研究倫理(2010年)
授業の目的
医歯薬学系、工学系などの研究に関わる倫理的諸問題の全体像を把握し、具 体的なトピックに即して、研究に従事する者として踏まえておくべき倫理原則 と規範を習得する。
講義内容
基礎生物学および工学研究および臨床医学研究を取り巻く倫理的・社会的な 課題を取り上げて、その背景、問題状況、見解の対立、解決策などを講述しま す。各講義では、それぞれの課題が生じてくる実際の研究の場面に即しなが ら、問題志向的に考察を加えていき、受講者が自ら考える契機となることを目 指します。
1日目
2日目
3日目
4日目
教科書特に指定しませんが、適宜資料を配布します。
参考文献授業時に適宜紹介します。
成績評価出席点、レポートの内容などを評価します。
■研究倫理を考える
近代科学やそれを実用化した革新的技術は飛躍的に発展し、人間や社会に対して多大な恩恵をもたらしてきた一方で、環境・生態系の破壊や大 量殺戮など の問題を引き起こしてきたことも歴史的事実です。科学や技術はまた、政治権 力や巨大ビジネスと結びつくとき、様々なマイノリティの人権の侵害につなが るということもあったし、その成果が万人に享受されないことも珍しくありま せん。自由かつ独創的で、質の高い科学研究は、そうした人間生活や社会との 関係を視野に収めた研究倫理に裏づけられたものでなければならなりません。 言い換えれば、科学研究は、それが人間や社会に対してどのような影響を及ぼ すのかを意識し、絶えず自らの営みを反省することが必要となるのです。従っ て、科学研究における責任ある行動が、誠実さ、正確さ、効率性、客観性と いった基本的な価値を尊重するものでなければならないことを踏まえ、科学研 究の健全な発展を図ることが研究に従事する者一人一人に求められます。
■今、なぜ、研究倫理か
近年、成果至上主義や利潤追求などの圧力によると思われる科学研究の不正 行為が頻発する傾向が見られます。科学研究において不正行為が行われると、 健全かつ正しい科学研究の発展が阻害されるだけでなく、研究に対する社会の 信頼が損なわれ、多くの人々に対して重大な悪影響がもたらされる可能性があ ります。それゆえ、多くの国では、不正行為を予防し、かつ起こった場合にこ れを適切に処理して再発防止に務めるために、国家レベルあるいは各大学・研 究施設がそれぞれ指針を定め、研究不正行為に対処するための研究倫理委員会 を設置しています。これに対して日本では、研究の不正行為が頻発している中 で、十分な対応ができているとは言えない状況にあり、政府や学術会議あるい は各大学・研究施設がようやく取り組みを開始しているところです。
■研究倫理観の向上のために
本講義では、医学・工学を中心に研究者を目指す大学院生を対象として、様 々な研究分野で理論・実践に従事する講師陣が、それぞれの立場から研究と人 間・社会の関わりについて講述します。そこでは、科学研究を取り巻く社会的 な課題が具体的に取り上げられ、受講者自身が自分自身の問題として考える姿 勢を身につけること、そして受講者各自の研究倫理観を向上させることが目指 されます。
■pdf資料
○大阪大学研究公正に関する遵守要綱
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/research/iinkai/fairness/files/kosei_yoko.pdf
○研究活動の不正行為への対応のガイドライン
(文部科学省科学技術・学術審議会 研究活動の不正行為に関する特別委員会)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu12/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2013/05/07/1213547_001.pdf
○「科学者の行動規範」(日本学術会議)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-s168-1.pdf
キーワード 学問、科学研究、倫理、研究公正、臨床試験
リンク
文献
その他の情報