生物資源へのアクセスと便益シェア
Access and Benefit-sharing, ABS
解説:池田光穂
その権利概念の登場以来、全地球において、知的財産権の保全と償還が十全におこなわれたことが、これまでな かったということに対する現状認識がこの議論の出発点である(→「民族医療の領有」)。
The Nagoya Protocol on Access and Benefit-sharing よりABS(「アクセスと便益シェア」)という言葉がよく使われるようになった。
"The objective of this Protocol is the fair and equitable sharing of the
benefits arising from the utilization of genetic resources, including
by appropriate access to genetic resources and by appropriate transfer
of relevant technologies, taking into account all rights over those
resources and to technologies, and by appropriate funding, thereby
contributing to the conservation of biological diversity and the
sustainable use of its components." - Article 1.
Objective, the Nagoya Protocol.
さて、すべての人に開かれた知的財産権の保全と償還は、まず、集団か個人(後者の場合は代理人)に対しておこなわれるか、どうかの峻別が 必要である。
また知的財産は、すでに有体物(=物質)になっているか、それとも特許や製法、あるいは先住民の長老の知恵の
ように有体物でないもの(=非物質)の形になっているかの峻別もまた必要である。
アニル・グプタ(1996)は生物多様性の保護とそれにもとづく知識や技術を保持している人々(個人や集団:例、先住民 族)に対する知的所有権に関するさまざまな保証手段を、(i)保証すべき対象は個人か/集団か、(ii)還元方法は貨幣を中心とする物質か/それ以外の サービスかの区分、すなわち4通りのタイプを考えた。下記の図は、その組み合わせについて示したものである(池田原図であるが、斎藤(1998:194) の作図を参照させてもらった)。
(a)物質以外の還元/対象者が個人
メディアや公的の場において個人の業績を認知顕彰する。学位の授与など。
(b)物質以外の還元/対象者が集団
政策による恩恵、コミュニティへの融資制度、学校カリキュラムへの支援など。
(c)物質による還元/対象者が集団
トラストファンド(コミュニティ基金)、コミュニティへの寄贈、インフラ整備など
(d) 物質による還元/対象者は個人
所有権にもとづく保護、経済的恩恵、年金制度、資源管理や開発を動機づける奨学金や研修制度。
従来の知的所有権にもとづく保護はこのカテゴリーに入る。
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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099