On Grid-Group Matrix by Mary Douglas
グリッドとグループの定義は、メアリー・ダグラスによるとだいたい、 次のようにまとめられるだろう。
「分析される対象の人たちが使っている用 語や概念範疇から研究者がある程度自由になり、その「外部」から独自の解釈を与えようとする1897年 のデュル ケーム『自殺論』[1985]の系譜上に位置付けられる議論は、エヴァンズ=プリチャードの研究成果を踏まえた業績、つまり1970年のダグラス『象徴と しての身体』(原題:ナチュラル・シンボルズ)[1983]の公刊を待たなくてはならなかった。しかし、ダグラスが同書で展開したグリッド(他者と関連づけ る自己の強さの度合い=人びとに押し付けられる分類体系の総量)とグループ(境界をもった社会単位の経験の度合い=人びとを相互に紐帯させる力のこと)で 構成される四象限分類と、社会統制としての妖術が重要な意味をもつか否かとい う、人間の行動原理とコスモロジー(宇宙観)との対応関係についての主張は、未だに論争的性格から脱しきれていない。
繰り返すが、グリッドは、他者と関連づけ る自己の強さの度合い、つまり人びとに押し付けられる分類体系の総量であるが、これは、自己の強さは内在的なものだけではなく、自分に押し付けられる分類 体系が強ければそれだけ、自立心も生まれると考えるのである。また、グループは境界をもった社会単位の経験の度合いをさすが、それは同調圧力が同時に、グ ループに自己を合わせようとする人びとを相互に紐帯させる内在的力の源泉にもなる。つまり、個人と社会は、2次元で対立する範疇として形成されると同時 に、社会も個人もそれぞれの存在であろうとするときに、個人は社会に、社会は個人に対して、どのような同調/自律や分離を求めるのかというマトリクス変数 で決定することを示しているのである。
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メアリー・ダグラス(Mary Douglas,
1921-2007)は、モースの贈与論の英語版解説において、この
1923-24年号として書かれた『社会学年報』論文がデュルケーム学派から
マル
クス主義に対抗しつつ、第一次大戦後のフランスの民主主義を救済する学問的回答でもあったことを指摘している。贈与論の第4章結論の冒頭にある「道徳的結
論」という標題が現在の学問的議論のスタイルに馴染んだ我々に対して違和感を与える理由は、彼女のこの指摘において氷解する。学問の実践において自らの政
治的立場を表明する伝統は少なくとも過去百年間の間に大きく変わった[DOUGLAS 1990:xvi; 池田 2001:320]」(→「民族医療の領有について」)。
以下のマトリクスは、マイケル・トンプソ ン(1982)のレビューをまとめた杉島(1988:284)からの引用である。
IV グリッド=強、グループ=弱 a)自己を中心とする社会的なカテゴリーの網の目の中で他者と関係をも つ b)世俗的な傾向をもつが、時として千年王国運動が爆発する c)穢れの概念は希薄 d)身体が社会の象徴として用いられることは少ない |
III
グリッド=強、グループ=強 a)明確な境界をもつ集団のなかで生活し,役割の分担も明確 b)複雑な儀礼をともなう宗教が発達している c)穢れは、集団の外的な境界ばかりでなく、集団内部のさまざまな境界とも関連する d)身体が社会と重ねあわされ、社会の構造が身体の構造に喩えられる |
I
グリッド=弱、グループ=弱 a)社会は最小限度しか構造化されておらず、流動的であると同時に個人主義的 b)世俗的であり、宗教はあったとしても儀礼や呪術を伴わない個人的な宗教 c)穢れの概念は希薄 d)身体が社会の象徴として用いられることは少ない |
II
グリッド=弱、グループ=強 a)明確な境界をもつ集団のなかで生活するが、役割の分担が不明確 b)外部の敵と結託して悪事を働く、妖術者の観念が顕著にみられる c)穢れは集団の境界と関連する d)集団が身体に喩えられる。そして身体の開口部が厳重に護られるようになる |
a)社会の特徴
b)コスモロジーの特徴
c)穢(ケガ)れの概念
d)象徴としての身体
■応用問題としてのナイル語系3部族の検
証(ダグラス 1983)
I グリッド=弱、グループ=弱 a)社会は最小限度しか構造化されておらず、流動的であると同時に個人主義的 b)世俗的であり、宗教はあったとしても儀礼や呪術を伴わない個人的な宗教 c)穢れの概念は希薄 d)身体が社会の象徴として用いられることは少ない
II グリッド=弱、グループ=強 a)明確な境界をもつ集団のなかで生活するが、役割の分担が不明確 b)外部の敵と結託して悪事を働く、妖術者の観念が顕著にみられる c)穢れは集団の境界と関連する d)集団が身体に喩えられる。そして身体の開口部が厳重に護られるようになる
III グリッド=強、グループ=強 a)明確な境界をもつ集団のなかで生活し,役割の分担も明確 b)複雑な儀礼をともなう宗教が発達している c)穢れは、集団の外的な境界ばかりでなく、集団内部のさまざまな境界とも関連する d)身体が社会と重ねあわされ、社会の構造が身体の構造に喩えられる
IV グリッド=強、グループ=弱
a)自己を中心とする社会的なカテゴリーの網の目の中で他者と関係をもつ
b)世俗的な傾向をもつが、時として千年王国運動が爆発する
c)穢れの概念は希薄
d)身体が社会の象徴として用いられることは少ない
■ナチュラル・シンボルズの章立て
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