略記法
On Abridged Notation(よくある間違いと正書法)
The Roaster, 1938 by Picasso
学生の論文・レポート・ゼミのレジュメなどをみていますと、以下のような表記法のあやまりが目に つきます。自分でチェックするだけでなく、友人の誤りを指摘してあげましょう。これこそが真の友愛の精神です。作成者:池田光穂
誤 errata |
正
Correctus |
略語の意味 |
P52
L13 |
p.52
l.13 |
52ページ[解説1]
13行目[解説2]※通常は行数を指定しなくてよい |
P36-39, ps36-9 | pp.36-9 Pp.36-39 |
36ページから
39ページ。最近では、紛らわしさを回避するために pp.36-9 よりも pp.36-39 と表記することが好まれる。 |
ex, EX | e.g. | たとえば(ラテン 語のexempli gratia から) |
→ | ref. | 〜を参照せよ (reference) |
→ | cf. | 〜と比較せよ (compare) |
←→ | opp. | 反対は (opposed) |
V.6 | vol.6 | 第6巻 (volume) |
V.S., VS | vs. | 対(対抗・対決)
ラテン語のversusに由来します。
例:Inoki vs. Baba(猪木 対 馬場) |
etc | et al. | 〜そのほか(ラテ
ン語のet alii)
【注意】等々(etc, et cetera)とは異なります |
それ以外に、ibid.(引用した直前の文献をさす)と、op. cit. (すでに引用したが直前にはない文献)の混同などもみかけられます。
ibid. :ibidem(同じ場所で)
op.sit.:opere citato (引用した作品の中に)
sic: (原文のまま)
他にも下記の文献に豊富な用例があるので参照すること。
ページをP52と表記するのが間違いである。このことに気づかない理由は、このよう な凡ミスをするのは、かならずしも学生だけにあるのではなく、けっこう大先生の書く学術本でもみられる——表記法や略記法は、その当人が学術的な訓練に晒 されるかが問題で、その人の偉さとは無関係だからだ。つまりプロでもこの種の幼稚な誤りをおこなう。だけど、それで居直る理由は大先生においても、全くな いのである——そういう連中の本や論文は、そのようなつまらない瑕疵(かし:キズのこと)によって大幅な信用を失う。間違いは間違いだからだ。また、この 種の誤りの横行がやがて「それは日本語の表記法なのだ」という居直り論法で正当化されることもあるだろう——憲法第9条の有名無実化と同じだ。だが、この 居直りはよくない。日本語の表記では(52頁)や(52ページ)という審美的にもよろしい表記があるではないかということだ。学問は公明正大にやるのが原 則。といことは悪貨が良貨を駆逐するような状況は容認されるべきではないだろう。
レジュメに行をしてくれる学生がおられます(例:p.52, l.13)[これは52ページの13行目にあるという意味です]。まことに親切で嬉しい限りですが、行中に単語を探す際には、口頭で説明したり(例、「第 x番目のパラグラフ=段落にあります」)することができますので、行を数えて記載する必要は[文献考証的関心がない限り]不要です。また、行を数える際に エラーも起こしやすくなります。ページの記載は誤りにくいですが、行の記載は誤りやすいです。
結論はこうです。行数の番目を記載する必要はありません。
質問:電子テキストでは、 ページ表記できないものがあるは、その場合は引用箇所をどのように表記するのでしょうか?
お答え:文献の章数(場
合によれば節内のパラグラフ順)などで表記します。電子テキスト
では、チェックする人が、オリジナルの文章を文字列等で検索可能ですので、文献の引用は【正確にかつ間違えないように】します。(→オンライン文献の引用方法)
【文献】