マクナマラの効用計算思想
R.S. McNamara's Managements idea of War & Defense
解説:池田光穂
●マクナマラ(Robert "Strange" McNamara;1916-2009)の影響力とその思想[→年譜]
【核戦略思想】
(1)柔軟対応戦略 Flexible Responce Strategy,1961-
ゲリラ戦から限定的核戦争、全面核戦争などあらゆる戦争に対する抑止力としての兵器保有。米国の基本的な核戦略構想の中核をなす。(アイ ゼンハワーの大量報復戦略への批判から生まれる)
(2)損害限定 Damage Limitation,1964-
相手の核攻撃によって受ける被害を最小に限定する戦略。核戦力の増強、迎撃能力の向上、シェルターの整備
(3)確証破壊戦略 Assured Destruction Strategy,1954-
相手からの攻撃を受けても、そこから生き残った核戦力によって相手に対して壊滅的打撃を与える報復能力をもつ戦略。確証破壊水準と保有能力 を算出(例:ソ連の人口の1/5〜1/4、工業能力の2/3)
【財政運営】
PPBS、Planning-programming-budgeting System
財政を科学的に管理し、予算を合理的・効率的に編成する。
政策目的を達成するために費用対効果を体系的に分析し、これに基づく実行計画に対して予算配分する。1961-国防省、1965-他の官 庁。-1973
PPBSが頓挫した理由;
(1)関係官庁は都合のよいデータを出す。
(2)政策には複数の効果があり、目的別のプログラム作成が困難。
(3)政策間の優先順位を整理するための手段を持たなかった。
【対ゲリラ戦】60年代前半〜
ゲリラに対する作戦は、従来の戦況分析のパターンが通用しなかった。そのために代替する行動の進展ぶりを評価するための指数が考案された。
(a)軍事的指数
敵と味方の死傷者数の比率、双方の支配する地域の比率、脱走者の相対比、敵による事件の1カ月あたりの件数、双方の失った兵器の比率
(b)非軍事的指数
新しい仕事を始めるための許可申請件数、商品や食料の移動量(道路や水路の利用状況の把握)、農漁民への資金貸付高、農村地区の学生 数
マクナマラは、このような調査統計を根拠にして、戦況の好転(1962年7月)をプレス会議で報告している。(カウフマン『マクナマラの 戦略理論』1968:324)※これは本人は実質的に嘘であったことをドキュメンタリーで認めている。またこの発想はのちの世界銀行総裁就任におけるプライマリヘルスケア戦略の「選択的PHC」ドクトリンにも反映されている(池田注記)。
※コントの実証哲学における精神の発展段階論によ ると、神学的=軍事的段階は第一段階のものである。この段階では、究極因と想像力が支配的であるという。まったく、その通りである。軍事研究の提要は、究 極=勝利の達成であり、そのために多様な想像力(=シュミレーション、模擬戦)を積まなければならないからだ。
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文献
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