります。以上、誠実に申し上げます。
リンク
文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
本研究はJSPS科学研究費 補助金(科研費)基盤研究(C) 20K01216.の助成を受けたものです。
Acknowledgement; This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number 20K01216.