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文化人類学方法論

Methodologies of Cultural Anthropology in Japan

池田光穂

今から60年も前に出版されたアルフレッド・ クローバー他編『今日の人類学(Anthropology Today)』シカゴ大学出版局、1953年は、出版当初から〈文化人類学〉の教科書の定番になり、少なくとも私が所有している1970年印刷の第8刷ま で20年近く需要があったことは、その著作の重要性の高さを示している。この書物は序論のクローバーの紹介を含めて41本の論文(章)がある、一種の人類 学——アメリカの人類学は民族学(=文化人類学)・言語学・先史考古学・自然人類学の4本柱からなる——のエンサイクロペディアである。それぞれの章の内 容の一部には、さすがに古さはあるが、その項目の選択や研究の領域の画定については、いわゆる近代人類学(modernist anthropology)が、人間についての探求をおこなうときに、どのような方法により資料を収集し(=方法論)、それらを分析するのか、また、それ らに依拠する学説や理論とはなにかについて詳細に論じられているのが特徴である。

この本は大きく3部に分かれており、(1)歴史的アプローチの諸問題、(2)プロセス=過程の諸問題、(3)援用(allication)の諸問題にわ けられている。そのうち方法(method)という小見出しがついた論文群は、最初の2つの(1)歴史的アプローチの諸問題に3論文と、(2)プロセス= 過程の諸問題に5論文が掲げられている。それらのタイトルと筆者たちを紹介すると以下のようになる。

(1)歴史的アプローチの諸問題:

1.考古学における長期の編年(Long-range dating) ロバート・ハイツァー

2.人類残存物の化石の編年 ケネス・オークリー

3.文化史(Culture History)の戦略 アーヴィング・ローズ

(2)プロセス=過程の諸問題:

1.言語学[調査]におけるフィールドの方法と技法 フロイド・ランズベリー

2.心理学的技法:フィールドワークにおける投影テスト ジュール・ヘンリーとメルフォード・シャピロ

3.インタビューの技法とフィールドにおける[調査者と社会の]諸関係 ベンジャミン・ポール

4.フィールドワークにおけるコントロール(対照)と実験 オスカー・ルイス

5.人類学的素材(=データ・資料)の加工(=分析) ジョージ・マードック

以上をみると、調査器材が乏しく、先史考古学者は測量器材や発掘用の器材を、民族学者(=文化人類学者)は、ノートと筆記用具あるいは、心理学的テストや アンケートなど簡単な調査道具をもって赴いたようである。たぶん、今日だと録音機材(ICレコーダー)にデジタルカメラや、デジタル・ビデオ・カム、ある いはそれらのデータをフィールドで整理したり、現地で見てもらうためのラップトップコンピュータなどが必携であろうが、それほど大きな変化は起こっていな い。ただし、ICTにおけるネットワーククラウド化などを通して、現地の人たちもネットワークを経由して、人類学者訪問を事前に知ったり、また、フィール ドから去ってもなお、SNSなどを通して、画像データや電子メールなどを通して遠隔地でも繋がり、コミュニケーションのやりとりをしている可能性があっ た。これらのことは、フィールドの人たちと文化人類学者のあいだのコミュニケーションのやり方などが大幅に変化したが、方法論はそれほど大きくは変化して いないように思われる。

文化人類学の定義の部分で、その方法論を紹介したが、文化人類学者の仕事は、インタビューや観察、あるいは参与観察を通して、人々の暮らしについて調 べ、ある調査トピックに関するインタビューや会話をして、そのやり取りの記録から、最終的に民族誌(エスノグラフィー・ethnography)を書くこ とにある。そこでは、前者(前半)のフィールドワークにおいては、イ ンタビューや観察、あるいは参与観察が、その方法になり、後者のディスクワークにおいては、民族誌を書くための事象の分析などが、後者における方法になる。

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