はじめによんでください

日本人にみられる「禁忌の健康観」

Health as limited good in Japanese medical ethos

薬師如来坐像, 平安時代 9世紀, 国宝、奈良国立博物館(文化財オンライン

池田光穂

【初出】教育と医学,1990年10月号(38巻10号),pp.13-19(pp.907-913),1990年10月

およそ人の身は、よはくもろくし て、あだなる事、風前の燈火のきえやすしが如し。あやうきかな。つねにつゝしみて身をたもつべし  ―― 貝原益軒『養生訓』

「健康というものは、それを所有す るだれにとってであれ(すくなくとも消極的に、すなわち身体的苦痛のすべてを遠ざけることとして) 直接に快適である。だが、健康を善いものとよぶためには、それをさらに理性によって目的に方向づけなければならない。つまり健康とは、私たちをじぶんのあ らゆる仕事へと向かわせる状態であるということになるだろう」――カント『判断力批判』[1790]熊野純彦訳(p.124)

1. 健康観の多様性

2. 禁忌の健康観

3. 健康維持について

5. 健康増進について

6. スポーツに対する古典的イメージ

7. 健康観と身体観

追記

●季節に応じた食生活

「も う一つ日本人の常食に現われた特性と思われるのは、食物の季節性という点に関してであろう。俳諧歳時記(はいかいさいじき)を繰ってみ てもわかるように季節に応ずる食用の野菜魚貝の年週期的循環がそれだけでも日本人の日常生活を多彩にしている。年じゅう同じように貯蔵した馬鈴薯(ばれい しょ)や玉ねぎをかじり、干物塩物や、季節にかまわず豚や牛ばかり食っている西洋人やシナ人、あるいはほとんど年じゅう同じような果実を食っている熱帯の 住民と、「はしり」を喜び「しゅん」を貴(たっと)ぶ日本人とはこうした点でもかなりちがった日常生活の内容をもっている。このちがいは決してそれだけで は済まない種類のちがいである」 寺田寅彦(1948)「日本人の 自然観」 

8. 参考文献

リンク
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