メキシコの環境問題と観光
Environmental social issues and tourism development in Mexico
メキシコの環境問題と観光
・環境保護運動家の役割
「タマウリパスの鴨猟区やラーゴス・デ・モンテベージョ(南西部の湖沼地帯)のような多くの 事例で、観光という潜在的な所得創出能力は、環境面での国際協力を支持するように現地の政治勢力を動員するのに決定的な要因であった。‥‥。その他の自然 的歴史的宝(考古学的遺跡、天然の洞窟、湖、海岸線など)を人間の破壊から守ろうとする努力は、行政的・金融的支援が不足していて、系統だったスタッフの 訓練計画がなかったために部分的にしか成功しなかった。」(p.61)
・政策そのものの失敗
「つまり、環境悪化の最悪の結果のいくつかを修正しようとする政府の介入は、問題を逆転させ るどころか、抑えるのにさえ、効果的ではなかった。状況があまりにも深刻になったので、新大統領は[1988年、サリーナス]は首都における環境問題を自 分の政府の最優先課題であると宣言するにいたった。」(p.64)
・エコロジー運動と国際協力
「民間団体の努力で最も成功したのは、メキシコのグループが外国の団体と協力した場合であっ た。最も有名な二つの例は、渡り鳥や魚のような長距離を移動する動物種を保護する自然保護区の創設であった。コククジラ(バハ・カリフォルニアとコルテス 海)とオオカバマダラチョウ(ミチョアカン)がそれである。その結果、両保護区とも、観光業が栄え、何千人もの観光客が自然観察に訪れる一方で、定期的な サイクルの一部としてメキシコにやってくる動物種の保護もなされるようになった。」(p.72)
・住民と観光客とのギャップ
「しかし、観光客の多くの豊かさは、これらの[註:バハ・カリフォルニア,ミチョアカン] 両地域に住む人の貧しさや、保護区を維持する努力の一部として自分たちの社会を再編することに対して彼らが受け取る報酬の少なさと著しい対照をなしてい る。ミチョアカンでは、現地住民は狭くて汚い道路の改修工事と飲用水と電気を見返りに与えられた。しかし、彼らは、自分たちで組織して観光施設を建設する 経験も資金ももっていないので、外部者の訪問の質を改善することも、もっと多くの雇用を作り出すことも、観光支出のほんの少し多くの割合を手にすることも できないのである。」(pp.72-3)
・海亀とイグアナ
「巨大海亀を保護・研究しようとする類似の努力が太平洋でさなされつつある (Alvarado and Figueroa 1988)。ミチョアカンでは、運動の組織者のたちは、地域の人々をプロジェクトに統合することによって運動を強めようとしている。彼らは海亀漁に代わる 雇用と所得の新たな源泉としてイグワナ農場の創設の可能性を検討している。すなわち、彼らは、共同体(結局のところ、保護努力の社会的基盤に他ならない) の維持のための代替的源泉を生み出しながら、動物保護区を作り出す努力と両立する「エコロジカル・ツーリズム」(環境を破壊しない観光)の概念を発展させ ているのである。このプロジェクトは、まだ概念の段階ではあるが、そのような展開の可能性を示すと同時に、現存の生産機構の枠組み内で代替策を見いだそう とする際に、地域組織が直面する困難性をも示すものである。」(p.73)
「第2章開発戦略と環境悪化」
D・バーキン『歪められた発展と累積債務』訳書,pp.59-79
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