授業のチェックポイント III
このページとこれにリンクする以下のページは、現代暴力論2002の教科書を使って予習と復 習をするための資料ページです。ここに掲げてある教科書は、現在市販されており、また一般の図書館でも収書——入っていない場合は収書してもらうようにリ クエストしよう!——されているものですので、この授業を受けなくても自学自習のための資料になります。
【教科書】
歴史的記憶の回復プロジェクト編、2000『グアテマラ 虐殺の記憶』飯島みどり他訳、東 京:岩波書店
第 II 部 恐怖のメカニズム
第1章 暴力の情報網
第2章 住民を標的に
第3章 恐怖のメカニズム
第1章 暴力の情報網
1. なぜ、内戦期のグアテマラ国家は住民の情報管理を徹底的におこなったのか?
2. なぜ、情報の管理と機密が一元的に結びつくのか? (情報の管理が公開と結びつく事例と比較して考えてみよう)
3. なぜ、国家は知り得た情報を住民(この場合は国民)に隠しておくのか? なぜ、一定の期間がたてば、国家は隠匿していた情報を国 民に公開するのか?
4. なぜ、情報将校は司令官に命令することが可能[→p.97のEl Periodico,19970811の記事参照]になったのか?
5. 「防諜」(p.99)とはなにか(言葉の定義)?
6. 情報機関のスペシャリスト(cf.p.109)に「命令や活動内容の秘密を守ること」を義務づけたことは、スペシャリストの活動 にどのような特性を与えることになったか? (指揮権をもつ参謀本部の観点から考察しなさい)
7. グアテマラの情報機関と、現代日本の公安警察の組織を比較検討しなさい。[→註]
8. なぜ文民大統領になったのに、大統領は参謀本部情報部は勢力を拡大することができたのか?
9. 準軍事集団(パラミリタリー)とはなにか?(言葉の定義)
10. 死の部隊(Death Squad)とはなにか?(言葉の定義)p.106
11. 「社会浄化」とはなにか?(言葉の定義)p.101
12. 「都市ゲリラに対する非公然活動を担当する即応部隊(第六部)」は、1980年1月30日のスペイン大使館占拠事件(テキスト では「虐殺事件」pp.101-105)によって、参謀本部内でその存在が重要視されるようになった。この占拠事件について要約、紹介せよ。
13. なぜ、移動軍事警察や財務警察など、本来は別の任務をもっていた警察機関(言いかえると暴力装置)は、他の情報機関に勝るとも 劣らない情報機構を整備するにいたったのか? その理由を考えなさい。pp.105-
14. グアテマラ政府の情報組織の成長にアメリカ合衆国の軍事ならびに情報機関はどのようなかたちで、協力関係にあったのか?
15. 合衆国が情報収集活動に技術的援助を惜しまなかった理由はなぜか?
16. 情報技術をふくむグアテマラに対する軍事援助におけるアメリカとイスラエルの違いはどこにあるのか?
17. グアテマラの情報組織が使った「中和」とはどういう意味か? p.109
18. 超法規的処刑とはなにか?[→註]p.109
第2章 住民を標的に
19. 軍部は敵とみなしていたゲリラや国際共産主義の「手先」について、首尾一貫性のない曖昧な見解しか持ち合わせていなかったにも かかわらず、住民へのイデオロギー的管理に関しては一貫した詳細な戦略を組むことができたのか?
20. 『グアテマラ群叛乱鎮圧マニュアル』における、レッドゾーンの住民への戦略の手順を説明せよ。pp.110-
21. 『グアテマラ群叛乱鎮圧マニュアル』(テキストP.111下段の3項目)において、住民はどのような存在として認識されていた のか、まとめなさい。また、そのような認識は、具体的な体験者の経験(p.112の証言1360)としては、どのように表現されているか照応させて検討し なさい。
22. 戦略村(strategic hamlet)、モデル村、開発拠点(development pole)とはなにか?pp.113-,p.116
23. 住民を統制するために、なぜ心理学や人類学の知識が動員されたのか? pp.113-
24. 住民がおかれた「極限状況」とはなにか? 極限状況について説明しなさい。p.114
25.[既出]自警団(Patrulla Civil Antodifensa)とはなにか?p.117-
26. 政府が自警団の組織を通して、住民に対してどのような訓練や任務を授けたか?
27. 自警団による人権侵害について、どのようなものがあったか?pp.120-124
第3章 恐怖のメカニズム
28. なぜわれわれは虐殺行為のメカニズムについて考える必要があるのか? なんのために考えるのか? p.125
29. 強制徴兵制度がもっていた問題点をあげなさい。pp.125-6
30. 特殊部隊とはなにか?
31. 情報機関に属することで兵士はなぜ、人権侵害に関わるより強大な力をもつことができたのか?pp.126-
32. 兵隊に暴力を教え込むために具体的にどのような教育手段がとられたか?pp.127-
33. 内部統制(p.133)という手段は、情報機関の組織に対してどのような影響を与えたか?
34. 虐殺は「兵士や将校の一時の衝動に駆られた行動の帰結ではない」(p.134)ことは、どのようなことから論証されるのか? (pp.173-5にある「11.虐殺の準備」も参照のこと)
35. レミーによる虐殺の定義とは何か?p.135
36. 虐殺に責任のある行為主体を重要な順にあげなさい。p.135のコラム参照
37. 住民が軍隊に対して失望したのは、どのような点か?p.136
38. 軍隊による虐殺が、なぜ事前に計画されたものであるという間接的な論拠とはなにか?p.137
39. 虐殺のあった日が市場のたつ日や祭りの日であるのは、どのような理由によるのか?p.138
40. ゲリラはいかなる理由で虐殺を遂行したのか?p.142
41. 軍隊とゲリラの共同体の破壊および住民の選択的殺戮には、明らかに異なったパターンがある。それらを明らかに、その理由をあげ よ。
42. なぜ虐殺された人たちは秘密墓地に埋葬されたのか?(p.175の「12.隠蔽—秘密墓地」も参照せよ)
43. 拷問のもつ社会的意味をあげなさい。p.144
44. ヨランダ・アギラルの証言(証言5447、本書pp.145-153)はなぜ「たくさんの人たちの物語」と題されているのか? そして、なぜ、この証言は、彼女の固有名が挙げられ、他の他の証言より長く引用されているのか?
45. 軍隊は何の目的で脅迫を行ったのか?そして、どのような人たちが脅迫の対象になったのか?pp.153-
46. 拉致と強制失踪とはどのように異なるのか?pp.155-162
47. 超法規的処刑とはなにか?p.162
48. (敵対する組織に対する)浸透とは何をさすのか? またどのような事例があるのか?pp.163-165
49. なぜ拷問の手続きはマニュアル化されていたのだろうか?p.165
50. 1980年代初頭にアルゼンチン人顧問の助言を受けて拷問の方法が変わったが、それはどのように変わったのか? なぜ、そのよ うな方法に変わったのか?p.166
51. 拷問の最終目的——少なくとも犠牲者を生存させることを前提とした——に性格改変(洗脳)があるのは、なぜか?
52. 軍隊の制度の中で女性はどのような意味づけがなされていたのか?証言1871(本書pp.172-3)をもとに考察しなさい。
第II部の結論(pp.176-8)
53. 「人間のもつ悪意」を前にした総体的なあきらめの意識をもつことが、なぜわれわれにとって適切ではないのか?
54. 残虐行為に参加した者は、心理学的問題を抱えているという主張をおこなうことは、どうして問題になるのか?
55. 内戦終了後、「秘密組織のネットワーク」(p.177)が存在すると指摘されているが、それは何か? またそれはどのような活 動をおこなっているのか?
56. この報告書の著者たちが「記憶は明らかに抑止機能をもっている」と主張する時、それは今まで考えてきた暴力の事象について、 いったい何を言おうとしているのか? 考えてみよう。
註
* 警察庁 (日本語)よりフレーム左の「警察の紹介」→「警察庁の組織」が参考になる。他に、青木理『日本の公安警察』講談社現代新書、2000年:熊大附 属図書館に収書してあります。
** 日本でも国家が「超法規的処置」を発動したことはある。1975年8月クアラルンプール事件、 1977年11月日航機ハイジャック事件。
応用問題
記憶を故意にねじまげ、社会を欺き、犠牲者の尊厳を踏みにじったと、本書で批判されている(PP.177-)以下のような団体および歴 史的事象について、どのような点で(1)記憶を故意にねじ曲げたのか? (2)どのように社会を欺いたのか? (3)どのようにしたことが犠牲者——それ ぞれの場合の犠牲者たちを特定してから——の尊厳を踏みにじったのか? について、事実関係をしらべ、個々に考察しなさい。
(A)ヨーロッパの人種差別運動(特にネオナチ)や極右勢力
(B)日本ならびにヨーロッパの歴史の修正主義者とよばれる人たち
【出典】歴史的記憶の回復プロジェクト編、2000『グアテマラ 虐殺の記憶』飯島みどり他訳、東京:岩波書店。