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ジェンダーとセックスの政治人類学

Anthropology of gender and sexuality

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池田光穂

参政権における性的差別に代表されるように、近代社会において女性は、男性をモデルとする「完全な人間」として取り扱われてきませんでした。し かし、女性は社会を構成する重要なメンバーとして、どの社会においても重要な認知を受けている/受けるべきだという我々の「常識」は、このような女性= 劣った人間という人類史における「もうひとつの常識」と、とりたてて大きな齟齬を起こすことなく共存してきたのです。社会が構成する現実(=男女の平等 性)と、女性は劣っているという観念と実践の体系(=男女差別イデオロギー)が大きな齟齬を起こすことなく共存してきたのです! 

性自認の多様性(ダイヴァーシティ)を訳知り顔で勉強する前に、まず、生物学的性別であるセッ クスと社会的性あるいは性自認であるジェ ンダーの 定義を抑えておくと、議論がもうすこし、すっきりいくでしょう。このページは、その区分から出発して、医学や生物学のセックスという見方が、いかに、ジェ ンダーの概念に影響を受けており、実は、我々がこれまで信じてきたセックスの概念は、ジェンダー概念の派生として考える必要性すら生じてきました(→内閣府男女共同参画局URLもジェンダーを使っていて www.gender.go.jp と記載)(→ジェンダーが社会的概念以上に政治的概念だと思うひとはこちらも参照→「ジェンダー・とらぶってる!!!」)。

このような男女差別イデオロギーのしぶとさを解明するためには、男性と女性を区分す る最も大きな生物的差異であると考えられているセクシュアリティー (sexuality)についての理論的考察が不可欠になります。セクシュアリ ティーについての常識を解体するためには、〈同性愛〉〈オカマ〉〈変態〉〈異常性欲〉と蔑まれてきた一連の別のセクシュアリティーズについての考察である 「クイア理論」(→用語解説詳細) を参照します。この講義※を通して「おちんちん」と「おっぱい」という生物的差異に裏付けられたセクシュアリティの通念が、いかに社会や歴史における文化 的修飾を受けて変容するものであるかを明らかにします。

つまり、私たち自身の、ジェンダーとセックスとセク シュアリティのテーマを考えることは、それらを政治的に考えることにほかなりません(→「生き方と してのフェミニズム」「政治人類学」)

※この文書は2001年頃に熊本の女性会館からの連続講演のひとつの発表(「現代女性学入門」男女共働政経塾:熊本大学地域連携フォーラム運営 )という依頼を受けて作った講演会用のレジュメ(要旨)の文章がもとになっています。現在は過去20年間の間に、内容が加筆されてきました。

■以下は、追加のテーマ群です

第一の審問

・第一世界フェミニズムと、第三世界フェミニズムの違い——セクシズムの暴力と恐怖に抗して

第一世界(西洋)のフェミニズムのジレンマ:西洋からの発 言は、しばしば(本人たちが自覚的であればあるほど)人種主義や植民地主義の誹りを恐れて、非西洋の女性と文化に対して否定的見方や道徳的批判を「回避」 するために、文化相対主義の態度をとりがち。 この態度表明が、第三世界(非西洋)において、女性に対して「否定的見方」や「基本的人権の侵害」などのケースと闘っている(非西洋)フェミニストに対し て、連帯と連携の可能性あるいは、その「情熱」を逓減させてしまう。

第三世界(非西洋)のフェミニズムのジレンマ:自分たちが 直面している家父長制への批判をすれば、第1世界の帝国主義的なフェミニストとの同盟関係を過度に強調されて、文化内の同質性や「伝統の美風」に抵抗する 「文化的裏切り者」と呼ばれてしまう危険性を有する。かといって、自文化に対して文化相対主義の 立場をとれば、さまざまな抑圧や不道徳からの解放をもとめ る同胞に対する裏切りや傍観主義をとってしまうのことになる。

●日本の男女共同参画センターへの介入(2023年当時)——最初の目標は「国際水準で男女共同参画」について考えよう!!


「男女共同参画センターの取り組みを充実させるために私 が思うこと」

 男女共同参画センターの本来の目的は、性別に関する差別を人権侵害であることを認識し、社会のあらゆる活動の側面において、市民が自らのもっている能力 をもって活躍することで地域社会を活性化することにあります。またそのことに関する具体的な啓発活動が重要であると思います。私は文化人類学の専門家とし てこれまでジェンダー意識の社会的形成過程について学生や大学院生たちと共に研究教育活動に参加してきました。

 そのため私が考える貴センターに対する貢献のひとつに、私が経験してきた、男女のちがいに関しての、これまでの市民的「常識」への反省あるいは再考が必 要になるとことについて提言することにあります。とりわけ市民政治参加活動におけるみえない男女差別に代表されるように、代表民主主義と直接民主主義にお ける男女共同参画の違いについての考え方の違いについて考える機会を市民に啓蒙することは重要であると考えます。しかしながら男性は政治的リーダーシップ をとり、女性はそれに従うべきだ。あるいは女性は政治的発言について控えるべきだと社会の偏見は厳然としてあります。あらゆる局面における男女の平等性を 確保すべきという建前と、女性は(とりわけ政治的リーダーシップにおいて)劣っているという暗黙の了解が、残念ながら共存してきたのが現実です。

 このような男女の不平等を啓発し、市民の一人ひとりが改善に寄与するためには、1)まずセンターなどが中心となり市民の男女共同参画に関する基本資料集 を作成すること、2)その調査成果にもとづいたタウンミーティングやセミナーなどの開催、3)参加した市民の声を市報などに通して啓発すること、4)市長 や議会に対する活動の報告や、行政や立法の担当者へのヒアリング活動、など総合的な活動が重要になると思われます。将来的には、隣接する自治体行政組織と 連携して、超域的な市民間の交流や広報活動も、男女共同参画が、地域や日本社会のみならず、地球市民の重要な課題になるという意識醸成になるという、長期 的な理念を抱くことも重要であると考えます。

2023年4月26日

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