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Matrix Ontology: A fragment

(断片)マトリクス・オントロジー(マトリクス存在論)

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池田光穂

5.2 現実性〈対〉仮想性の二元論:マトリクス三 部作について(承前)

ウォシャウスキー兄弟の監督になるいわゆる「マトリクス三部作」すなわち"The Matrix"(1998), "The Matrix Reloaded"(2003), "The Matrix Revolutions"(2003) は非常に奇妙な映画である。にもかかわらず多くのSF映画ファンを魅了してきており、金字塔と評する熱心なカルトファンも多い。その魅力はそれまでのSF 映画が自己主張していたエージェントやギミックの魅力よりも「現実」と「仮想現実」を対等に並置し、主人公がその往還をおこない自己探求するというダイナ ミズムにあるように思われる。人類学者にとって民話・神話・インフォーマントの語りなどのいわゆる口頭伝承が、当該文化や社会の分析にとって重要な資料と なったり、当の社会の人びとが「考えるのに適している」ためにこのような口頭伝承をさまざまな行動を誘発させる原動力としていることをみても、マトリクス 三部作についてそれを題材として取り上げることは僅かばかりでも意味のあることだと思われる。本節ではその梗概(シノプシス)を述べてみよう。

会社員のプログラマーであるトーマス・アンダーソ ンは天才ハッカー(クラッカー)「ネオ」の異名をもつ別の顔をもっているが、後に恋仲になるトリニティ の導きによりモーフィアスと出会う。モーフィアスやトリニティたちのよると、アンダーソンが生活している世界はコンピュータネットワークによって作られた 仮想現実の世界であり、「本当の現実世界」は機械が人間を支配下におきネットワークに繋げているという。その中で最後の抵抗をする「生身の人間たち」はザ イオンという地下世界の片隅で、船(シップ)と呼ぶ船を駆使してネットワークコンピュータを攻撃する遊撃戦下にあった。しかし機械世界はセンチネルという 蛸のようなロボットをザイオンに派兵して最後の殲滅戦を仕掛けていた。

ネオはトリニティらと共にモーフィアスの指揮のも とにある人間の遊撃隊に加わり、その抵抗運動に加わる。シップに乗り込み遊撃隊員たちは身体の部分に埋 め込まれたジャックに接続されてマトリクスの仮想現実の世界に潜り込む。そこではエー ジェント・スミスというプログラム(personification of the Program, Agent Smith)が潜りこんだ人間のプログラムとマ トリクス内で作動しているプログラムを恭順させ、反抗的なものに対しては同化するという支配を敢行していた。このような世界観と2つの世界の間の移動につ いて当初理解できなかったネオであるが、モーフィアスたちはネオが「救世主」であることを予感し、ネオを仮想世界に共に「連れ戻そう」とする。逡巡しなが らもネオは彼らとともにマトリクスの世界に「戻る」。

他方、マトリクスの世界はただひとつのコンピュー タプログラムが一元的に支配する世界ではなく、さまざまな「人間=エージェ ント=プログラム」が住まう 世界でもある。そのマトリクス世界の中には、反抗勢力である「人間=エージェント=プログラム」が存在する。その中の中心的な存在であるオラクルは、マト リクス世界では普通のおばさんであるが、個々人の占いのみならず世界の未来の趨勢の予知能力をもつ。彼女はネオたちに、マトリクスの仮想現実の世界は機械 =コンピュータが作りかつ支配する世界だけではなく、より広大な精神世界の一部であることを告げる。そこで、ネオはモーフィアスが言う単なる予言者なので はなく、予めプログラムされ救世主になることを予定された「存在」であることを、オラクルの予言などから明らかにされる。

そこでは、またザイオンもマトリクス世界と敵対す るだけの抵抗拠点=社会=コミュニティという実体ではなく、マトリクス世界を破局から救うために「アー キテクト」によって作られた存在であるというのだ。オラクルの予言によると、ネオもザイオンもアーキテクトによって予定されたプログラムだというのであ る。そこでネオは「現実世界」の親しい人たち(=ザイオンの住人)を武力闘争を通して共に闘うか、人類一般を救うためにマトリクス世界の改変にコミットす るかの選択を迫られる。しかし「現実世界」では、無数のセンチネルがザイオンに向かいつつあった。

三部作目の"The Matrix Revolutions"(2003)のスートリーは複雑なので、ここでは私の議論に必要な内容の概要だけを要約する。ネオはネットに潜ったままだった が、その場所はマトリクス(ソフトウェアが走っている世界)とソース(メインフレーム)の境界上のであるモービル・アヴェーニューという地下鉄の駅にい る。そこでインド人風の夫婦と小さな女の子サティーに出会う。この境界世界はメロビンジアンとその従者トレインマンに支配されている。モーフィアス、トリ ニティらはネオを救済するために駅に侵入するがトレインマンに阻まれる。メロビンジアンはネオを幽閉しているが、モーフィアスらはネオの解放を要求する が、メロビンジアンは「予言者の眼」をかわりに要求する。他方、ネオは予知能力を獲得しつつあり、未来の幻影を観ることができるようになっていた。予言者 はネオに、そのような力の関係や複数のスタンドアローンになりより力をましたスミス(元のエージェント・スミス)について説明をした。

ネオがいなくなったところに闖入したスミスは、予 言者と(プログラム的に)同化し予言者の能力もまた獲得するようになった。他方、現実世界にもどったネ オはさまざまな交渉を経て、自分の予知能力に従って船に乗り込み「マシーン・シティ」にトリニティとともにのりこんでゆく。しかし船内にはすでにスミスに 同化されていた乗組員ベインが潜んでおり、ベインはトリニティを人質にし、最終的にネオの眼を焼き彼は盲目になる。しかしながらさまざまな能力をつけたネ オは最終的にトリニティを解放し、ベイン(=スミスの代理・分身)を打倒することに成功する。彼らはマシーン・シティに向かう。

途中トリニティの死を経験するもようやくマシー ン・シティに到着したネオはマトリクスの中枢にあるデウス・エクス・マシーナ——このジョークとしか思え ない「存在の名前」は興ざめするめに当然のことながら映画のなかでは明示されない——と対話する。その中でネオはデウスと交渉し、スタンドアローンになり マトリクスの意思とは関係なしに行動しはじめたスミスを打倒することを条件にデウスは機械と人間のあいだの和平すなわちザイオンへの侵攻を中止する約束を とりつける。

しかしながら仮想世界と現実を往還する能力をもつ ようになり強力にパワーアップしたスミスの前にネオは倒されてしまう。驚喜するスミスであったがオラク ルを同化した時に手に入れた予言者の眼で目の前に繰り広げられていることは、スミス自らがネオに対してオラクルの予言の言葉を掛ける「始まるあるものには 終焉あり、ネオ」と。その時にスミスはすべてがオラクルの罠であったあることに気づきつつ消滅(デバッグされて)してしまう。

仮想現実の世界にシーンが転回し[人格化された] アーキテクトと予言者が登場する。予言者はアーキテクトと対話し、マトリクスから人間が解放されたこと を宣言する。なぜならマトリクスはこの段階でヴァージョンアップを遂げることができ、人間だけが「唯一のエネルギー」ではないことが明らかにされる。サ ティとセラフ(「翼のない天使」)が予言者オラクルのもとに歩み寄る。そしてマトリクスは新しい夜明けを迎える。

The Matrix, 1998

In 1999, in an unnamed city, Thomas Anderson, a computer programmer known as "Neo" in hacking circles, delves into the mystery of the "Matrix". His search brings him to the attention of hacker Trinity, who discloses that the enigmatic Morpheus can answer Neo's questions. At his workplace, Neo is pursued by police and Agents led by Agent Smith. Morpheus guides Neo's escape by phone, able to somehow remotely observe their movements, but Neo ultimately surrenders rather than risk a hazardous getaway.

The Agents interrogate Neo about Morpheus but he refuses to cooperate. In response, they seal Neo's mouth shut and implant a robotic device in his abdomen. Neo awakens at home, initially dismissing the encounter as a nightmare until Trinity and her allies arrive, extract the implanted tracker, and bring Neo to Morpheus, their leader. Morpheus offers Neo a choice: a red pill to uncover the truth about the Matrix or a blue pill to forget everything and return to his normal life. Opting for the red pill, Neo's reality distorts, and he awakens submerged in a mechanical pod with invasive cables running throughout his body. Neo witnesses countless inert humans similarly encased and tended to by machines before he is ejected from the facility and rescued by Morpheus aboard the hovercraft, the Nebuchadnezzar.

Morpheus reveals that the year is approximately 2199. In the 21st century, humanity lost a war with their artificially intelligent creations, leaving the Earth a devastated ruin. As a last resort, humans blackened the sky to eliminate the machines' access to solar power and, in response, the machines developed farms of artificially grown humans to harness their bioelectric energy. The Matrix is a simulated reality based on human civilization at its peak, designed to keep the subjugated humans oblivious and pacified. The remaining free humans established an underground refuge known as Zion, living a harsh existence on scarce resources. Morpheus and his rebel crew hack into the Matrix to free and recruit others, manipulating the rules of the simulation to gain superhuman physical abilities. Even so, they are outmatched by the overwhelmingly powerful Agents—sentient programs protecting the Matrix—and dying in the Matrix causes death in the real world. Morpheus liberated Neo because he believes him to be "the One", a prophesied figure destined to dismantle the Matrix and liberate humanity.

The crew enter the Matrix to seek guidance from the Oracle, the prophetic figure who foretold the existence of the One. She implies that Neo is not the One and warns him of an imminent choice between his life and Morpheus's. The crew are ambushed by Agents after being betrayed by Cypher, a disgruntled crew member who wants to be reinserted into the Matrix to enjoy its comforts. Convinced of Neo's importance, Morpheus sacrifices himself to confront Smith, only to be overpowered and captured. Meanwhile, Cypher exits the Matrix and begins forcefully disconnecting the others, killing them. Before Cypher can kill Neo and Trinity, Tank, a subdued crew member, regains consciousness, kills Cypher, and safely extracts the survivors.

Smith interrogates Morpheus to obtain access codes for Zion's mainframe, which would allow them to end the human resistance. Determined to rescue Morpheus, Neo reenters the Matrix with Trinity. They successfully free Morpheus, who escapes the Matrix with Trinity, but Smith intercepts Neo. Gaining confidence in his abilities, Neo fights Smith, demonstrating comparable power and eventually killing him. However, Smith resurrects in a new body and kills Neo.

In the real world, machines called Sentinels attack the Nebuchadnezzar. Standing by Neo's real body, Trinity confesses her love for him and that the Oracle prophesied she would fall in love with the One. In the Matrix, Neo revives with newfound abilities to perceive and control the Matrix. He effortlessly destroys Smith and exits the Matrix just as the Nebuchadnezzar's electromagnetic pulse disables the ship's power and the Sentinels. Sometime later, within the Matrix, Neo communicates with the system, promising to show the enslaved humans a world of limitless possibilities, before flying away.
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Matrix

1999年、とある都市。ハッカー仲間から「ネオ」と呼ばれているプロ グラマーのトーマス・アンダーソンは、「マトリックス」の謎に迫っていた。彼の探索は、謎めいたモーフィアスがネオの質問に答えられると明かすハッカーの トリニティの注目を集める。ネオは職場にて、スミス捜査官率いるエージェントと警察に追われる。 モーフィアスは電話でネオに逃亡の手引きをし、彼らの動きを遠隔で何とか監視していたが、危険な逃走を試みるよりも、ネオは最終的に降伏する。

エージェントたちはモーフィアスのことをネオに尋問するが、彼は協力を拒否する。 それに対して、彼らはネオの口を塞ぎ、腹部にロボット装置を埋め込む。ネオは自宅で目を覚ますが、当初はそれを悪夢だと思い、トリニティと仲間たちが現 れ、埋め込まれた追跡装置を取り出し、リーダーであるモーフィアスのもとへ連れて行くまでは、その出来事を悪夢だと思い込んでいた。モーフィアスはネオに 選択を迫る。マトリックスの真実を明らかにする赤い錠剤か、すべてを忘れて元の生活に戻る青い錠剤か。赤い錠剤を選んだネオの現実が歪み、彼は機械のポッ ドに潜り込み、体中にケーブルが張り巡らされた状態で目覚める。ネオは、同じようにケースに収められ、機械によって世話をされている無数の無気力な人間を 目撃する。その後、施設から脱出し、ホバークラフトのネブカドネザル号に乗ってモーフィアスに救出される。

モーフィアスは、現在がおよそ2199年であることを明かす。21世紀に人類は人工知能の創造物との戦争に敗れ、地球は荒廃した廃墟と化していた。最後の 手段として、人間たちは空を黒く塗りつぶしてマシンが太陽エネルギーを利用できないようにした。これを受けてマシンは、生体電気エネルギーを得るために人 工的に人間を栽培する農場を開発した。マトリックスは、人類文明の絶頂期を基にしたシミュレートされた現実であり、支配された人間たちに気づかれないよ う、また、彼らをなだめるために作られたものだ。残った自由な人間たちは、ザイオンと呼ばれる地下の避難所を築き、乏しい資源で厳しい生活を送っていた。 モーフィアスと反乱軍の仲間たちは、マトリックスに侵入し、他の人々を解放し、勧誘するために、シミュレーションのルールを操作し、超人的な身体能力を得 る。それでも、彼らは圧倒的な力をもつエージェント(マトリックスを守る意識のあるプログラム)に敵わず、マトリックスで死ぬと現実世界でも死ぬことにな る。モーフィアスがネオを解放したのは、彼こそが「ザ・ワン」であり、マトリックスを破壊し、人類を解放する運命にあると予言された人物だと信じていたか らだ。

クルーは、予言者であるオラクルから助言を得るためにマトリックスに入る。オラクルは、ネオが「選ばれし者」ではないことをほのめかし、ネオに迫り来る、 自分の命とモーフィアスのどちらかを選ぶという選択について警告する。クルーは、マトリックスの快適さを再び味わいたいと願う不満分子サイファーに裏切ら れ、エージェントに待ち伏せされる。ネオの重要性を確信したモーフィアスは、スミスと対決するために自らを犠牲にするが、圧倒され捕らえられてしまう。一 方、サイファーはマトリックスから抜け出し、他の仲間たちを強制的に切断し、殺し始める。サイファーがネオとトリニティを殺す前に、拘束されていたタンク が意識を取り戻し、サイファーを殺し、生存者を無事に救出する。

スミスは、ザイオンのメインフレームへのアクセスコードを入手して人類の抵抗を終わらせるため、モーフィアスを尋問する。モーフィアスを救い出す決意をし たネオはトリニティと共に再びマトリックスに入る。彼らは無事にモーフィアスを解放し、モーフィアスはトリニティと共にマトリックスから脱出するが、スミ スがネオの行く手を阻む。自分の能力に自信を得たネオはスミスと戦い、互角の力を発揮して最終的にスミスを倒す。しかし、スミスは新たな肉体を得て復活 し、ネオを殺す。

現実世界では、センチネルと呼ばれる機械がネブカドネザルを攻撃する。ネオの実体のもとに立ち、トリニティは彼への愛を告白し、予言者が彼女が「選ばれし 者」と恋に落ちると予言したことを告げる。マトリックスの中で、ネオはマトリックスを感知し制御する新たな能力を得て復活する。彼は難なくスミスを破壊 し、ネブカドネザルの電磁パルスが船の動力とセンチネルを無効化するのと時を同じくしてマトリックスから脱出する。しばらくして、マトリックスの中で、ネ オはシステムと通信し、奴隷となっている人間たちに無限の可能性の世界を見せると約束し、飛び去る。


The Matrix Reloaded, 2003

Six months after escaping the Matrix,[b] Neo and Trinity are now romantically involved. Morpheus receives a message from Captain Niobe of the Logos calling an emergency meeting of all ships of Zion. An army of Sentinels is tunneling towards Zion and will reach it within 72 hours. Commander Lock orders all ships to return to Zion to prepare, but Morpheus asks one ship to remain to contact the Oracle. Within the Matrix, the lone ship's crew is encountered by the former Agent Smith, who copies himself over the body of crew member Bane and uses the phone line to leave the Matrix.

In Zion, Morpheus announces the news of the advancing machines. The Nebuchadnezzar leaves Zion and enters the Matrix, where Neo meets the Oracle's bodyguard Seraph, who leads him to her. The Oracle reveals that she is part of the Matrix and instructs Neo to reach its Source with the help of the Keymaker. As the Oracle departs, Smith appears, telling Neo that he became a rogue program after being defeated by him. He demonstrates his ability to clone himself over other inhabitants of the Matrix, including the new upgraded Agents. He tries to take over Neo's body but fails, prompting a battle between Neo and many copies of Smith. Neo defends himself, but is forced to retreat.

Neo, Morpheus, and Trinity visit the Merovingian, who is imprisoning the Keymaker. The Merovingian, a rogue program with his own agenda, refuses to let him go. His wife Persephone, seeking revenge on her husband for his infidelity, leads the trio to the Keymaker. Morpheus, Trinity, and the Keymaker flee while Neo holds off the Merovingian's henchmen. Morpheus and Trinity try to escape with the Keymaker, pursued by several Agents and the Merovingian's chief henchmen, the Twins. After a long chase, Trinity escapes, Morpheus defeats the Twins, and Neo saves Morpheus and the Keymaker from Agent Johnson.

The crews of the Nebuchadnezzar, Vigilant, and Logos help the Keymaker and Neo reach the Source. The Logos crew must destroy a power plant and the Vigilant crew must disable a back-up power station to bypass a security system, allowing Neo to enter the Source. Haunted by a vision of Trinity's death, he asks her to remain on the Nebuchadnezzar. The Logos is successful, but the Vigilant is destroyed by a Sentinel. Trinity replaces the Vigilant crew and completes their mission. Agent Thompson corners her and they fight. As Neo, Morpheus, and the Keymaker try to reach the Source, the Smiths ambush them. The Keymaker is killed after unlocking the door to the Source for Neo.

After entering, Neo meets a program called the Architect, the creator of the Matrix, who explains that, as the One, Neo is an intentional part of the design of the Matrix, which is now in its sixth iteration. Neo is meant to stop the Matrix's fatal system crash that naturally recurs due to humans' free will leading dozens to gradually refuse to accept the simulation. As with the five previous Ones, Neo has a choice: either reboot the Matrix from the Source and pick a handful of survivors to repopulate the soon-to-be-destroyed Zion, as his predecessors all did, or go to save the imperiled Trinity, who entered the Matrix to save him, causing the Matrix to crash and killing everyone in it, which along with the destruction of Zion would result in the extinction of the entire human race. Neo chooses the latter, prompting a dismissive response from the Architect.

Neo's vision of Trinity comes true as she is shot by Agent Thompson while falling off a building. Before she hits the ground, Neo arrives and catches her. He then removes the bullet from her chest and restarts her heart. They return to the real world, where Sentinels attack them. The Nebuchadnezzar is destroyed, but the crew escapes. As the Sentinels catch up to them, Neo realizes he can sense the machines in the real world and telepathically destroys them but falls into a coma. The crew are picked up by another ship, the Mjolnir. The Mjolnir’s captain Roland reveals that the machines wiped other ships defending Zion after someone prematurely activated an EMP and only one survivor was found: the Smith-possessed Bane, who lies beside Neo in the medical bay, also unconscious.

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Matrix_Reloaded
マトリックスを脱出してから6か月後、[b]ネオとトリニティは今では 恋愛関係にある。モーフィアスは、ロゴスの艦長ナイオビから、ザイオンの全艦船に緊急会議招集のメッセージを受け取る。センチネルの軍勢がザイオンに向 かってトンネルを掘っており、72時間以内にザイオンに到達するだろう。ロック司令官は全艦船にザイオンに戻って準備をするよう命令するが、モーフィアス は予言者に連絡するために1隻の船に残るよう要請する。マトリックスの中で、たった一隻残された船の乗組員は、かつてのエージェント・スミスと遭遇する。 スミスは、乗組員の一人ベインの身体に自分のコピーを乗っけ、電話回線を使ってマトリックスから脱出する。

ザイオンでは、モーフィアスが迫り来る機械の群れについて知らせる。ネブカドネザル号はザイオンを出航し、マトリックスへと入っていく。そこでネオは、予 言者のボディガードであるセラフと出会う。セラフはネオを予言者のもとへと導く。予言者は自分がマトリックスの一部であることを明かし、ネオにキーメー カーの助けを借りてソースに到達するよう指示する。予言者が去ると、スミスが現れ、自分がネオに敗れて不正なプログラムになったと告げる。スミスは、アッ プグレードされたエージェントを含むマトリックスの他の住人たちに、自分のクローンを作る能力を示した。スミスはネオの体を乗っ取ろうとするが失敗し、ネ オと多数のスミスのコピーとの戦いが始まる。ネオは自らを守るが、撤退を余儀なくされる。

ネオ、モーフィアス、トリニティはキーメーカーを監禁しているメロビンジアンを訪れる。メロビンジアンは独自の計画を持つ反逆プログラムであり、キーメー カーを解放することを拒否する。彼の妻ペルセポネは、夫の不貞に対する復讐を求め、3人をキーメーカーのもとへ導く。モーフィアス、トリニティ、キーメー カーは逃亡し、ネオはメロビンジアン配下を足止めする。 モーフィアスとトリニティはキーメーカーと共に逃亡を図るが、エージェント数名とメロビンジアンの幹部であるツインズに追われる。 長い追跡の末、トリニティは逃げ延び、モーフィアスはツインズを倒し、ネオはエージェント・ジョンソンからモーフィアスとキーメーカーを救う。

ネブカドネザル号、ビジラント号、ロゴスの乗組員がキーメーカーとネオをソースまで導く。ロゴスの乗組員は発電所を破壊し、ビジラント号の乗組員はセキュ リティシステムを回避するためにバックアップ発電所を無効化し、ネオがソースに入るのを助ける。トリニティの死の幻に悩まされた彼は、彼女にネブカドネザ ル号に残るよう頼む。作戦は成功するが、ヴィジラントはセンチネルに破壊される。トリニティはヴィジラントの乗組員と入れ替わり、任務を遂行する。トンプ ソン捜査官に追い詰められたトリニティは彼と戦う。ネオ、モーフィアス、キーメーカーがソースに到達しようとしたとき、スミスが待ち伏せする。キーメー カーはネオのためにソースへの扉を開けた後、殺される。

中に入ったネオは、マトリックスの創造主である「アーキテクト」と呼ばれるプログラムに出会う。アーキテクトは、ネオが「選ばれし者」として、6度目の反 復を迎えたマトリックスの意図的な一部であることを説明する。ネオは、人間の自由意志によって数十人が徐々にシミュレーションを受け入れなくなることで自 然に繰り返されるマトリックスの致命的なシステムクラッシュを食い止める役割を担っているのだ。ネオには、過去5人の「選ばれし者」と同様に選択の余地が ある。すなわち、彼らの先人たちと同じように「ソース」からマトリックスを再起動し、生き残った一握りの人々を選んで、まもなく破壊されるであろうザイオ ンを再建するか、あるいは、自分を救うためにマトリックスに入り、マトリックスをクラッシュさせてその中の全員を殺し、ザイオンの破壊とともに人類全体を 絶滅の危機に陥れたトリニティを救いに行くか、である。ネオは後者を選択し、建築家は軽蔑的な反応を示した。

ネオのトリニティに関する予知は現実のものとなり、彼女はトンプソン捜査官に撃たれ、ビルから落下する。彼女が地面に落ちる前にネオが到着し、彼女を受け 止める。ネオは彼女の胸から弾丸を取り出し、心臓を再起動させる。彼らは現実の世界に戻り、センチネルが彼らを攻撃する。ネブカドネザル号は破壊される が、乗組員は脱出する。センチネルが追いついてきたとき、ネオは現実世界の機械を感じ取ることができ、テレパシーでそれらを破壊するが、昏睡状態に陥る。 乗組員は別の船、ムジョルニア号に救助される。ムジョルニア号の船長ローランドは、誰かが早期に電磁パルスを起動したために、ザイオンを守る他の船が全滅 し、ただ1人の生存者が発見されたことを明かす。その生存者はスミスに憑依されたベインで、医療室でネオの隣に横たわり、やはり意識不明の状態だった。
The Matrix Revolutions, 2003

After the Mjolnir saves the crew of Nebuchadnezzar,[b] Neo and Bane still lie unconscious in the Mjolnir's medical bay. Neo's consciousness is trapped in a subway station named Mobil Ave, a transition zone between the Matrix and the machine world. He meets a "family" of programs, including a girl named Sati. The "father" tells Neo the subway is controlled by the Trainman, a program loyal to the Merovingian. When Neo tries to board a train with the family, the Trainman refuses and overpowers him.

Seraph contacts Morpheus and Trinity on behalf of the Oracle, who informs them of Neo's confinement. Seraph, Morpheus, and Trinity enter Club Hel, where they confront the Merovingian and force him to release Neo. Troubled by visions of the Machine City, Neo visits the Oracle, who reveals that Smith intends to destroy both the Matrix and the real world. She tells him "everything that has a beginning has an end." After Neo leaves, a large group of Smiths assimilates Sati and Seraph. The Oracle does not resist assimilation, and Smith gains her powers of precognition.

In the real world, the crews of the Nebuchadnezzar and the Mjolnir find and reactivate Niobe's ship, the Logos. They interrogate Bane, who says that he has no recollection of the earlier massacre. As the captains plan their defense of Zion, Neo requests a ship to travel to the Machine City. Motivated by her encounter with the Oracle,[c] Niobe offers him the Logos. Neo departs, accompanied by Trinity. Bane, who has stowed away on the Logos, takes Trinity hostage. Neo realizes Smith has assimilated Bane, and a fight ensues. Bane burns Neo's eyes with a power cable, blinding him. Neo discovers he can still "see" machine source code in the real world and uses this ability to kill Bane. Trinity pilots them to the Machine City.

Niobe and Morpheus rush toward Zion in the Mjolnir to aid the human defenses. Zion's shipyard is overwhelmed by a horde of Sentinels. The fatally wounded Captain Mifune instructs Kid to open the gate for the Mjolnir, which he does with the aid of Zee. When it arrives, it discharges its EMP, disabling all the Sentinels present but also Zion's remaining defenses. The humans are forced to retreat and wait for the next attack, thinking it will be their last stand.

The Logos is besieged by machines guarding Machine City. Neo shuts several of them down[d] but passes out from exhaustion. To avoid their attackers, Trinity flies above them, briefly glimpsing the open sky before crashing into a building. Fatally wounded by debris, Trinity declares her love for Neo before dying. Neo enters the Machine City and encounters the leadership of the machines in the form of the "Deus Ex Machina." Neo warns that Smith threatens both the machine and human worlds. He offers to stop Smith in exchange for peace with Zion. The Deus Ex Machina agrees, and the Sentinels shut down, stopping the attack on Zion.

The machines plug Neo into the Matrix, whose population has now been entirely assimilated by Smith. The Smith with the Oracle's powers steps forth, telling Neo he has foreseen his own victory. After a protracted fight, Smith says "everything that has a beginning has an end," repeating what the Oracle said to Neo. Neo appears to concede defeat and allows himself to be assimilated. Outside the Matrix, the machines send a surge of energy into Neo's body, which inside the Matrix causes the Neo-Smith clone, then all the other Smith clones, to be destroyed, killing Neo while restoring the Oracle and everyone else who was assimilated. The Sentinels withdraw from Zion, Morpheus and Niobe embrace, and the city rejoices. The machines carry Neo's body away.

The Matrix is rebooted, and the Architect meets the Oracle in a park, scolding her for having "played a dangerous game." They agree that the peace will last "as long as it can" and that those who desire to leave the Matrix will be allowed their freedom. The Oracle tells Sati that she thinks they will see Neo again. Seraph asks the Oracle if she knew this would happen. She replies that she did not know, but she believed.

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Matrix_Revolutions


ムジョルニアがネブカドネザルの乗組員を救った後、[b]ネオとベイン は依然としてムジョルニアの医療室で意識不明のままだった。ネオの意識は、マトリックスと機械世界の間の移行領域であるモビル・アベニューという名の地下 鉄駅に閉じ込められていた。そこで彼は、サティという名の少女を含むプログラムの「家族」と出会う。父親」は、メロビンジアンに忠誠を誓うプログラム、ト レインマンが地下鉄を支配しているとネオに告げる。ネオが家族とともに列車に乗ろうとすると、トレインマンはそれを拒否し、ネオを圧倒する。

セラフは、予言者に代わってモーフィアスとトリニティに連絡し、予言者はネオの監禁について彼らに知らせる。セラフ、モーフィアス、トリニティはクラブ・ ヘルに入り、そこでメロビンジアンと対峙し、ネオを解放するよう彼を強制する。マシンシティのビジョンに悩まされていたネオは予言者を訪ね、予言者はスミ スがマトリックスと現実世界を破壊しようとしていることを明かす。彼女は「始まりがあれば終わりもある」と告げた。ネオが去った後、多数のスミスがサティ とセラフを同化させる。予言者は同化に抵抗せず、スミスは予知能力を得る。

現実世界では、ネブカドネザル号とマイティ・ソー号の乗組員がニオベの船、ロゴス号を見つけ出し、再起動させる。彼らはベインを尋問するが、ベインは先の 虐殺についてまったく記憶がないと主張する。船長たちがザイオンの防衛計画を練る中、ネオはマシンシティへ行く船を要求する。予言者との出会いに動機づけ られたニオベは、ロゴス号を彼に提供する。ネオはトリニティと共に旅立つ。ロゴスに潜んでいたベインがトリニティを人質にとる。ネオはスミスがベインを同 化したことに気づき、戦いが始まる。ベインは電源ケーブルでネオの目を焼き、彼を失明させる。ネオは現実世界でマシンのソースコードを「見る」ことができ ることに気づき、この能力を使ってベインを殺す。トリニティが彼らをマシンシティに導く。

ナイオビとモーフィアスは、人間側の防衛を支援するために、ムジョルニアでザイオンに向かって急ぐ。 ザイオンの造船所はセンチネルの大群に圧倒されている。 致命傷を負ったキャプテン・ミフネはキッドにムジョルニアのためのゲートを開くよう指示し、キッドはゼーの助けを借りてそれを実行する。 ムジョルニアが到着すると、電磁パルスを放出し、センチネルをすべて無力化するが、ザイオンに残っていた防衛設備も無効化してしまう。人間たちは撤退を余 儀なくされ、最後の抵抗になるだろうと考えながら次の攻撃を待つ。

ロゴスはマシンシティを守る機械たちに包囲される。ネオはいくつかの機械を停止させるが[d]、疲れ果てて気を失う。攻撃を避けるため、トリニティは機械 たちの上空を飛び、ビルに衝突する前に一瞬だけ空を見上げる。破片で致命傷を負ったトリニティは、息を引き取る前にネオへの愛を告げる。ネオはマシンシ ティに入り、「デウス・エクス・マキナ」の姿をした機械の指導者たちと対峙する。ネオは、スミスが機械と人間の両方の世界を脅かしていると警告する。そし て、ザイオンの平和と引き換えにスミスを止めることを申し出る。デウス・エクス・マキナはこれに同意し、センチネルは活動を停止し、ザイオンへの攻撃を止 める。

マシンはネオをマトリックスに接続し、その人口は今や完全にスミスに同化されていた。予言者の力を持つスミスが現れ、ネオに自分の勝利を予見していたと告 げる。長引く戦いの後、スミスは「始まりがあるものには終わりがある」と言い、予言者がネオに言ったことを繰り返す。ネオは敗北を認め、同化されることを 受け入れる。マトリックスの外では、機械がネオの体内にエネルギーを送り込み、マトリックス内ではネオ・スミス・クローン、そして他のすべてのスミス・ク ローンが破壊され、ネオは死亡するが、予言者とアバター化されていた人々は復活する。センチネルはザイオンから撤退し、モーフィアスとナイオビは抱擁し、 街は歓喜に包まれる。機械はネオの遺体を運び去る。

マトリックスが再起動し、建築家が予言者を公園で呼び出して「危険なゲームをした」と叱責する。彼らは「可能な限り」平和が続くこと、そしてマトリックス を去りたいと望む者は自由が許されることに同意する。予言者はサティに、彼らは再びネオに会うだろうと告げる。セラフは予言者に、このようなことが起こる ことを知っていたのかと尋ねる。予言者は知らなかったが、信じていたと答える。


■ハリウッド映画におけるオントロジー

単純なオントロジー(存在論)とエピステモロジー (認識論)の図式で理解可能である。例えばハリウッド映画の『ブレードランナー』は1つ、『マ トリクス』は2つ、世界がある。

5.3 マトリクス・オントロジー

アマゾン先住民のパースペクティヴィズムにおける多自然主義とは、複数の動物種からなる世界がそれぞれ独自の価値観をもって存在するということであっ た。この発想を先に紹介した映画『マトリクス』に適用してみるとどうなるであろうか。

アマゾン先住民の世界は、人間が動物を眺めてそれ を狩猟してたんぱく質資源として利用しているように、動物(例:ジャガー)もまた人間を対象化する時に 対称化した世界の住民であり、人間を食べたり相互作用をもつ独自の存在である。

他方、マトリクスの世界では、人間の対応物はネッ トワークに住まうコンピュータソフトウェアでありそれらは人格化されている。またコンピュータソフト ウェアはソースを媒介とするメインフレームコンピュータを必要とするために、ちょうど人間とコンピュータが接続するために脳=機械インターフェイス (Brain-Machine Interface, BMI)を媒介としてようやくシームレスな存在になるように、コンピュータもまたソフトマシーン(プログラム)とハードマシン(メインフレーム)は結びつ いている。

マトリクスが映像の消費者に見せる世界構造は多少 複雑であり、そのことを理解するためには、人間が現実(ほんもの)だと思っている仮想現実と、本当の真 の現実がある。ちょうどティム・インゴルド(Ingold 1991,1996)が自然を「真の自然」と「文化的に構成された自然」と区分したように「世界の有り様」を2つに区分することが重要で、パースペクティ ヴィズムの観点から「現実の真の世界」の相対化の手続きが必要になる。

すなわち人間はマトリクスがつくった仮想現実の中 で作動させられているコンピュータプログラムに他ならず、マトリクス世界では、エージェントという本物 のプログラムが存在し、それらはまさに人間の姿の衣装を着ている存在に過ぎない。これが人間がほんものだとおもっている仮想世界すなわち「マトリクスに よって構成された世界」がある。「ネオ」すなわちサラリーマンのアンダーソンは本物だと思っていた世界のなかでのアンダーグラウンドのハッキングの天才と の呼ばれていたところに、「真の人間が住む世界」からやってきたモーフィアスやトリニティとの遭遇により「真の人間が住む世界」に引き戻される。「真の人 間が住む世界」では人間は機械=コンピュータプログラムによってネットワーク化されているので、身体のなかにさまざまな情報コンセントをもつことで可視化 されている。しかしながら「真の人間が住む世界」とは、マトリクスの支配から逃れ、ザイオンという地下世界に残された最後の抵抗拠点から、覚醒した遊撃戦 の戦士をジャックインすることで、マトリクス内に進入し、敵の背後から攪乱戦を挑んでいるのが現状なのである。

モーフィアスはマトリクス世界のアンダーソン(ネ オ)は救世主であることを信じ、彼を「真の人間が住む世界」に引き戻し、マトリクス世界での最終的な戦 闘行為に付かせようとし、またネオ自身もそのことへの自覚をしてゆく物語である。

しかしこのような描写はマトリクスの2つの世界現 実(worlds realities)からみると人間中心主義の見方にすぎない。もちろんマトリクス側(あるいはそこで世界を動かすエージェントたち)からみれば、現実に 覚醒して不要な遊撃戦を挑む「正規のマトリクスネットワーク」に接続されていないスタンドアローンの人間の遊撃戦兵士ならびにザイオンの人間はゆゆしき問 題であり、それゆえにマトリクス世界はセンチネルと削岩マシーンをザイオン世界に送りこんでスタンドアローンの人間の殲滅戦を挑む。つまり両者の間には戦 争状態が存在する。

覚醒した人間たちからみればマトリクス世界のコン ピュータプログラムは人間の存在を脅かす存在であるが、逆の立場からみると、覚醒した人間たちはマトリ クス世界の安寧を脅かす存在すなわち反逆するパラサイトあるいはコンピュータウィルスのような存在である。それらがマトリクス世界では一見人畜無害にみえ る予言者オラクルらの助言にもとづいて不穏な動きをする。つまり、マトリクスという機械=プログラムの世界からみれば、抵抗する人間はマトリクス世界の秩 序を乱すだけではなく、その秩序そのものを転覆しようとする危険な存在なのである。

マトリクス世界からみるとその防御プログラム—— 生体であるなら免疫のような存在——であるエージェント・スミスは、ネオやモーフィアスを追求するのみ ならず「マトリクス世界の秘密」を知る予言者オラクルなどを捜索取り調べをするうちに、システムの中で防御プログラムを適正に作動する存在から次第にオー トマトン的な暴走をしはじめる。

マトリクスの映画自体は、暴走したスミスをネオが 最終的に破壊することで、最終的に機械が人間を必要としなくなり、すなわちザイオンの人間を殲滅する必 要がなくなり、マトリクスそのものがヴァージョンアップを遂げることで、急展開をとげて——文字通りデウス・エクス・マシーナの登場により——物語は終焉 してしまう。つまりマトリクスの基本的モチーフである人間と機械(コンピュータプログラム)が相互にいがみ合い共存できず、お互いの片方が消滅するまで闘 う一種のマニ教的世界観に支えれていたので、その必要がなくなる時、和平が到来するという唐突な終わり方をする。

パースペクティヴィズムからみたマトリクスが私た ちに与える第1の世界観は、人間にとって機械(コンピュータプログラム)はそれが融合する時に機械は人 間にとっての飼い慣らされ人間に有益性をもたらすものでなければならないというものである。他方、コンピュータプログラムはからみる第2の世界観では、人 間がマトリクスのシステムを維持永続させるために奉仕をつづける限り人間は機械にとって良い存在であるが、人間が自律性をもち人間中心主義を主張するとそ れはシステム全体にとっては脅威になることを意味する。つまり後者の世界観では、マトリクスの存在を自覚し、またシステム全体の根本的変革を野望する者 ——「人間の救世主」と呼ばれる——ものは、システムにとって病気あるいはシステムに巣くい、かつシステムを利用しシステム全体を崩壊に至らしめるウイル スにほかならない

このように考えることはヴィヴェイロ・デ・カスト ロのパースペクティヴィズムに対する紋切り型の反論にあるように、それはただ単に認識論の相違——つま りこちら側とあちら側からみれば善悪の基準が逆転している——のみを示唆し、存在論的な批判を持ち得ていないようにも覚える。

しかし、先に述べたように第1の存在論と第2の存 在論は根本的に対立をなし、それぞれ人間と機械のエージェントが相互に浸透し、マニ教的世界観のもとで 両者は殲滅するまで侵入と攻撃を繰り返すための「生存競争(struggle for existance)」が永続するという点では、まさに生と死をかけた存在をめぐる闘いが繰り広げられており、認識の違いを理解するだけでは、和平などを 導くことは論理的に不可能な世界にほかならない。

マトリクス三部作の分析を通して私は、パースペク ティヴィズムの観点を取れば機械=人間システム(Machine-Man System)の宿主である機械(コンピュータプログラム)にとって人間がそのシステムそのものへの脅威となるウイルスになるという視座であり存在の様式 をとることになる可能性について気づいた。たしかに機械のシステムに比べれば、人間は誤りを犯しやすく、また意志という余計なもの、つまり機械からみれば 「無用のノイズ」をもつことになり、それが宿主にとってダメージをもたらさないものあればまだしも、システムの致命傷になるように「進化」すれば非常に厄 介である。このシステム(機械)がもつ恐怖心——思考実験であるが未来の機械は恐怖をももつように「進化している」かもしれない——は、今日の人間どもが 経験している豚インフルエンザウィルスH1N1が「現在のところ弱毒化」のままだが、DNA/RNA——このウイルスは一本鎖RNAなので逆転写酵素を用 いて宿主(動物)の中でDNAを複製し、かつ増殖するプロセスの中で変異して強毒化する「可能性」をもつ——が突然変異を及ぼして、高病原性鳥インフルエ ンザ(H5N1亜型ウイルスはそのひとつ)のような高い致死率をもたらすかもしれないという影響力のある疫学者およびウィルス学者の発言と政策決定により パニックのにより、「こちらの世界」ではすでに経験済みのことである。つまりアマゾンの先住民のみならず、西洋近代社会のなかにもパースペクティヴィズム が生起している可能性はあるということだ。

にもかかわらず、マトリクスにおいても、豚インフ ルエンザの社会的パニックにおいても、このマニ教的世界観が支配しているが、なぜ西洋近代社会のなかの パースペクティヴィズムは、このような恐怖のシステム——タウシグの言葉を借用すれば"Nervous System"(神経系の意味だが「いらいらや不安を生起させるシステム」とも受け取れる)——しか見えてこないのだろうか? そしてそれ以外の可能性は ないのだろうか? これらのことを検討するためには人間と人間にとって「融合」したり「寄生」しているものについての洞察が必要である。

★パースペクティヴィズム

 図之拾は、ビベイロ・デ・カストロ(1998)による西洋の形而上学とアメリカ先住民の パースペクティズムの位置づけを、アルジダス・グレマスの意味 の四角形を使って整理し表現したものです。ここでは西洋近代の理性概念もアメリカ先住民のアニミズムも思考様式としては形而上学的な観念論の相対 性に位置 づけられます。それらは多文化主義(multiculturalsm)つまり、それぞれの文化に対応する認識論として理解することができます。ビベイロ・ デ・カストロは、そのような認識論を根拠づけている確固とした複数の自然界があると主張して、それをマルチナチュラリズム (mutinaturalism)と呼びます(→出典「「自然」と「文化」の境界面」)。

図之拾壱をご覧ください。ディスコラやビベイロ・デ・カストロがつかう「存在論 (ontology)」は、しばしば、先住民がもつ環境に関する認識論すな わち〈文化〉にすぎないのではないかという批判があげられます。しかしながら、社会の存在様式とは、その人たちが住まう自然環境とそれについての理念的思 考すなわち形而上学(メタフィジカ)とのセット、あるいはハイブリッドとして理解することができれば、それは認識論と相互補完関係をなす自然環境そのもの すなわち人間と動物の存在論的根拠になりえると言うことはできないでしょうか(→出典「「自然」と「文化」の境界面」)。


【用語解説】

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Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

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Ongpatonga, Chief of the Omawhaws - S.G. Morton, Crania americana, 1839

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