チバ・シティ頌歌
Anthem for Cybanetic-City CHIVA, Ciudad Cibernética
"Come now, mon, if you seh time be mos' precious." - Nuromancer, by William Gibson
The sky above the port was the color of television, tuned to a dead channel.- Nuromancer, by William Gibson
"EL CIELO SOBRE EL PUERTO tenía el color de una pantalla de televisor sintonizado en un canal muerto." - Neuromante, por WILLIAM GIBSON
人間はサイバー管理の間隙をぬってパンクする時代になった——垂水源之介:タグジャンプ→(Neuromancer)
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サイボーグといえば、すでに人口に膾炙しているように人造人間のことをさす。サイバネティク・ オーガニゼーションの略語である。サイボーグは、臓器や感覚器あるいは骨格 や体液など人間のさまざまな器官を人工器官で置き換えて、水圏や宇宙圏など人間 が本来生きていけない環境に進出していこうという発想にその源を発している。サイボーグ都市とは、そのような着想に注目して、我々に必要な生活環境の機能 を次々と都市に賦与することによって、都市そのもの活力を回復させると同時 に、都市そのものをも変化させてゆこうとする都市創造の理念をさす。
若者に大いなる支持を受けている/受けていたW・ギブスンはSF小説『ニューロマン
サー』において、自分の脳とコンピュータの端末を直結することができる
近未来の新しい若者像を提示した。このような新しい小説の主人公たち(サイバーパンク)
は、コンピュータと自分の脳が織りなす空間=サイバースペース(電脳空間)のなかで自
由に跳梁し、時には多国籍企業や軍需産業からヤバイ情報を入手し、時にはそれをかすめ取るというという芸当までやってのける。
サイバースペースは近未来の人間の新しい知覚空間であるが、現在の我々の都市空間も、じつはか なり変化に富んだ異質な空間なのである(→「魔性のまち」のコラム参照)。自分たちの都市空間の異質性に気づきはじめたとき、それは我々の都市もサイボー グたる改造を必要とする町になる。
サイボーグのイメージは、かなりグロテスクなものであるが、現在、我々の身体は過酷な都市環境 の中で実際にサイボーグ化されているのである。例えば、視覚を酷使したために生じた眼鏡やコンタクトレンズの使用、食生活の変容による義歯、あるいはスト レスからくる禿頭に対するかつらなど、我々は半ばサイボーク化されており、これらは都市環境が本来の人間の尺度や強度においてすでに合わないという事態を 説明する。
従って、今度は、我々が自分たちの身体の尺度にあわせて都市空間を創造し、改造する時がきたの である。
"Neuromancer is a
1984 science fiction novel by American-Canadian writer William Gibson.
It is one of the best-known works in the cyberpunk genre and the first
novel to win the Nebula Award, the Philip K. Dick Award, and the Hugo
Award.[1] It was Gibson's debut novel and the beginning of the Sprawl
trilogy. Set in the future, the novel follows Henry Case, a washed-up
computer hacker who is hired for one last job, which brings him up
against a powerful artificial intelligence." - Neuromancer.
ウィキペディア「ニューロマンサー」より……
「サイバネティクス技術と超巨大電脳ネットワークが地球を覆いつくし、財閥(ザイバツ)と呼ばれ る巨大企業、そして「ヤクザ」が経済を牛耳る近未来。 かつては、「マトリックス」と呼ばれる電脳空間(サイバースペース)に意識ごと没入(ジャッ ク・イン)して企業情報を盗み出すコンピューター・カウボーイ であり、伝説のハッカー「ディクシー・フラットライン」の弟子であったケイスは、依頼主との契約違反の制裁として、脳神経を焼かれてジャック・イン能力を 失い、電脳都市千葉市(チバ・シティ)でドラッグ浸りのチンピラ暮らしを送っていた。/第一部千葉市憂愁(チバシティ・ブルース)そんなある日ケイスの元 に、全身に武装を施した街のサムライ(ストリート・サムライ)のモリイと名乗る女が現れ、彼女はケイスを謎の男アーミテジに引き合わせる。そしてアーミテ ジはケイスに、かつてケイスが失ったマトリックスへのジャック・イン能力の修復を代 償に、マトリックス空間で最も「ヤバい」コンピュータ複合体への潜入を 依頼するのだった。ケイスは依頼を引き受けるが、リンダが取引のブツであるRAMカセットを盗んだ事で「お友達」だったディーンによって殺 されてしまう。 そしてケイスは、陰謀とテクノロジーと暴力の支配する電脳世界へと舞い戻る」ニューロ マンサー(ウィキペディア)Neuromante.
The sky above the port was the color of
television, tuned to a dead channel. - William Gibson, Neuromancer,
1984 -「港の空の色は、空きチャンネルの合わせたTVの色だった」(黒丸尚
訳)。脳に接続された端子を光ファイバー経由で直接インターネットに接続する生体ハッカーの生き様を描いた世界初のサイバーパンク小説『ニューロマン サー』の冒頭の文章である。
空の色がVDT(Visual Display
Terminals)のホワイトノイズで表現されているところが、僕たちの新しい視覚認知の様式の到来を予言している。原文はインターネットに「転がって
いる」のでググってほしい。
●ニューロマンサー(ウィキペディアからのデータの吸い上げ。「引用符」は省略する)
第一部
千葉市憂愁(チバ・シティ・ブルーズ) |
サイバネティクス技術と超巨大電脳ネッ
トワークが地球を覆いつくし、財閥(ザイバツ)と呼ばれる巨大企業、そして「ヤクザ」が経済を牛耳る近未来。
かつては、「マトリックス」と呼ばれる電脳空間(サイバースペース)に意識ごと没入(ジャック・イン)して企業情報を盗み出すコンピューター・カウボーイ
であり、伝説のハッカー「ディクシー・フラットライン」の弟子であったケイスは、依頼主との契約違反の制裁として、脳神経を焼かれてジャック・イン能力を
失い、電脳都市千葉市(チバ・シティ)でドラッグ浸りのチンピラ暮らしを送っていた。 *** 自暴自棄に陥って危険な仲介業を続けるケイスの元に、全身に武装を施した街のサムライ(ストリート・サムライ)のモリイと名乗る女が現れ、彼女はケイスを 謎の男アーミテジに引き合わせる。そしてアーミテジはケイスに、かつてケイスが失っ たマトリックスへのジャック・イン能力の修復を代償に、マトリックス空 間で最も「ヤバい」コンピュータ複合体への潜入を依頼するのだった。ケイスは依頼を引き受け、最後の仲介屋の仕事を片付けようとするが、取 引のブツである RAMカセットを盗んだ恋人リンダが「お友達」だったディーンによって殺されてしまう。モリィと共にディーンを始末したケイスは、陰謀とテクノロジーと暴力の支配する電脳世界へと舞 い戻る。 |
第二部
買物遠征(ショッピング・エクスペディション) |
故郷であるスプロールに向かったケイス
は、大企業センス/ネットの保管庫から師匠ディクシー・フラットラインのROM人格構造物を盗み出すようアーミテジに命じられ、パンサーモダンズの協力で
それを成功させる。次にイスタンブールへと向かった一行は視覚芸術家リヴィエラを
拉致してチームに引き入れ、そして宇宙コロニー“自由界”(フリーサイド)へ
と飛ぶ。その一方でディクシーと共に
背景事情を探っていたケイスは、アーミテジが極秘作戦スクリーミング・フィストの失敗により廃人となった元軍人のコートで、“冬寂”(ウィンターミュー
ト)というAIによって操られている事を突き止める。 |
第三部
真夜中(ミッドナイト)のジュール・ヴェルヌ通り |
L-5植民群島のひとつザイオンでマエ
ルクム、アエロルの協力を取り付け、ケイスは“自由界”(フリーサイド)へと到着。“冬寂”(ウィンターミュート)の保有者である財閥テスィエ=アシュ
プールの拠点、ヴィラ「迷光(ストレイライト)」へ潜入するために、リヴィエラのショウを見せて3ジェインを誘惑する。その最中に“冬寂”(ウィンター
ミュート)への潜入を試みたケイスは、仮想世界に囚われ、“冬寂”(ウィンター
ミュート)の目的を教えられる。彼の目的はT=Aの保有する「もうひとつの
自分」“ニューロマンサー”へとアクセスし、AIとして進化する事だった。その為にリンダが殺され、アーミテジも操られ、他にも多くの無関
係な者が殺され
ている事を知って“冬寂”(ウィンターミュート)を憎悪するケイスだが、仮想世界か
ら脱出して混乱する彼をチューリング警察機構の捜査官が逮捕する。 |
第四部
迷光仕掛け(ストレイライト・ラン) |
“冬寂”(ウィンターミュート)が
チューリング捜査官を殺害したことで拘束を逃れたケイスは、そのままヴィラ「迷光」へと仕掛け(ラン)を開始する。しかしついに人格が崩壊
してコートとし
ての自分を取り戻したアーミテジは“冬寂”(ウィンターミュート)によって始末され、モ
リイはヴィラ「迷光」へ潜入して支配者アシュプール老人を殺害する
も、リヴィエラの裏切りによってヒデオに敗北、囚われてしまう。“冬寂”(ウィンターミュート)の指示でマエルクムと共に直接ヴィラ「迷光」へ乗り込んだ
ケイスは、そこから電脳に没入し、ニューロマンサーとの直接対決に挑む。
そして仮想空間の中に作られたリンダ・リーとの再会を乗り越え、ケイスはニューロ
マンサーに勝利。再び裏切ったリヴィエラはヒデオの目を潰して逃げようとするも、モリイに毒を盛られて死亡。3ジェインから暗号を聞き出したケイスは自己
への憎悪を燃やしながら、ディクシーをも消滅させるニューロマンサーの内部へと突入、“冬寂”(ウィンターミュート)との接続に成功する。 |
結尾(コーダ)
出発(デパーチャ)と到着(アライヴァル) |
モリイは置き手紙を残して姿を消し、
“冬寂”(ウィンターミュート)であった何かはアルファ・ケンタウリ系に存在するという同族を求めて旅立った。ケイスはただ一人スプロールへと帰還する。 |
登場人物(ウィキペディアからのデータの吸い上げ)
●登場人物 |
●ガジェット |
001 ケイス ヘンリー・ドーセット・ケイス。24歳。コンピューター・カウボーイ(ハッカー)。伝説的ハッカーであるボビー・クワイン(クローム襲撃)とディク シー・フラットライン(後述)の弟子。依頼主が盗ませた情報をさらに盗むという愚を犯し、その制裁として脳神経を焼かれ、ジャックイン不可能な体となった あとは、千葉シティで「仲介屋」の仕事をして糊口を凌いでいた。 |
101 千葉(チバ) 日本の千葉市。“臓器移植や神経接合や微細生体工学と同義語となった千葉”、“千葉の闇クリニック群こそ最先端”などと表現され、アンダーグラウンドで 違法なサイバネ技術やコンピュータ技術に群がる怪しげな外国人が大量にいる。ケイスがうろついている「仁清」(ニンセイ)はそうした外国人がたむろする一 種の治外法権地域のようで、日本人は近寄らない。有名な書き出しから始まる“千葉市憂愁”は評価が高く、また千葉は後々になっても重要な要素として語られ る。 |
002 モリイ モリイ・ミリオンズ。女サムライ(用心棒)。あだ名は「段々剃刀」(だんだんかみそり)等。神経の高速化、眼窩に埋め込んだミラーシェードのサングラス 兼ディスプレイ、あだ名の由来となった指の爪の下から飛び出す薄刃など、さまざまな身体改造を施している。爪の刃と"短針銃"(フレッチャー)が主要な武 装。彼女の初出は短編『記憶屋ジョニイ』であり、そこではジョニイという少年をパートナーにしていた。本作ではジョニイの末路が語られている。続編である 『モナリザ・オーヴァドライヴ』にも再登場する。 |
102 チャット 茶壺(チャツボ)。千葉の仁清にある「筋金入り」の国外居住者用バーで、ここで一週間飲み続けても日本語を耳にすることはないという。 |
003 アーミテジ ケイス、モリイ、フィン、リヴィエラを雇い、冬寂(ウィンターミュート)への潜入を行わせようとする謎の人物。 |
103 安ホテル(チープホテル) 棺桶(コフイン)と呼ばれるカプセル状の個室を備えた宿泊施設。(カプセルホテル) |
004
ウィリス・コート大佐 アーミテジの正体と思しき元陸軍大佐。最初期のハッキングである極秘作戦スクリーミング・フィストに関わっていたが、作戦は失敗。重傷を負って半ば廃人と なり、再起不能に陥ったと言われている。 |
104 新円(ニュー・イェン) 作中で使われる日本の旧紙幣。電子マネーが一般的になった劇中でも、世界中の闇マーケットで流通しているという。 |
005 リヴィエラ ピーター・リヴィエラ。巧みな美容整形による優美な容貌と、一度折れたのを不器用に直した鼻といった容姿。麻薬中毒者。身体改造による、他人の視覚に自分 が望む視覚象を投影する能力をもった芸術家。その強度も自由に調節可能で、網膜を焼くこともできる。 |
105 叶和圓(イェヘユァン) 作中でケイスが好んで吸うタバコの銘柄。 |
006 フィン 情報屋兼機材屋。ケイス、モリイをサポートする。 |
106 ウルトラスエード 車の内装に使われていた素材。実在する東レの人造皮革エクセーヌの北米向け名も「ウルトラスウェード」だが、同一かは不明。 |
007 フラットライン マコイ・ポーリー、通称ディクシー・フラットライン。ボビー・クワインと並ぶ伝説的ハッカーでケイスの師。作中ではすでに故人であり、生前の情報が ROM構造物(メモリ)として記録された擬似人格として登場する。"フラットライン"の呼び名は、かつてジャック・イン時に脳死状態(脳波がフラットライ ン)になったにもかかわらず生還したことに由来する。 |
107 擬態ポリカーボン 背景に合わせて模様が変化する光学迷彩服。決まった模様を再生する録画機能を備えた服もあり、ファッションにも応用されている。 |
008 マエルクム ザイオン人。曳航船(タグ)「マーカス・ガーヴィ」を操縦してケイス達をサポートする。 |
108 カウボーイ コンピュータ・カウボーイ。ジョッキーとも。デッキを使ってジャック・インし、電脳空間を駆け抜けるハッカー(クラッカー)のこと。 |
009 3ジェイン レイディ・3ジェイン・マリー=フランス・テスィエ・アシュプール。軌道上に暮らす閉鎖的な財閥「テスィエ=アシュプール」の一族。同族に「8ジャン」 もいるが、ぜんぶで何人いるのかは不明。 |
109 BAMA 通称"スプロール"。「ボストン=アトランタ=メトロポリタン軸帯」の略称。ニューヨーク市、アトランタ市、ボストン市の3つを合わせた北米東部のベル ト地帯。ドームに覆われた空に無数の高層建築が立ち並ぶ。ケイスの故郷とされ、世界中のマトリックス・ハッカー文化の中心。 |
010 ヒデオ 3ジェインの部下のクローン忍者。身体改造を施したモリイを圧倒するほどの超人的な戦闘能力をもつ。 |
110 マトリックス 電脳空間(サイバースペース)。電子情報網を視覚象徴化した共感覚幻想(GUI)。マトリックス内のデータは現実の地理に対応した座標が割り当てられて おり、格子空間の中に浮かぶ輝くネオンの立体物として表示される。 |
011 老アシュプール ジョン・ハーネス・アシュプール。テスィエ=アシュプール一族の創始者。冷凍睡眠で寿命を保っているが、狂気に侵されている。 |
111 氷(アイス) Intrusion Countermeasure Electronics(ICE:侵入対抗電子機器)の略称。重要なデータやネットワークを不正なアクセスから守るためのセキュリティシステム。翻訳版で は「氷」に「アイス」というルビで書かれており、この語は作者の別作品でもよく使用される。特に黒い氷と呼ばれるものは潜入に失敗するとハッカーの脳を焼 き切り死に至らしめる。(参照:攻性防壁) |
012 マリー=フランス マリー=フランス・テスィエ。テスィエ=アシュプール一族の創始者。AIの冬寂(ウィンターミュート)とニューロマンサーを作ったが、夫に殺害された。 |
112 氷破り(アイスブレイカー) ICEを突破するための専用のクラッキング・ソフトウェア。 |
013 冬寂(ウィンターミュート) たびたびケイスの前に現れるAI(人工知能)。潜入の標的にして雇い主。ベルンに本体(メインフレーム)があり、限定的スイス市民権を所有している。 |
113 デッキ(Deck) コンピューター・カウボーイが「ジャック・イン」するのに使用する端末。平べったい皮膚電極を額につけて使用する。マトリックスにジャック・インする 「マトリックス・デッキ」や「シムスティム・デッキ」などがあり、用途に応じて組み合わせて使用する。ケイスに与えられたのは「オノ=センダイ・サイバー スペース7」というモデルで、これにホサカのコンピューターやソニーのモニタなどを接続して使用する。メーカーによって接続コネクターの規格が違う。 |
014 ニューロマンサー 冬寂(ウィンターミュート)の脳の半身。ニューロは神経。夢想家(ロマンサー)、魔道師(ネクロマンサー)。本体(メインフレーム)はリオにある |
114 疑験(シムスティム) 「シムスティム・デッキ」を介して、他人の視覚・聴覚・触覚などの感覚を共有する。訳は「疑似体験」の略だと思われる。生中継の他に、編集された記録へ のアクセスも可能。 |
015 リンダ リンダ・リー。20歳。ケイスの千葉シティでのガールフレンド。 |
115 構造物 個人の人格や記憶などを記録したROMカセット。電源を切るたびに短期記憶が消えてしまうので、長期間活動させるには、外部に記憶媒体(バンク)を用意 しておく必要がある。またROMであるが故に、行動がほぼ予測できるという。本作中では既に故人のディクシー・フラットラインのものが登場。 |
116 マイクロソフト 知識などを記録したシリコンの断片で、耳の後ろに埋め込んだソケットに差し込んで使用する。ちなみにマイクロソフト社の設立時期は本作よりも早く 1975年設立。 |
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117 個室屋(?) 性サービス業。手術を受けて無意識状態のホスト(ホステス)に、客の嗜好に合わせたソフトウェアを乗せて楽しむ。 |
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118 スクリーミング・フィスト 先の戦争でアメリカがソ連の情報ネットワークに潜入しようとした軍事作戦。隊員は軽飛(マイクロフライト)でソ連領内に侵入し、同乗した操作卓オペレー ターがソ連のアイスを突破してウイルスを注入する手筈だったが、軍上層部の裏切りで壊滅した。この作戦の操作卓オペレーターが、コンピュータ・カウボーイ の起源であるという。 |
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119 パンサー・モダンズ スプロールで流行している不良少年集団。モリイの依頼でセンス/ネット社に対する陽動作戦を担当した。典型的なモダンズは歯牙移植手術等による獣じみた 容貌に、耳には大量のマイクロソフトを挿し、擬態ポリカーボンを着込んでいる。 |
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120 ザイオン人 高軌道のザイオン・クラスタに住むラスタファリアン。独特の言葉遣いで話す。 |
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121 ザイバツ、ヤクザ 多国籍の企業組織/犯罪組織を指す。圧倒的な規模と影響力を持った存在であることが示唆される。財閥は作中、オノ=センダイ、ホサカ、センス/ネット、 テスィエ=アシュプールなどの名が出る。 |
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122 テスィエ=アシュプール株式会社(SA) T=A。同族経営の強力な財閥(ザイバツ)の一つで、高軌道上に本拠を持つ。閉鎖的で、クローン技術によって一族を増やしてきた。AI“冬寂”(ウィン ターミュート)を所有する。 |
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123 自由界(フリーサイド) テスィエ=アシュプールが所有する、高軌道上の保養地(スペースコロニー)。紡錘体(スピンドル)で、遠心力によって人工重力を発生させている。 |
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124 迷光(ストレイライト) ヴィラ・ストレイライト。自由市の先端部にあたる、テスィエ=アシュプール一族の邸宅。内側に向かって増殖。 |
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125 AI 人工知能。人間を凌駕する情報処理能力を持つが、運用には莫大な費用がかかるため大企業でなければ保有できない。 |
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126 チューリング AI(人工知能)が必要以上の能力を得て人類の管理から脱することがないように監視する公的機関。名称はチューリング・テストなどを考案したアラン・ チューリングに由来すると思われる。 |
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The sky above the port was the color of television, tuned to a dead channel. "It's not like I'm using," Case heard someone say, as he shouldered his way through the crowd around the door of the Chat. "It's like my body's developed this massive drug deficiency." It was a Sprawl voice and a Sprawl joke. The Chatsubo was a bar for professional expatriates; you could drink there for a week and never hear two words in Japanese. Ratz was tending bar, his prosthetic arm jerking monotonously as he filled a tray of glasses with draft Kirin. He saw Case and smiled, his teeth a web work of East European steel and brown decay. Case found a place at the bar, between the unlikely tan on one of Lonny Zone's whores and the crisp naval uniform of a tall African whose cheekbones were ridged with precise rows of tribal scars. "Wage was in here early, with two Joe boys," Ratz said, shoving a draft across the bar with his good hand. "Maybe some business with you, Case?" Case shrugged. The girl to his right giggled and nudged him. The bartender's smile widened. His ugliness was the stuff of legend. In an age of affordable beauty, there was something heraldic about his lack of it. The antique arm whined as he reached for another mug. It was a Russian military prosthesis, a seven-function force-feedback manipulator, cased in grubby pink plastic. "You are too much the artiste, Herr Case." Ratz grunted; the sound served him as laughter. He scratched his overhang of white-shirted belly with the pink claw. "You are the artiste of the slightly funny deal." "Sure," Case said, and sipped his beer. "Somebody's gotta be funny around here. Sure the fuck isn't you." The whore's giggle went up an octave. "Isn't you either, sister. So you vanish, okay? Zone, he's a close personal friend of mine." She looked Case in the eye and made the softest possible spitting sound, her lips barely moving. But she left. "Jesus," Case said, "what kind a creep joint you running here? Man can't have a drink." "Ha," Ratz said, swabbing the scarred wood with a rag, "Zone shows a percentage. You I let work here for entertainment value." As Case was picking up his beer, one of those strange instants of silence descended, as though a hundred unrelated conversations had simultaneously arrived at the same pause. Then the whore's giggle rang out, tinged with a certain hysteria. Ratz grunted. "An angel passed." "The Chinese," bellowed a drunken Australian, "Chinese bloody invented nerve-splicing. Give me the mainland for a nerve job any day. Fix you right, mate. . ." "Now that," Case said to his glass, all his bitterness suddenly rising in him like bile, "that is so much bullshit." |
港の上空は、チャンネルが合っていないテレビのような色をしていた。 「使ってるわけじゃないんだ」と、ケースがチャットのドアの周りの人ごみを押しのけて進むと、誰かが言った。「まるで、体が巨大な薬物欠乏症になったみた いだ」と。それはスプロール特有の口調とジョークだった。チャットスボはプロの駐在員のためのバーで、一週間飲んでも日本語を二言も聞かない場所だった。 ラッツがバーテンダーをしていて、義手を単調に動かしながら、トレーにキリンの生ビールを注いでいた。彼はケースを見て微笑み、東欧製の鋼鉄と茶色の腐敗 が絡み合った歯を見せた。ケースはバーのカウンターに席を見つけた。ロンニー・ゾーンの娼婦の奇妙な日焼けと、正確な列の部族の傷痕が頬骨を走る背の高い アフリカの男の crisp な海軍の制服の間に。 「ウェッジが早めに来てた。ジョーの連中と一緒だった」ラッツは良い手でドラフトビールをカウンターに押し出した。「お前と仕事があるかもしれないな、 ケース?」 ケースは肩をすくめた。右隣の女がくすくす笑って彼を突いた。 バーテンダーの笑みが広がった。彼の醜さは伝説級だった。安価な美が手に入る時代において、その欠如には何か紋章のような威厳があった。古びた腕がもう一 つのマグカップに伸びた。それはロシア軍製の義手、七機能の力覚フィードバック操作装置で、汚れたピンクのプラスチックで覆われていた。「あなたはあまり にも芸術家すぎる、ケースさん」ラッツは唸った。その音が彼の笑い声だった。彼はピンクの爪で白シャツからはみ出た腹を掻いた。「あなたは少し笑える取引 の芸術家だ」 「そうだな」ケースはビールを啜りながら言った。「この辺りでは誰かが笑わせなきゃならない。お前じゃないのは確かだ」 娼婦の笑い声が 1 オクターブ高くなった。 「あなたもそうじゃない、お姉ちゃん。だから、消えてくれ。ゾーンは私の親しい友人だ」 彼女はケースの目を見て、唇をほとんど動かさないで、できるだけ小さな唾を吐くような音を立てた。しかし、彼女は立ち去った。「まったく、ここは一体どんな不気味な店なんだ?酒も飲めないじゃないか」 「ハハ」とラッツは傷だらけの木を布で拭きながら言った。「ゾーンは割合で払ってる。お前はエンターテイメント価値のために働かせてるんだ。」 ケースがビールを拾い上げようとした瞬間、奇妙な沈黙が降りた。百の無関係な会話が同時に同じ休止点に到達したかのように。そして娼婦の笑い声が響き渡った。その中にはある種のヒステリーが混じっていた。 ラッツは呻き声を上げた。「天使が通った。」 「中国人だ」酔ったオーストラリア人が叫んだ。「神経接続は中国人が発明したんだ。神経手術なら本土に連れて行ってくれ。お前を治してやるよ、相棒……」 「それこそ」ケースはグラスに呟き、突然、苦味が胆汁のように胸に湧き上がった。「それこそ、とんでもない嘘だ。」 |
The Japanese had already forgotten more neurosurgery than the Chinese
had ever known. The black clinics of Chiba were the cutting edge, whole
bodies of technique supplanted monthly, and still they couldn't repair
the damage he'd suffered in that Memphis hotel. A year here and he still dreamed of cyberspace, hope fading nightly. All the speed he took, all the turns he'd taken and the corners he'd cut in Night City, and still he'd see the matrix in his sleep, bright lattices of logic unfolding across that colorless void. . . The Sprawl was a long strange way home over the Pacific now, and he was no console man, no cyberspace cowboy. Just another hustler, trying to make it through. But the dreams came on in the Japanese night like live wire voodoo and he'd cry for it, cry in his sleep, and wake alone in the dark, curled in his capsule in some coffin hotel, his hands clawed into the bedslab, temperfoam bunched between his fingers, trying to reach the console that wasn't there. |
日本人は、中国人がこれまでに知っていた神経外科の知識よりも、すでに多くのことを忘れていた。千葉の闇クリニックは最先端であり、毎月、技術全体が更新されていたが、それでも、彼がメンフィスのホテルで受けた損傷を修復することはできなかった。 ここに来て一年、彼はまだサイバースペースを夢見ていた。希望は夜ごとに薄れていった。ナイト・シティで取ったスピード、曲がり角、手抜き——それでも彼 は眠りの中でマトリックスを見続けた。無色の虚空に広がる明るい論理の格子……スプロールは太平洋を越えた遠い故郷への道だった。彼はコンソールマンで も、サイバースペースのカウボーイでもなかった。ただ、生き残ろうとする、もう一人のハスラーに過ぎなかった。しかし、その夢は、日本の夜、活きたワイ ヤーのヴードゥーのように彼を訪れ、彼はそれを求めて泣き、眠りの中で泣き、暗闇の中で一人、棺のようなカプセルホテルで目を覚まし、ベッドの板に爪を立 て、指の間にテンパフォームを詰め込み、そこにないコンソールに手を伸ばそうとした。 |
https://lib.ru/GIBSON/neuromancer.txt_with-big-pictures.html |
クレジット:旧名称「サイボーグ都市」→新名称「チバ・シティ頌歌」
リンク
文献
その他の情報
Mitzub'ixi Quq Ch'ij copyleft, ∞
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
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