ハンドアウト(レジュメ)の書き方:添削例から学ぶ
文化人類学編
解説:池田光穂
※ このページは実際のハンドアウトにもとづいて、その作成方 法のコツを伝授します。赤い文字はコメントや解説です。[詳しくはここ] ※
[文献タイトル]生と死の儀礼における分類の次元
[文献の著者]ヴィクター・W・ター ナー(1920-1983)
[発表者 名=レジュメの作者]ろ 組発表(笠、野間、肝付、岩切)※ 2003 年6月17日5限
※ かな らず作成者のグループか名前をつける。日付も忘れず に! 最近ではアドレスをつける人もいます ※
【課題文献】※ かならず表記 ※
V・ターナー「生と死の儀礼における分類の次元」『儀礼の過程』冨倉光雄訳、pp.1-61、東京:思索社、1976
【紹介】※ できれば表記する ※
この論文はヴィクター・ターナー(Victor Turner, 1920-1986)が1966年4月におこなったロチェスター大学においてL・H・モーガン記念講演にもとづいており、のちに『儀礼の過程(The Ritual Process)』(1966)として出版された本の第1章である。論文のほとんどの部分はンデンブ族の人たちがおこなった女性の生殖不調(不妊と思われ る)を治癒するイソマ(isoma)儀礼についての詳細な分析である。ターナーは儀礼の時間的秩序、さまざまな儀礼の要素の空間的秩序や意味づけなどを、 ンデンブの人たちの説明に即して解説し、それらが社会構造や儀礼に参与する人々の意識などとの関連づけ(つまり解釈)をおこなっている。
【本文の構成】( )内は翻訳書のページを表す ※ できれば 表記する ※
【各部分の要約】※ 表題と簡単な文章で記載する。矢印記号 (→)などで説明することはなるべく行わない ※
※ 略語表記に関するチェックリスト ※
1.ルイス・ヘンリー・モーガンの宗教理解の特徴:
「すべての未開宗教はグロテスクで、理解しがたいもの」
2.ターナーの目論見
「現代の人類学者は宗教の神秘的な現象の多くを、理解可能なものとなし得ることを明らかにする」
3.ンデンブ族のイソマ儀礼
不吉な状態に名前をつけること=目に見えない超自然的な霊を目に見える形にして治療する
象徴の項目のすべては、経験による項目に対応する(という確信と、その証明)
4.分類の構造:三分法
イソマの儀礼の構造において3組の三分法がえられる。第1は、見えない3分法、第2は目に見えるもの、第3は冷たい薬を振りかける回数 と冷たい薬の回数の割合についてである。
5.分類の構造:二分法
イソマ儀礼における対立する価値は対になって、そのいく対ずつかが縦、横、高さのセットに組み合わされている。相当する価値は、各セッ トの範囲内に求められるのであって、あるセットと別なセットの間には求めることができない(本文、p.55を参照)。
6.状況と分類
あらゆるタイプの状況に当てはまると考えられるような単一の分類体系などは存在せず、いくつかの異なった分類次元が
存在する。これらの分類次元は互いに交差しており、それらの分類次元を構成する二分法(三分法)の組み合わせはただその時だけ一時的 に、連絡をもつのである。ただし、一対の象徴が別個の分類次元を結ぶ連絡地点を表すこと、すなわち、象徴が多くの意義を同時に表現することもある。なぜな ら、象徴には交差する分類次元を連絡する機能があるからだ。
7.まとめ
社会にある様々な葛藤は、儀礼や象徴的に表現されるものを通して、社会を統制する。母系出自と夫方居住をあわせもつことからおきる矛盾 を、イソマの儀礼は解消する。
【イソマ儀礼の過程】※ 階層(レベル)が細かくなると「段下 げ」などをしてわかりやすく表示します ※
【イソマ儀礼の象徴的側面の説明図】※ 重要な図はオリジナル からコピーします(国内外の著作権法に留意します) ※
イケラの2つの穴に配されたイソマ儀礼の空間的シンボリズム(原著、p.30より)
※ 画面内をクリックすると原画(拡大)が見られます ※
【ンデンブ族について】
石川栄吉ほか『文化人類学事典』弘文堂、1987年の「ンデンブ族」の項目を参照
最大の特徴は、ターナーの説明にもあるように、母系出自を取りながら夫方居住形態をとることであり、これがンデンブ社会の離婚率の高さ につながっていることである。ただし、これはンデンブ社会が異常ということではなく、母系社会の維持のために離婚が社会的機能をもつということである。
【分類の構造】※ 著者が説明していることをオリジナルの図を 作成します ※
三分法の構造:下図(画面をクリックすると拡大されます)
※ 画面内をクリックすると原画(拡大)が見られます ※
(ターナー 1976:49-53)より「ろ組」が原画作成、池田がグラフィック化する(Copyright 2003)
【ヴィクター・ターナーの年譜】※ 論文の作者についての伝記的情報は最低限押さえておく ※
池田光穂「ヴィクター・W・ターナー」
【文献】 ※ 文献の記載方法は《文 献表記のスタイル》を参照のこと ※
Beth Barrie 1998 Victor Turner.
http://www.indiana.edu/‾wanthro/turner.htm(2002年11年18日)
ターナー、V., 1996. 『儀礼の過程 』冨倉光雄訳、東京:新思索社。
ターナー、V., 1981. 『象徴と社会 』梶原景昭訳、東京:紀伊國屋書店。
ターナー、V.山口昌男編, 1983. 『見世物の人類学』 東京:三省堂。
Copyright, K.Iwakiri, N.Kimotsuki, A.Noma,A.Ryu, and M. Ikeda 2003-2008
2003年6月17日の文 化表象学基礎演習(2003)の授業で配布された「ろ組」の発表レジュメ(ハンドアウト)をもとに若干の修正を加えたり、削除しました。ただし、 本物をもっている学生がごらんになればわかるように、レジュメの雰囲気を伝えているものになっています。次回以降のハンドアウトのモデルとして、参考にし てください(3003.06.17, M.Ikeda)。
【附録】やくにたつリスト集
知的生産学入門(池田光穂)