学術論文執筆要項
The Roaster, 1938 by Picasso
日本文化人類学会編集『文化人類学』をモ デルに作成しました。(ただし完全準拠ではありません。)文化人類学・民族学・社会人類学
ご注意:
題名、英文タイトル、要旨、キーワード、目次、本文、注、参照文献、などから構成されます。
400〜800字[卒業論文]〜2000字[修士論文]
※博士論文は審査委員会の規定に従いま す。
論文には英文※タイトルをつけてください。
※必要に応じて文字化された現地語を併 記してもよい
論文には5語程度のキーワードをつけてください。
原稿では章を改める際には、改ページします。節の場合は節のタイトルを挟んで節の前を2行あけ、文章 をはじめる行とは1行あけてください(□の表記は空欄をあらわしています)。
章の最初を、序章と終章という付け方はやめて、「第1章 序論」「第n章 結論」としてください(つ まり章は1から順番に始まり、最後の章がn番目なら、最終章は第n章になる)。序文や末尾の締めくくりの文章には、それぞれ「はじめに」「おわりに」とい うセクションをつくりそこで述べてください。
章立ての階層(見本)……参考 レポートの構成(池田光穂)
※章・節の構造は、ローマ数字以外にもアラビア数字で もかまいません。ただし、論文全体の階層構造を表す原則は踏襲してください(ある章ではローマ数字で、別の章ではアラビア数字という表記は 許されない)。
ローマ数字は、ワープロの指定の外字を使わず、全角あるいは半角の英数モードで記載する ことをおすすめします(I, II, III, IV, V, VI.....)。なぜなら、これらの文字は機種依存で、普遍性・共通性が保証されないからです。電子メールでの通信にもこの原理を忘れないでください ね。
卒業論文、修士論文、博士論文、書籍・報告書において は、章を改める時は、ページを改める(=改ページする)こと。
例) 第2章 親 族
……(一行分空けます)……
I 親族組織と村落
……(一行分空けます)……
a. 親族構造
□□□□□□(本文)□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
II 親族組織
階層秩序をあらわす表記法については次のウェブページを参照してください。
5+.本文中における表記の留意点
本文の表記は、原則として日本語の標準的な表記法に準 拠します。(ここでは詳しく説明しないので、類書を参考にしてください)。
言葉は生き物です。ほとんど確立したかのように思える日本語の表記法にも、さまざまで微妙な差異があ ります。大切なことは、採用した表記法を首尾一貫して採用し、文章内の個々の箇所で統一性がとれない事態を回避することです。
それ以外で、文化人類学の論文において、読者に違和感のない表記法を以下に提案します。(これはあく までも「提案」ですから、その表記法に論文の執筆者が納得がいかない場合は採用しなくてもかまいません)。
(1) %、cm、$、=、などの表記は、それぞれ、パーセント、センチ、ドル、イコール(つま り)、などの日本語の音で読みやすい表記にしてください。(「視覚障害者にあなたの論文を読んで聞かせて理解してもらえるか?」というのがそのガイドライ ンとなるでしょう)。
(2)数字は、縦書きの場合は漢数字ですが、横書きの場合は適宜アラビア数字を使います。アラビア数 字は、現在のワープロの技術と印字のバランスから、1文字だけなら全角、2文字以上の数字は半角で書くと、印刷時にきれいになります。
(3)原則、西暦表記します。ただし、日本に関わる歴史事象では、年号を併記します。
例)1893(明治26)年
(4)西暦で、最初の1900、2000年の上位2桁を省略することがありますが、それはあくまでも 煩雑さを防ぐための略記です。段落内で最初にでてくる年には、たとえば、いきなり「70年代」とするのではなく、「1970年代」と書く方が読者には親切 です。
(5)複文で、修飾節の多かったり、関係代名詞を多用する、長い文章はなるべく避けましょう。また、 日本語の特徴である文末決定性が、論理的な文章には曖昧になりやすいために、長い文章で論理を展開する際には、予め短い文章で内容を予告しておきましょ う。
(6)接続詞の使い方には注意しましょう。前の文章との関係で、接続詞が正しく使われているか、いつ もチェックしましょう。接続詞を省略できるときにはなるべく省略しましょう。
[日本語に「文末に係り結びを派生する接続詞」が多いのは、日本語の特徴である文末 決定性が生み出す曖昧性をうち消す作用があるからでしょう。日本語に美しい文学的表現があるのなら、日本語にも美しい論理的表現があるはずです。接続詞の 省略語法に精通することは、日本語で美しく論理的文章を書く技法に精通することになるでしょう]。
他人の著作から、ことわりなしで抜き書きすることはできません(→その根拠:剽窃について)。文中に引用する際には、引用符などを使って、正確に引用します。
本文中および注の文中に下記のようにいれてください。
[著者名□刊 行年:ページ数]。
□(←四角のスペース)に関する説明:上記の事例 では、欧文名と発行年の間には半角スペースの空きがあります。また二番目の日本語表記名と発行年の間には全角スペースの明きがあります。
例)「……」と論じた[Geertz 1973:5-6]。
例)「……」と論じた[ギアツ 1995:126 -7]。
【よくある誤りと留意点】
文末に[括弧]が入る時は、[括弧]を閉じてから文章を止めるための丸(。) をつけます。文章を止めてから[ギアツ 1995:126-7]を入れるのではありません。 これは日本語の論文における独特の方法です。英文では、(丸括弧)の前や“ダブルクオーテーション”で閉じる前にピリオド(.)がつけられます。
オンライン文献の引用についてはこちらでリンクした先に記しています。
同一文献から何度も引用する場合も、Ibid、op cit. 上掲書などとせずに、上記方式の表記をくりかえしてください。(→略記法はこちらです)
もし仮に、引用している文章や用語がおかしいけれども、引用に値すると判断した時には(ママ)——英文の場合は(sic)—— を挿入して、引用した文章をそのまま正確に引用したことを表示します。
例)「聖徳太子の高血圧の病体(ママ)メカニズムからそういえる」と書いてい る[黒山 1963:251]。
※この正しい表記は「病態」ですが、原典の著者の黒山さん(架空)がそう書いているので、そのまま引用した証拠として、引用者は 「自分は間違っていないよ」ことを(ママ)——ないしは半角で(ママ)——という表現で宣言するのです。
ただし、明らかに誤りで、そのまま引用したくない時に、次のような表記法が可能になります。
例)「聖徳太子の高血圧の病態メカニズムからそういえる」と書いている[黒山 1963:251;ただし病態は正しい表記に変えた]。
このやり方は、引用にする典拠文献が、ひどい訳文や翻訳で引用したくない時に、原文を参照できる時に限り、次のような表記法によ り、こだわりなく引用することができます。
例)[ギアーツ 1985:45-6, ただし訳文は一部変えた]。
孫引きはあまりおすすめできませんが、どうしても必要である場合は次のようにして、 孫引きしたことを正直に白状します(フェアープレーの精神!)。
例)[Brantley 1981:256, ただし引用は慶田 2002:15]。
この表記が意味することは、「オリジナルの文章は、ブラントレーの1981年の 著作の256ページにあるが、実際には、慶田の2002年の論文(ないしは著作)の15ページから引用しました」と正直に典拠を白状していることです。こ こで注意しなければならないことは、文献リストには、慶田の論文のみならず、ブラントレーの 著作[Brantley 1981]を載せておかねばならないということです。もちろん将来的にはオリジナルの文献をチェックすることが必要です。
引用した文章は著者の引用にたる理由があって引用されたものです。したがって、著者 (=引用者)は引用文に下線やゴチックあるいは点々をつけて強調したいものです。その時には次のような文言をつけておきます。
例)[Brantley 1981:256, ただし強調は引用者による]。
欧文の本や雑誌『 』で、欧文で書かれた論文名を「 」で引用するケースがあります が、これは滑稽です。欧文の書名・雑誌名の引用のスタイルに従い、ダブルクオーテーションやイタリック、ないしはクオーテーションマークで文中に挿入する ほうが、より自然に見えます。
例)
【誤】『Interpretation of Cultures』
【正】"Interpretation of Cultures" ないしは Interpretation of Cultures
短い文章は引用符である「 」で引用します。
高校までの国語教育での因襲的作法では、シンプルなカギ括弧(「」)の中身にさらに カギ括弧がある場合は、二重カギ括弧で表記しますが、学術論文では、そのような作法は採用しません。引用文にカギ括弧がある場合は、その括 弧の型式を尊重し、そのまま括弧をつづけます。その理由は、最初と最後のカギ括弧はあくまでも、引用する宣言であり、その括弧に囲まれた文章は、正確に引 用する学問上の要請があるからです。
例)
【誤】「『クレイジー』な国日本を理解しよう」という副題のついた黒川 [2002]の著作は……。
【正】「「クレイジー」な国日本を理解しよう」という副題のついた黒川 [2002]の著作は……。
引用する文章が数行におよぶ場合や、3つ以上のセンテンスがある場合は段落を下げて引用したほうがよ い場合があります。その場合は前後に一行づつのスペースを空けます。(下記の「表記法」を参照のこと)。
文中で省略する時には……(てんてん)を使って省略することができます。ただし、前にある条件節を省略した場合など、引用文を…… (てんてん)で始めるケースもありますが、この表記は好ましくありません。前に省略されていようがいまいが、引用文はストレートに始まっているからです。 この場合は、引用者が引用文全体のコンテキスト(文脈)を類推して、オリジナルの著者から公平な観点から引用すべきです。……を使えばよいという判断では なく、必要かつ最小限の引用を心がけましょう。
段落下げ方法による引用文を表記する場合、文全体に括弧(「 」)を付けるか、否かは引用者の好みで自由です。しかし、もしある書 記法を採用したら全文がそのような原則で書き続けねばなりません。また引用文全体を文字のポイントを小さくする方法もありますが、あくまでも本文で引用し ているために、文字のポイント数やフォントは変えないほうがよいでしょう。
表記法)
本文_____________________
_______________________
]……一行分あけます
ここに引用文が入る__________
________[ギアーツ 1987a:6]。
]……一行分あけます
本文_____________________
例)
そこでギア ーツはこれまでの文化の定義を離れ、文化理論において最も強く影響を受けたマックス・ウェーバーを援用して新し い文化概念を打ち出した。文化を研究することがその文化の定義如何によって異なることは必然であり、人類学者は 文化が何であるかを明らかにしておくことが必須となってくる。次の一節は、ギアーツがウェーバーを援用して述べ た文化の定義である。
私が採用する文化の概念…は本質的に記号論的なものである。私はマック ス・ウェーバーと共に、人間は自分自身が はりめぐらした意味の網の目の中にかかっている動物であると私は考え、文化をこの網として捉える[ギアーツ 1987a:6]。
ギアーツは文化を「意味の網の目」という。この「意味」(主に meaning、もしくはsignificanceかimport)につい ては「文化体系としての宗教」において詳しく述べられおり、正確には「象徴」(symbol)によって運ばれる「意 味」である。したがって文化とは、象徴によって運ばれる意味の集合体ということになる。
※この文章の実例は、山添[Online, yama03.html]よりとりました。
【引用文献】
山添響子「クリフォード・ギアツ研究」(第3章)
※この表記法は「オ ンライン文献の引用法」に準拠しました。下線でリンクします。
6+. オンライン引用文献 [→より詳しくはオ ンライン文献の引用法へ]
オンライン引用文献は次のように書きます。
[著者名□online:ファイル名]または[著者名□online]
例)[NHK online: 21guest2.html]または[NHK online]
(1)ファイル名が特定できない場合は下記の【例外】参照、あるいはここでリンク!
(2)ファイル名を省略できるのは、同じインターネットのソースから唯一の引用の場合のみです。
オンライン文献は巻末にプリントメディアの引用文献とは別にオンライン文献として文献リ ストにまとめます。リストにおける表記は次のようにします。
著者名「ヘッダ名*(ページのタイトル)」
URL(最新アクセス日、西暦)
用語のせつめい
【ヘッダ名】=ブラウザーの外 枠の上部に書かれてある文句(このページでは「学術論文(文化人類学・歴史学・社会人類学)執筆要項」)です。ちなみにファイル名は 「00219mfor.html」です。
著者名はページをアップした個人や団体のこと を指し、ヘッダ名が文献名になっている事実を確認するために下の「実際のリンク」ページを見てチェックしてください。
例)
NHK「ゲスト紹介」
http://www.nhk.or.jp/a-room/kotoba/21kumamoto/21guest2.html
(2002年10月28日)
実際のリンクでチェックしてください
xception【例外】[文部科学省 online ][文部科学省 online 2]
フレーム表記の場合はファイル名が正しく表記されませんが、その際には文献リストに画面 のソースを表示してオリジナルページのファイル名を特定します。特定できない場合やアクセスが禁止されている場合は、文中に掲げる場合は、 上掲のように[文部科学省 online 2](※この場合は文中2つ目の引用です)と書きます。また、文献リストにおいてフレームの存在する場所から特定できる著者名、ヘッダ名(また論 文名)、URLを記述します。
例)[1]
文部科学省
「科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会 2001/07/11議事録 第2回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会議事録」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/index.htm(2003 年3月6日)
【ちゅうい!】
画面のソースから特定できるページは皆さんが ごらんになっているブラウザーの「ソースの表示」から特定することができます。わからない人は上のような書き方でもかまいません。理解できる人は下にすす んでください。
このページの本当のURLは次のところにあります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu1/gijiroku/001/010701.htm(2003 年3月6日)
したがって、上の指示に従って正確に書くとすると次のようになります。まず文中は[文部科学省 online: 010701.htm]と書き、参照文献では次のように表記しま す。
例)[2]
文部科学省
「科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会 2001/07/11議事録 第2回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会議事録」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu1/gijiroku/001/010701.htm(2003 年3月6日)
[→より詳しくはオンライン文献の引用法へ]
この項目の改良には、利用者の益田さんと大野さんの指摘が役立ちました。ありがとう!(2003/03/06)
なお、文献リストの表記の仕方は次にリンクするページを参照してください。
________________________________________________
注は後注とし、本文中の注見だしに通し番号をつけます。なお、印刷では本文と注とではポイントが異 なります(論文の場合)が、原稿の段階では一律のポイントで提出してください。
注の書式は以下のようにしてください。
1)□□□□……
□□□□□……
2)□□□□……
□□□□□……
ローマ字表記の人名における姓名は大文字と小 文字の組み合わせとします。
例) Malinowski, Bronislaw
※注意!※
『民族学研究』や『社会人類学年報』では姓の表示に[大文字と大文字の変形から 構成される]スモールキャピタルという特殊な表記法を使います。この場合は、投稿時に、すべての文字を大文字にした後に、頭文字を除く名前の残りの部 分に下線を引きます。しかし、ここでは、欧米の人類学関連の文献の一般的な表記法に準拠します。『民族学研究』や『社会人類学年報』に投稿される方 は、ここでは異なっていることに注意して下さい。
現地語はイタリックとします。
例) Aj q'ij (daykeeper)
図・表は執筆者がワープロ、パソコンで作製したものをできるかぎりそのまま使用します。図表の 説明は、図の場合図の下に、表の場合表の上につけます。
準拠するワードプロセッサーソフトに従います。
現地語を使う文化人類学(民族学・社会人類学を含む)では、今日は不可欠だからです。しかしながら (統一コードの普及がなされない現在)機種依存の特殊文字は、なるべく使わず、現地語の特殊フォントはオリジナル・テキストとして別に用意すべきです。
ローマ数字は、ワープロの指定の外字を使わず、全角あるいは半角の英数モードで記載 することをおすすめします(I, II, III, IV, V, VI.....)。
外字のマルイチ、マルニ、マルサン((1)の天と地が塞がったものです)は、使わな いこと。かならず(1
), (2), (3) ないしは (a), (b), (c)....とします。
長年の池田の経験から申しますと、その際にはかならずテキストファイル形式で別の ファイルを作成しておき、特殊文字をもっとも単純な記述法に変えて保存しておきます。あとで出版原稿にする際に便利です。
12. 文献目録:[より詳しくは→文献表記スタ イル]
以下は『民族学研究』方式です。池田の授業や指導では『地域研究論集』(地域研究企画交流センター発 行)をお薦めしますが、これ以下の『民族学研究』方式でもかまいません。
『地域研究論集』(地域研究企画交流センター発行)の文献リストのスタイルへの参照は、ここからリン クしてください【文献表記スタ イル】
1) 文献の配列は著者姓名のアルファベット順か五十音順とします。ただし、日本語、外国語の文献がそれぞれかなりの数にのぼる場合は、それぞれ分けて列記した 方がわかりやすくなります。また、邦訳のみの場合、著者名の現綴をカナ書きの五十音順としてください。
2) 記載は、著者姓名(改行)年号、「論文名」、『誌名』、第一号、頁数、出版社の順とします。外国語の雑誌および単行本はイタリックとします。
【例1】
馬淵 東一 (姓 と名の間は一文字分空けます)
1935 「高砂族の系譜」『民族学研究』1(1):1-16。
Howell, Signe
1985 Formal Speech Actasone Discourse.
Man(N.S.)21(1):79-101.(雑誌は書籍と同じイタリック表記します)
論文集に掲載されている論文の場合、著者名—(改行)年号、「論題」、『論文集名』、編 者、頁数、出版地:出版社の順とします。
【例2】
蒲生 正男
1960 「奄美の民俗・社会」『日本民俗学体系』12:7-21、東京:平凡社。
Mead, Margaret
1955 Implication of Insight-II.
In Childhood in Contemporary Cultures. Margaret Mead and Martha Wolfenstein (eds.), pp449-61.Chicago: University of Chicago Press.
単行本の場合、著者名—(改行)年号、『書名』、出版社の順とします。
【例3】
野口 武徳
1972 『沖縄池間島民俗誌』東京:未来社。
Douglas, Mary
1966 Purity and Danger : An Analysis of Concepts of Pollution and Taboo. New York: Praeger.
邦訳が出版されている場合は下記のようにします。
Douglas, Mary
1966[1972] Purity and Danger : An Analysis of Concepts of Pollution and Taboo. New York: Praeger.(『汚穢と禁忌』塚本利明訳, 東京:思潮社)
おさらい