美作のジレンマ
みまさかのじれんま
解説:池田光穂
美作のジレンマ :みまさかのじれんま
2011年12月16日 第1回クマサミット(美作市文化センター)参加報告
■ レポート
「クマサミット」と僭称するからと言って、人間様に迷惑をかけている/かけられている日本の熊(本土のツキノワグマと北海道のヒグマ)が 集まって会議をするわけではない。
クマ対策では顕著な成績をあげていない岡山県の美作市という実質的にほとんど知名度のない自治体が、クマの害獣対策をどうするのかを、同 様の苦悩を抱える全国の(限界集落を多く抱える)自治体の職員に参加を呼びかけて開催したものであった。また、サミットの結論は、クマとの共生というス ローガンを掲げているものの、実際の会議の進行では、都市から来た保護派の人たちの発言を抑制するなど、害獣として里に降りてきたクマの「殺処分」の権限 をめぐる議論がその伏線にあった(でなければ、サミットが全国の自治体[の職員]に呼びかけられた主催者の「意図」が読み取れない)。そして、参加した保 護派と、壇上に上った駆除ないしは制御派および行政の議論は最終的に平行線に終わった。サミットの後の 2011年12月22日に津山市で開催された、岡山県のツキノワグマ・ニホンジカ・イノシシの保護管理計画(2012年〜16年度の5カ年)についての公 聴会で、県は殺処分の権限をこれまでの県から各市町村の自治体に委譲すべきだと考えていることを明らかにしているが、それに対して参加者——首長、猟友 会、地元代表などこの問題に関するステイクホルダーたち——は「殺処分は県がすべき」(津山朝日新聞の12月24日の見出し)と反発している。
これらの議論の中で中心的な課題は、じつはクマとの共存なのではなくて、むしろ(2000年以降の保護優先の政策——UNEPという世界 的なトレンドを受けた環境省の生物多様性保全政策が基調になる——に疑問符を付し)クマを誰が生殺与奪の権利を有するのかという〈野生動物への統治〉をめ ぐる問題なのである。
クマサミット会議の冒頭には、夥しい数の議員(参議院議員、県議、各市の市議)が参加し、政治パーティ同様、さらにランクの高い閣僚経験 者の祝電の披露を初めとして、ショートスピーチが延々を繰り広げられた。その中の1人で美作を票田とするある県議は、美作には「地獄と天国が同時に来た」 と述べた。地獄とは2010年秋のツキノワグマの全国的な大量出没のことであり、天国とは美作市をベースとして事前キャンプをおこなった女子サッカーのナ ショナルチーム「なでしこJAPAN」の2011年の女子ワールドカップ優勝のことを指している。クマの出没は、これといって知名度がない同市における、 大きな負の遺産と化して、住民たちの意識の中に芽生えつつあるのだ。
■ 報道資料
ここに添付した資料は、2012年12月16日に開催された第1回クマサミットの各社の報道記事と同年12月22日での岡山県の野生動物の 保護管理計画(2012年〜16年度)への地元公聴会の新聞記事集成である。資料をまとめたのは美作市・企画振興部・協働企画課である。
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リンク
関連リンク
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クマ類出没対応マニュアル(環境省自然環境局)
www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/.../manual_yoyaku.pdf
ツキノワグマ対策マニュアル(富山県ツキノワグマ保護管理計画)
www.pref.toyama.jp/cms_sec/1709/00009216/00334401.pdf
被害状況と痕跡・被害対策・ツキノワグマの生活史と出没の関係(兵庫県森林動物研究センター)
www.wmi-hyogo.jp/higaitaisaku/bear_in09.pdf
人里に出没するクマ対策の普及啓発および地域支援事業(日本クマネットワーク)
http://www.erca.go.jp/jfge/subsidy/organization/act_repo/report22/039.html
環境省へツキノワグマの保護管理対策を求めて要望(野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク)
http://www.alive-net.net/wildlife/domestic/bear/kuma041021.html
クマ対策(ツキノワグマ)(ガイドの眼)
http://guide-eye.jp/hotaka.kuma.htm
山でクマに出会わない・襲われないためのアドバイス
http://outback.cup.com/bear_attack.html
講演会「ツキノワグマの生態と被害防止対策について」(グッドぐんま)
http://ginhikari.cocolog-nifty.com/yamame/2006/11/post_ac7b.html
現状を科学的に把握し、24時間体制で防除する(ピッキオのツキノワグマ対策)
http://npo.picchio.jp/management/02.html
「ツキノワグマの大量出没の要因と対策を考える」シンポジウム(ツイッターのつぶやきのとりまとめ)
http://togetter.com/li/106355
ツキノワグマ対策について(兵庫県たつの市産業部農林水産課林務水産係)
http://www.city.tatsuno.lg.jp/nourinsuisan/kuma.html
ツキノワグマ保護管理計画(鳥取県公園自然課)
http://www.pref.tottori.lg.jp/97234.htm
ツキノワグマによる被害を防ぐために(山口県)
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a15600/kumahigaibousi/kumahigaibousi.html
ツキノワグマについて(上越市環境情報センター)
http://www.eco.joetsu.niigata.jp/column/04.html
クマ出没(Yahoo ニュースの取りまとめページ)
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/bear/
ツキノワグマ保護対策についてのアンケート(トラフィックイーストアジアジャパン)
http://www.trafficj.org/kuma/kumaquestion.htm
尾瀬のツキノワグマ保護管理活動(財団法人・尾瀬保護財団)
http://www.oze-fnd.or.jp/main/banner/kuma/kuma1.html
自治体のクマ対策 基本のキホンと現状(ならなしとり)
http://blog.goo.ne.jp/micropterusandsalmo/e/26e82d81002dba5210d0a5fafe09326a
視点・論点 「山からクマが下りてくる!」2012年01月25日 (水) 森林総合研究所 鳥獣生態研究室長 大井徹
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/107362.html#more
※このページは、日本学術振興会・科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)「生物多様性概 念の社会化の研究:現代生態学者の科学人類学」(2010年度〜2011年度)(研究代表者:池田光穂)の研究成果になるものです。関係者の各位 に感謝いたします。 ※くま×3
このイラストは、Maria Sibylla Merian, German naturalist and scientific, 1647-1717 の Metamorphosis insectorum Surinamensium. 1705 からのものです。 (画面をクリックすると単独で拡大します)
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