政治経済[再]入門
Anthropology for modern political economy
政治経済の人類学
なぜ今(2006年当時)政治経済の人類学か?
田辺(『社会人類学年報』論文、2005)の問題関心における「政治的人間」——実践主体に関するこれまでの見方とその見直し
従来の社会=コミュニティが個々人に対して実践的主体を構成していくのに対して、実践がコミュニティを形成していく(=ホッブス的回帰現 象?)
政治人類学は、どのように形成され、そのようにその問題をシフトし、そしてなぜ省みられることがなくなったのか?
(A)1960年に米国の政治状況——ウェストファリア体制の継続
冷戦期における政治=実践論
政治的人間(エイブナー・コーエン)
ゲーム論、合理的選択論(→エピソード「戦後民主主義の「失敗」」)
キューバ危機
戦時システムの継続『戦争の霧』、核戦争でクライマックス
ヴェトナム戦(対ゲリラ戦)で失敗
冷戦の継続〈対〉ヴェトコン:内戦・植民地解放闘争
(B)冷戦の終わり
植民地解放という革命の大義の崩壊
統治理念の変更(ネオリベラル・自由貿易思想)
国家による暴力の管理態勢の破綻
イスラム「革命」:復古主義というモダニズム+議論の公共性を通した民主主義
政治的暴力の分散:ゲリラ方法論の世界的散種、権利としての民衆的暴力行使
〈抵抗権〉から〈攻撃権〉へ
軍事的手段の大衆的普及(AK47、カラシニコフ):軍事産業の成長
「冷戦の終わりを植民地体制の終焉の象徴である60年代の新興独立国の誕生と比較してみよう。あるいはグアテマラが想像の共同体として今後 どうあるべきかのという議論」
歴史的文脈という拘束性=文化の拘束性から自由になり、グアテマラが1996年に再度「独立」した国と想定してみよう。ちょうど日本が 1945年に「独立」したように。
(C)人間の安全保障——大いなる幻想
カンボジア内戦、ボスニア内戦、コロンビア紛争、アフガン、イラク、米国イラン対立、南オセチア(グルジア)
(D)政治経済の人類学:方法論
パズル解きの人類学:シドニー・ミンツ『甘さと権力』: これまでの理論や資料の整理によって、指摘されていない諸問題が再発見可能になる。
政治経済の枠組みそのものを問うアプローチ:批判的研究
San rafael Arcangel-- testimonio de casamiento
方法論=事例研究
なぜ『甘さと権力』なのか?
1)人間の嗜好(感情・感覚)と政治経済(マクロ現象)の結びつきを全体論的(=人類学的)に指摘
2)「中心」のヨーロッパでの稀少品から大量消費と、「周辺」での奴隷制プランテーション労働が、砂糖を媒介として結びつくから:従属論、 世界システム論、ネオマルクス主義
3)ハースコビッツ、ミンツ、ウルフ、サーリンズ
自文化のマクロ現象の反省的研究
自ら従属実践している日常生活の脱構築的研究:言うは易し行うは難し。
理論的課題:他者性を媒介にして、自己の理解へいたる文化人類学的命題にどのように接近するのか?
サーリンズのプラクシスの理論=LS構造主義との親和性/しかし構造的マルクス主義とは画する
Clifford Geertz, "The Judging of Nations: Some comments on the assesment of regimes in the new states," Archives europeenes de sociologie/ Europian Journal of Sociology 18(1977):245-261.
『Z』は政治を取り扱った映画なのか?
右翼=パラミリタリー
独裁国民政府
リベラル勢力(左翼・学生・党派)
ジャーナリズム
予審判事
検事局(法務省)
ここに経済という要素はない(収穫を確実にするボルドー液散布の比喩でさえ、[リベラル]思想の芽を摘むということにしか流用されない)。
(E)ギアツ『農業の内旋』(1968)
クリフォード・ギアツの経済学(原洋之介)
ギアツ『農業の内旋』(1968)のとくに第4章
1.17世紀から19世紀 オランダ政府 "Super imposed their colonial economy":水田耕作を通して労働集約的な米の生産を図る。
2.19世紀:さとうきびの生産にジャワの水田耕作民に強制的に従事させることで、その富を収奪する。
3.その結果、ジャワの人口は増加し、同時に米の生産量もあがる(労働集約の結果)
インヴォルーション:農業生産のパターン+社会生活のパターン(個々の行動のなかにみられる)
アートデザイン[ホイジンガ?(『中世の秋』)、ボアズ?(Primitive Art)]からの借用
パターンの概念は、ベネディクトから
開発のパターンが外部からくるのではなく、内部からわき上がる(involve):その条件
(1)コロニアリズムの遺産:250年間
(2)開墾する土地の枯渇
(3)それ以上の経済生活上の戦略がない
(人口増加←+→労働集約農業生産)←+→(労働集約農業生産←+→農業生活の技芸の内旋)
"And this "late Gothic" quality of agriculture increasingly pervaded the whole rural economy: tenure systems grew more intricate, tenancy relationship more complicaated; cooperative labor arrengements more complex __ all in an effort to provide everyone with some niche, however small, in the over-all system" (pp.80-82).
リンク
文献
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099