文化人類学の新しい研究動向
文化人類学分野における知的伝統については別のところで解説しました。ここでは、世界の人類学において、どのような新しい研究動向があるのかをチェックします。
下記は、2005年9月の南アフリカの人類学年次大会のトピックスです。研究大会全体のテーマは「コミュニティ、変動、変容:21世紀の人 類学」となっています(翻訳は一部意訳しています)。
なぜ今、南アフリカであるのかという深い 意味はありません。ただし、アフリカは長いあいだ西洋列強の植民地支配が続き、人類学研究の対象と して特化してきました。南アフリカは、その中でも早く独立しましたが、国内植民地やアパルトヘイト(人種隔離政策)などの問題を抱えていました。しかしな がら、それらの問題を地道に克服し、さまざまな困難と立ち向かいながらも人種差別問題ときちんと向き合う姿勢を少しづつ確立しつつあります。このような環 境で活躍する文化人類学者は、自ずからその政治的・社会的役割を認識しつつ、その学問の使命を果たしていることが、これらのテーマにもうかがえると思いま す。
国際連合広報局編、1971=Online『アパルトヘイトの実情』東京:国際連合広報センター. https://www.unic.or.jp/files/print_archive/pdf/apartheid/apartheid_1.pdf Retrieved on August 15, 2019.
レ イモンド・ファースは、1952年、彼のフィールドのティコピア島民がハリケーンの被害にあったとき、英国政府を動かして食糧援助とその分配に貢献したと いう。しかし、R.C.ミッチェルに言わせれば、ソル・タックスのアクション人類学と同様、いかに住民が自己決定しようと、アクション人類学者(タックス 同様ファースもまた)よりも政府のほうがはるかにコントロール権限をもっていることが明らかだと批判的にみる(Michell 1970:45)。これは人類学者ができる最高の「応用」ですら、せいぜい権力や財力をもつ政府やエージェントへのお手継ぎに過ぎないということである。
これが、最近の人類学のテーマとして考え る有効な話題である考えた次第です。
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