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質的研究と量的研究のちがい

On Qualitative Approach and Quantitative Approach

池田光穂

質的研究と量的研究の違いは、すぐに、前者がエスノ グラフィやフィールドワークで、後者が、アンケートや統計調査だということぐらいで、それほど深く私たちは考えないと思います。また、理系の先生でとても 頭が悪くセンスのない人は、量的アプローチこそが本物の客観的で科学的なアプローチだと、質的アプローチのなんたるかについて満足に教室において説明でき ずに、質的アプローチに興味をもつ学生たちに「誤った知識」(=誤解と偏見)を吹聴する始末です。このような人は、量的な研究と質的な研究のバトルロイヤルという「神話」を信じる人です(→「量的研究と質的研究のバトルロイヤルの神話」)

世界の多くの優秀な研究者は、心理調査や社会調査、 あるいは経済行動の分析においても、質的アプローチと量的アプローチは車の両輪であり、どのような研究方法をとるにせよ、両者のアプローチの利点と弱点を よく理解し、つねに統合的に現象を理解することを主張しています(=ただし、これは、折衷的メソッドである「ミクスド・メソッド」を無反省に採用することでは決してありません)。したがって、この両者のアプローチの特性は、以下のようにまとめ られます。


質的研究
量的研究
目的
現象の質的理解(数量で表現できないよう な)や説明、あるいは解釈。現象を説明するのに、データ(当人の会話や観察など)そのものに語らせる。
現象の量的理解(質的情報は数量化し、で きないものは採用しない)をめ ざす。要素と要素間の関係や蓋然性(生起率や確率)で表現する。仮説の検証や予測をおこなう。
着眼点
・プロセスを重視する
・物事が起こる文脈を重視する
・研究対象者の発話や態度を尊重しながら、記録をとる
・データに忠実な態度を維持する
・すでに起こったことをアンケートや統計 などを使って数量化する
・結果から得られるデータを分析して、統計的に妥当な検証や、妥当な解釈を与える
・実験室などで被験者を人工的に観察したり、質問紙に記入してもらったり、反応を数量化してデータとする。
方法論の名称
フィールドワーク
参与観察
・半構造化あるいは非構造化面接
インタビュー
・フォーカスグループインタビュー
グランディドセオリー
・質問紙
・無作為対象抽出
・構造化面接
・人工的環境における観察データの数量化とその分析
・統計的検定/統計分析
解釈や理解にかける時間と手続
・丁寧
・深い
・反省的アプローチ
・真実とは何かという命題
・人間の主観性という領域への配慮
・ラポールや倫理について敏感
・プロトコル化
・正確で冷静な分析
・手続重視
・エラー入力回避技法
・信頼性
・一般化可能性の探求
収集や分析出来るサンプル数
・相対的に少ない
(量を増やすためには複数の調査者を研修させて、同じ質のデータ収集がとれるようにする)
・相対的に多い
(多くする理由は、統計的検証に耐えるためである。例外事例を一般化しないために留意する)

これらの用語の使用頻度から、それらの用語の隆盛を知る。下 図は、Google Books Ngram Viewer を使った[Qualitative,Quantitative,Approach]の英語書籍にみられる頻度変動である

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