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文化的感受性(cultural sensitivity)を鍛えることの重要性

On cultural sensitivity and lay cultural generalization

カメレオン

池田光穂

「文化というのは物事を明らかにするが、 それ以上に隠蔽もする」——エドワード・ホール(1966:51)

医療や保健の仕事において重要なことは、 患者の文化的背景、知識水準や意図を事前に十分に把握し、状況に応じて反応の観察や対話を通して、適切な看護を柔軟におこなうことにある。このような認識 論あるいは身体論的構えを、我々は文化的感受性が備わっているという。そこで警戒しないとならないのは、文化的一般化(lay cultural generalization)である。つまり発話者が育ち現在生活している文化的背景をもとに「その人の行動をその人が属する文化に基づいて一般化する こと」をいう。例えば「日本人だから寿司や刺し身が好きだろう」という見解が、文化的一般化の例である——なぜなら日本人も生ものを嫌う人がいる。つまり文化的ステレオタイプ(cultural stereotype)の一般化に注意すべきなので ある。

文化的ステレオタイプは、自文化 中心主義から生まれることが多く、また、異文化・異民族への差別の偏見の原因になるものもある。ただし、どのような社会や集団においても、自分た ち以外の人たちをステレオタイプで観る思考パターンがみられ、映画『私の中のあなた』 のように特異的な事件を通して新しくうまれることがある。ここから自由になることはとても困難である。専門家においてもこのステレオタイプという罠に陥り やすい。医療や保健は、自然科学にもとづく医学的知識に基づいているために、そのような文化による偏見(バイアス)が混じらないという誤解がある。しか し、ここで述べたように文化的偏見からなかなか自由になることができない。しかしながら他方でそれは文化への気づきを同時にもたらしてくれ、そのような偏 見から自由にしてくれるという利点も同時に兼ね備えている。文化偏見と文化理解は諸刃の剣なのである。

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