はじめによんでください

私 にとっての、倫理の書

On the Book that provocates me to imagine my own moral and ethics

池田光穂

僕にとっての倫理の書について……

可児弘明(かに・ひろあき)『近代中国の苦力と「豬花」』岩波書店、1979年、の本を思いだす。香港の公文書館にある、域外に出る男性肉体労 働者クリーと、売春婦や妾である「豬花(ちょうか、チュー・ファー)」に関する文書の分析だが、そこから見えてくる、彼らの送出と受け入れの実態、出先で の労苦などを、歴史的文書の中から読み解こうとするものだったと記憶する。非常に分かり難い本で、また、行政文書には、「独自の読解」技法が必要なので、 キチンと読めた記憶がないが、当時、理学部から医学研究科を渡り歩いた僕にとってはまさに「倫理の書」であったことには変わりない。そして、その思いは今 も変わらない。

だから、僕が初めて編集した移民の本(→『コンフリクトと移民:新しい研究の射程』)には、絶 対にこの本をどこかに引用あるいは記載するんだという当時、強い責務のようなものを感じたような気がする。

横田祥子と原めぐみ(2017)の下記の文書に出会って、可児の本がそのようなものとして、私の移民研究の中に実は深く影を落としていること を、再自覚した次第である。

現在は、私が研究している、EPAにもとづく日本への看護ならびに介護現場での補助労働力に期待されている「彼女たち」だが、移民労働史のジェ ンダー的ルーツを考えると、(一見何の関係もないようにみえる)このような系譜にも実は繋がりをもつことがわかる。横田と原(2017:157)の以下の ような論文のまとめは、些か性急で、過度の一般化に陥り易い欠点をもつように僕には思えるが、非常に示唆に富む。

そして、国家による移民政策との複雑な関係、とりわけジェンダー・ポリティクスについて、深く考えざるをえない。その意味でも、横田と原の論文 もまた、私にとっての、「倫理の論考」になりつつあるのである。

もちろん、山崎朋子『サンダカン八番娼館」底辺女性史 序説』筑摩書房、1972年のほうは、歴史の生き証人(サキさん)の住まいまで押しかけ て、貴重な聞き書きと歴史的再現を試みたすばらしい著作である——民族誌家はこの本 を読んで切歯扼腕すべきだと僕は思う。

Elsje Christiaen (1646-1664) at age 21

"This was the first woman executed in 21 years, and Rembrandt did not mean to miss his opportunity to sketch it. On May 3, presumably the same day as Elsje Christiaen’s execution, he hired a boat to row him out to the Volewijck moor where the body had been hung up. That day the master sketched the immigrant girl’s freshly-executed corpse, and its shameful axe." - http://www.executedtoday.com/tag/amsterdam/

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