はじめによんでください 

フェミニズム

The First Supper 1988 acrylic on panel, 120 x 240 cm by Susan Dorothea White

解説:池田光穂

フェミニズムは、性差別主義的な抑圧をなくすための闘いである—— bell hooks.

フェミニズムを理想化された学問のように考えてはいけません。自分自身のジェンダリズムを解体する作戦指令書あるいは敵の状況が不案内な時の危機管理マニュアルのように理解しないとなりません——垂水源之猫(2021)

フェミニズムとは、いわゆる民主主義的な近代社会に おいて、法の理念や人権概念において、男女の平等が達成されていないという現状認識から出発し、女性に とっての、政治的、法的、権利的、経済的、アイデンティティ的、文化的、心理的などの視座を包含する社会運動と、そのイデオロギーからなり、基本的に、政 治運動の形態をもつものの総称である。女性にとっての「政治的、法的、権利的……心理的などの視座」が、民主主義的な近代社会において多様・多元的である ために、フェミニズムそのものも多様な姿をもつ。それぞれの運動の方向性や思想には、統一的方向性や最終目標(テロス)を定めることは難しいが、現況にお いて「男女の平等が達成されていないという現状認識から出発」し、そのための平等の是正は、普遍的に正しいという立場が崩れることはない。

さて、かつて私はフェミニズムを次のように定義して いる:「フェミニズム(feminism)とは、 ジェンダーならびにセックスの区分において《女性》——フェミナ(fēmin-a)的 存在——に対する差別や抑圧を告発し、その人間的権利において自由と平等を求めるための理論と実践の総体のことをさす」(→「はじめてのフェミニズム」)

いずれにせよ「女性」という政治的分類概念・文化的 社会的概念・生物学概念が問題となる。政治的分類概念(ideological classifiction)としての女性は、既存の(ということは保守的な)文化的社会的分類概念(gendered classification)ならびに生物学的分類概念(sexual classification)にもとづいて、女性の社会的身分とその範囲を確定する。それゆえ、女性の概念は、最終的に生物学的な本質性にもとづいて 「男性」と対比的に配列される。

爾来、女性は、生物学的な性別のみで峻別されるもの だといういうふうに理解されてきた。それゆえ、両性具有あるいは「ふたなり」と呼ばれる生物学的な特質をもつ個体はアノマリー(性的異常)として、女性/ 男性というカテゴリーには属さないものとみなされてきた。さて、男性中心的な社会において、女性を男性に比肩できる法的社会的に同等な資格を持たないもの と当初規定してきた西洋近代社会は、女性の劣等性を生物学や医学に仮託してそれを正当化してきた。しかしながら、男女の法的平等性の達成が近代社会の成立 にとって喫緊の課題となり、法的権利(参政権、労働権、親権など)において平等化の思想が普及していくと、女性と男性の種別的差異に生得的なものは存在し ないことが明らかになり、それを支持する生物学・生物医学理論がヘゲモニーを握るようになる。そのような仮定で、男性と女性の生物学的な差異を担保しなが らも、社会的な性別はそれとは独立した区別であるという立場が登場してくる。それが社会文化的な男女の区別であるところのジェンダー概念の登場である。

それ以来、生物学的な性別(sex)と社会的文化的 性別(gender)という形で峻別されてきた。しかしながら、いつしかこの二分法は、生物学的にも文化社会的にも性別の分割は可能であるという無批判な イデオロギーを生んでしまった。また、ジュディス・バトラー[1990=1999]のように、ジェンダーとセックスの峻別は、本来は生物学的定義を社会文 化的概念で相対化しようとするために登場してきたのにかかわらず、最終的に生物学的女性は本質的であるというイデオロギーを温存させてきたことに貢献した という批判が登場する。しかしながら、このような二分法をあざ笑うかのような、異性装(ドラアグ)やゲイ/レスビアン、ホルモン化による性的志向の改変さ らには性転換などの「性別」のパロディの存在がある。これらの現象は、社会の隙間にある、道化や撹乱的存在であると同時に、ジェンダーもセックスも社会的 な構築物であり、すべては相対的決められ、それを男女というカテゴリーに分類しているにすぎないことを、皮肉という表現を通して批判的に体現しているので ある(→「ジェンダー・とらぶってる!!!」)。

フェミニズム運動の担い手であるフェミニストの多く が、そのような「性的マイノリティたち」に対して同情的・共感的・連帯的であるのは、ともに男性中心主義が押しつけてくる権力構造のなかでは、ともに政治 権力的マイノリティとして、中心的な権力構造から排除されてきたゆえの、類的集団意識=アイデンティティから生じるものだと考えられる。

★ウィキペディア英語(冒頭のフェミニズム)解説

Feminism is a range of socio-political movements and ideologies that aim to define and establish the political, economic, personal, and social equality of the sexes.[a][2][3][4][5] Feminism holds the position that societies prioritize the male point of view and that women are treated unjustly in these societies.[6] Efforts to change this include fighting against gender stereotypes and improving educational, professional, and interpersonal opportunities and outcomes for women.

Originating in late 18th-century Europe, feminist movements have campaigned and continue to campaign for women's rights, including the right to vote, run for public office, work, earn equal pay, own property, receive education, enter into contracts, have equal rights within marriage, and maternity leave. Feminists have also worked to ensure access to contraception, legal abortions, and social integration; and to protect women and girls from sexual assault, sexual harassment, and domestic violence.[7] Changes in female dress standards and acceptable physical activities for females have also been part of feminist movements.[8]

Many scholars consider feminist campaigns to be a main force behind major historical societal changes for women's rights, particularly in the West, where they are near-universally credited with achieving women's suffrage, gender-neutral language, reproductive rights for women (including access to contraceptives and abortion), and the right to enter into contracts and own property.[9] Although feminist advocacy is, and has been, mainly focused on women's rights, some argue for the inclusion of men's liberation within its aims, because they believe that men are also harmed by traditional gender roles.[10] Feminist theory, which emerged from feminist movements, aims to understand the nature of gender inequality by examining women's social roles and lived experiences. Feminist theorists have developed theories in a variety of disciplines in order to respond to issues concerning gender.[11][12]

Numerous feminist movements and ideologies have developed over the years, representing different viewpoints and political aims. Traditionally, since the 19th century, first-wave liberal feminism, which sought political and legal equality through reforms within a liberal democratic framework, was contrasted with labour-based proletarian women's movements that over time developed into socialist and Marxist feminism based on class struggle theory.[13] Since the 1960s, both of these traditions are also contrasted with the radical feminism that arose from the radical wing of second-wave feminism and that calls for a radical reordering of society to eliminate patriarchy. Liberal, socialist, and radical feminism are sometimes referred to as the "Big Three" schools of feminist thought.[14]

Since the late 20th century, many newer forms of feminism have emerged. Some forms, such as white feminism and gender-critical feminism, have been criticized as taking into account only white, middle class, college-educated, heterosexual, or cisgender perspectives. These criticisms have led to the creation of ethnically specific or multicultural forms of feminism, such as black feminism and intersectional feminism.[15] Some have argued that feminism often promotes misandry and the elevation of women's interests above men's, and criticize radical feminist positions as harmful to both men and women.[16]
フェミニズムとは、両性の政治的、経済的、個人的、社会的平等を定義し、確立することを目的とする様々な社会政治運動やイデオロギーのことである[a] [2][3][4][5]。フェミニズムは、社会は男性の視点を優先し、女性はこれらの社会で不当に扱われているという立場をとっている[6]。これを変 えるための努力には、ジェンダー・ステレオタイプと闘い、女性の教育的、職業的、対人的な機会や成果を改善することが含まれる。

18世紀後半のヨーロッパに端を発したフェミニスト運動は、投票権、公職への立候補権、就労権、同一賃金、財産所有権、教育を受ける権利、契約締結権、婚 姻内における平等な権利、出産休暇など、女性の権利を求めて運動してきたし、現在も運動を続けている。フェミニストはまた、避妊、合法的な中絶、社会的統 合へのアクセスを確保し、性的暴行、セクシャルハラスメント、家庭内暴力から女性と女児を守るために活動してきた[7]。

多くの学者は、フェミニスト運動が女性の権利のための歴史的な大きな社会的変化の主要な力であると考えており、特に欧米では、女性の参政権、ジェンダーに 中立的な言語、女性のリプロダクティブ・ライツ(避妊具や中絶へのアクセスを含む)、契約を締結し財産を所有する権利などを達成したとほぼ普遍的に評価さ れている。 [フェミニストの擁護は主に女性の権利に焦点を当てたものであり、これまでもそうであったが、男性もまた伝統的な性別役割分担によって傷つけられていると 考えることから、その目的の中に男性の解放を含めることを主張する者もいる[10]。フェミニストの理論家はジェンダーに関する問題に対応するために様々 な分野で理論を発展させてきた[11][12]。

数多くのフェミニスト運動やイデオロギーが長年にわたって発展し、異なる視点や政治的目的を表してきた。伝統的に19世紀以降、第一波のリベラルフェミニ ズムは、自由民主主義の枠組みの中での改革を通じて政治的・法的平等を求めるものであり、労働に基づくプロレタリア女性運動と対照的であった。リベラル フェミニズム、社会主義フェミニズム、ラディカルフェミニズムはフェミニズム思想の「ビッグスリー」と呼ばれることもある[14]。

20世紀後半以降、多くの新しい形態のフェミニズムが出現した。ホワイト・フェミニズムやジェンダー批判的フェミニズムのようないくつかの形態は、白人、 中産階級、大卒、異性愛者、シスジェンダーの視点しか考慮していないとして批判されてきた。これらの批判は、ブラック・フェミニズムやインターセクショ ン・フェミニズムのような、民族的に特化した、あるいは多文化的なフェミニズムの形態を生み出すことにつながった[15]。フェミニズムはしばしばミサン ドリーを促進し、男性よりも女性の利益を高めると主張する者もおり、急進的なフェミニズムの立場は男女双方にとって有害であると批判している[16]。
https://en.wikipedia.org/wiki/Feminism
https://www.deepl.com/ja/translator

★フェミニズム理論とその課題を3つのウェーブで理解する(出典は「交差性・インターセクショナリティ」より)

1)第一波フェミニズム:1960年代以前:主に白人男性と白人女性の間の政治的平等を得ることに関心があった。

2)第二波フェミニズム:1960年代から1980年代;黒人フェミニスト、チカーナやその他のラティーナ・フェミニスト、先住民フェミニスト、アジア系アメリカ人 フェミニスト、など全世界的なフェミニズムが隆盛した。

3)第三波フェミニズム:1980年代後半以降:初期のフェミニズム運動における人種、階級、性的指向、ジェンダー・アイデンティティへの関心の欠如に注目し、政治的・社会的格差に対処するチャンネルを提供しようとしている。

4)第四波フェミニズム:[定説やコンセンサスについては不詳]あくまでも仮説ですが、1990年のジュディス・バトラーの『ジェンダートラブル』の出版以降の、ジェンダー・パフォーマティビティ(Gender performativity) をインターセクショナリティの中で実践するフェミズムの現在形が確立されつつある現在かもしれません!!!(Z世代のフェミニズム)

★さまざまなフェミニズムを知るには「フェミニズム理論・フェミニスト理論」をご参照ください。

■ポスト・フェミニズム、あるいはアフター・フェミ ニズムについて

"The term postfeminism (alternatively rendered as post-feminism) is used to describe reactions against contradictions and absences in feminism, especially second-wave feminism and third-wave feminism. The term postfeminism is sometimes confused with "4th wave-feminism", and "women of color feminism" (e.g. hooks, 1996; Spivak, 1999)./ The ideology of postfeminism is often recognised by its contrast with a prevailing or preceding feminism. Postfeminism strives towards the next stage in gender-related societal progress, and as such is often conceived as in favor of a society that is no longer defined by gender binary and gender role. A postfeminist is a person who believes in, promotes, or embodies any of various ideologies springing from the feminism of the 1970s, whether supportive of or antagonistic towards classical feminism./ Postfeminism can be considered a critical way of understanding the changed relations between feminism, popular culture and femininity. Postfeminism may also present a critique of second-wave feminism or third-wave feminism by questioning the second wave or third-wave's binary thinking and essentialism, their vision of sexuality, and the perception of relationships between femininity and feminism./ Second-wave feminism is often critiqued for being too 'white', too 'straight', and too 'liberal', and resulting in the needs of women from marginalized groups and cultures being ignored. However, since intersectionality is a product of third-wave feminism, the references to such as postfeminist are open to challenge and may be more properly considered feminist." - Postfeminism, by Wiki

「ポストフェミニズムという用語は、フェミニズム、 特に第二波フェミニズムや第三波フェミニズムにおける矛盾や欠落に対する反応を表すために用いられる。ポストフェミニズムという用語は、「第4波フェミニ ズム」や「有色人種の女性フェミニズム」と混同されることもある(例:hooks, 1996; Spivak, 1999)/ポストフェミニズムのイデオロギーは、一般的なフェミニズムや先行するフェミニズムとの対比によって認識されることが多い。ポスト・フェミニ ズムのイデオロギーは、先行するフェミニズムとの対比によって認識されることが多い。ポスト・フェミニズムは、ジェンダーに関連する社会の進歩における次 の段階を目指すものであり、そのような社会は、もはやジェンダーの二元論や性別役割分担によって定義されるものではないと考えられている。ポストフェミニ ストとは、1970年代のフェミニズムから生まれた様々なイデオロギーのいずれかを信じ、推進し、体現する人のことであり、古典的なフェミニズムを支持す るものであれ、敵対するものであれ、である/ポストフェミニズムは、フェミニズム、大衆文化、女性性の間の変化した関係を理解する批判的な方法と考えるこ とができる。ポストフェミニズムはまた、第二波や第三波の二元論的思考や本質主義、セクシュアリティのビジョン、フェミニティとフェミニズムの関係の認識 に疑問を投げかけることで、第二波フェミニズムや第三波フェミニズムに対する批評を提示することもある/第二波フェミニズムはしばしば、あまりにも「白人 的」であり、あまりにも「ストレート」であり、あまりにも「リベラル」であるために、周縁化されたグループや文化圏の女性のニーズが無視される結果になっ ていると批評される。しかし、インターセクショナリティは第三波フェミニズムの産物であるため、ポストフェミニストなどという言い方に反論の余地があり、 フェミニストと考える方が適切かもしれない。」

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