多元的医療行動
Pluralistic Medical Behavior
解説:池田光穂
ひとりの患者の病気と健康に対する行動や処方の中に、異なった医療体系の要素が含まれたり、使い分けられたり すること――これを多元的医療行動(pluralistic medical behavior)と呼ぶ。例えば、発病初期に民間療法で治療を試み失敗した場合、近代医療の処方に転換するもの。あるい はその逆、さらには併用がそれである。多元的医療行動は、近代医療における患者の受療モデルとしては、患者の無知あるいはコンプライアンスの悪さの象徴と して受け取られ、正当な評価を受けてこなかった。しかし、1960年代以降の医療人類学研究における、患者とその家族の意思決定行動に関する実証研究の蓄 積の結果、病気への対処行動が、雑多な全体論(holism)とプラグマティズムに裏づけられていることが指摘され、むしろ逆に、近代医療が前提とする単 純な行動モデルの無根拠性が明らかにされた。
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
■ 医療的多元論(仮想・医療人類 学・辞典)