On George J. Borjas' "We Wanted Workers: Unraveling the Immigrant
Narrative," 2016
章立て(10章構成)(数字)は翻訳書のページ数である。
ジョージ[ホルヘ・ヘスス]・ボルハス(George Jesus Borjas, 1950- )は、1950年キューバ生まれの米国人経済学者である。コロンビア大学で博士号を取得後、1995年からハー バード・ケネディ・スクールの教授である。新自由主義の経済学者で、トランプ政権のキャンペーンの移民政策でのアドバイザーを務めた経験もある。高技能労 働者の移民政策の推進派ともいえるが、結局、それを契機に低技能労働者を引き込んでしまい、移民による経済浮揚はうまく行かず、(従来)労働者の労働賃金 の向上には役立たないので、米国に移民は不要という立場である。ボルハス自身は、私が紹介したような「労働移民排斥論者」ではないと言うが、その主張は、 第10章などを読めば、容易に伺い知ることができる。ただし、闇雲な移民排斥論者ではないが、マイルドな「移民経済浮揚論への反対論者」であることは確実 である。
移 民を「財の移動」とみる見方:これは、倫理的には問題があるかもしれないが、経済的にはクールな分析である(7)。ただし、ボルハスは本書の随所で、それ とは矛盾するかもしれないが「移動するのは生身の人間」であるということも、(自身の経験もふくめて)言う。後 者のテーゼは、スイスの戯曲家であり作家のマックス・フリッシュの「我々の欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった」(9)で、本書で繰り返 し表現される(本書のタイトルでもある)。結 局、この矛盾するテーゼを使い、いわゆる(米国への)移民推進派の人たちは、労働者を「財の移動」として計算をして、内的な景気の浮揚を喧伝するが、「彼 らは生身の人間」であるがゆえに、彼ら(移民)の経済的状況は上向きになるが(それも初期の高技能移民であり、後からやってくる低技能移民には、その所得 の向上にはほとんど寄与しない)、結果的に、得るところが少なく、社会保障費を移民が享受することから、景気の浮揚はないと結論づける(第9章を中心 に)。それ以外に、データの取り方や表現方法で、移民政策に有利にも不利にも描けるという点も指摘して、「冷静な」分析をするべきだと、警鐘をならす。共 和党の移民抑制派には、歓迎される論調になる。
し
たがって、「生身の人間」の移動の権利を尊重する、移民の推進派は、そのような主張を正当化するために、ボルハス——実証主義的な姿勢を崩さない——彼の
主張を、「単にイデオロギーの違いだ!」以上の説得的な論点で論破できるのか、大きな試金石になるだろう。(以下のYouTubeでの質疑応答を参照)
+++
George Borjas - " We Wanted Workers: Unraveling the Immigration Narrative"(40分)音が割れて聞き取りにくいところがありますが、スライドが示されて分かりやすく提示されています
**
+++
1. 序論(ページ数)
2. ジョン・レノンが歌った理想郷
3. 米国における移民の歴史
4. 移民の自己選択
5. 経済的同化
6. 人種のるつぼ
7. 労働市場への影響
8. 経済的利益
9. 財政への影響
ミルトン・フリードマン(下記のYouTube)参照「不法移民は不法な立場であるがゆえに、よい存在である」(その心は社会保障の費用を消費しないから だ、というレトリック)——リベラル派には血も凍る主張ではある。(179)
10. いったい誰の肩をもつの?
11.文献等
【設問】
1.
2.
リンク
文献
Mitzub'ixi Quq Chi'j
ミルトン・フリードマン:「不法移民は不法な立場であるがゆえに、よい存在である」(その心は社会保障の費用を消費しないから
だ、というレトリック)——リベラル派には血も凍る主張ではある。
Copyright Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2018
Do not paste, but [Re]Think our message for all undergraduate students!!!