エコツーリズム(生態観光)の定義
What is Eco-Tourism, green
tourism, and ecological tourism?
エコツーリズムの定義
生態観光,エコツーリズム(eco-turism)
・広義の定義
おもに「野生地」「自然」をめざし「未開」の土地や「文明の隔絶した」地方に出かけ、そこで 非文明的感覚を楽しむ観光の形態。
未開の土地感覚を楽しむものであり、地球環境に思いを馳せるという、ことが主目的になるわけ ではない。副次的に、「未開」地方の荒廃を嘆くにいたり、地球規模の経済活動や環境破壊に気づかされる――〝ここにも西洋文明の波が押し寄せているとか、 廃油ボールや森林伐採に驚くという類である〟――ことがあるが、それ自体はeco-turismの基調にはならない。
・別の視点
生態環境を楽しむ観光の形態。ただし、エコロジスト的な傾向よりも、ただ楽しむための観光。 [ブラジルにおける、小型飛行機などで移動し、観光サイトを巡る西欧とくにスイスやフランス人などの少数の旅行グループ]。たんに自然環境をだけを対象と するのではなく、そこに住む少数の民族集団、集落と接触するので、現地の経済や信条体系に与える影響の可能性が高い。
・保護と観光の利害の一致
「絶滅に瀕した生物種、熱帯雨林あるいは湿原を保護することを、協力的な戦略によって援助す ることができたとき、それはエコツーリズムとなる」(Farrell & Runyan,1991:34)
・エコとグリーンという言葉がさまざまな人びとに与えるイメージについて、水谷知生(1992: 135-6)「グリーンツーリズム」『環境研究』No.85,pp.118-136,1992を参照のこと。しかし、彼が主張しているようなエコよりもグ リーンのほうがより適切であるということは、定義の問題よりも、言葉が与えるイメージの問題であるので、生産的な議論には展開しないだろう。
・エコツーリズムのイメージ
”自然環境について気づかせてくれる”(environmental awareness)
[具体例]川筏下り、ジャングル・クルーズ、野鳥や野生動物のウオッチング、ハイキング、
バックパッキング、スキューバ・ダイビング、乗馬によるトレッキング
エコロジーに敏感な旅行者(eco-conscious traveler)
ホテルが提供してきたような従来の「エコトラベル・ツアー・パッケージ」とは違う旅行形態で
ある(→エコトラベルパッケージツアーの定義/概念づけ、の必要あり)。
あるいは、”一時的に通過するだけの観光”(voyeuristic tourism「航海者的観光?」:Mex
& C.A. Handbook,1992:50)
【テクスト1】
「自然環境との共存を図り、先住民の文化から学びながら、新しい旅の文化を生み出そうとの動 きをいう。エコロジー(Ecology)とツーリズム(Tourism)を組み合わせた新造語。観光客の誘致を目的にした第三世界での大規模開発に対して は、環境破壊との批判も強く、地球環境問題への関心の高まりを受けて生まれた。この精神にそうツアーをエコ・ツアーと呼ぶが、その起源は北欧では六〇年代 にはじまった。日本では九〇年一一月にJTB(日本交通公社)が主催したボルネオへの『熱帯雨林の視察と植林の旅』がさきがけとして注目された。九一年の 太平洋アジア観光協会や日本旅行業協会の総会でも環境問題は重要課題として取り上げられ、売り上げの一部を環境保護に還元するツアーの企画もみられる。」 (出典:田中拓二「旅行」『知恵蔵1993』,p.1054,朝日新聞社,1993年)
【テクスト2】
“エコツーリズムは比較的乱されていない自然地域の中で、景観や野生の動植物を観察し、研究 し、楽しんだり、また、その地域に存在する過去・現在の文化的特色を対象とする特別の目的をもった旅を含む観光である”国際自然保護連合(IUCN) H.C.ラスクライン[出典:『国際観光情報』No.274,1992:5]
【テクスト3】
“エコツーリズムは、環境との調和を重視した旅行、即ち野生の自然そのものや環境を破壊せず に自然や文化を楽しむことである”米国旅行業協会(ASTA)[出典:『国際観光情報』No.274,1992:5]
【テクスト4】財団法人日本自然保護協会(NACS-J)
「旅行者が、生態系や地域文化に悪影響を及ぼすことなく、自然地域を理解し、鑑賞し、楽しむ ことができるよう、環境に配慮した施設および環境教育が提供され、地域の自然と文化の保護・地域経済に貢献することを目的とした旅行形態」、または「参加 者が、環境、自然(景観)、野生動植物、生態系を理解し、鑑賞し、加えてそれらに関する倫理観を向上させるべく、自然地域の中において、環境、自然(景 観)、野生動植物、生態系を損なうことなく、適切な人数の参加によるツアー形式」。
[出典:日本自然保護協会『NACS-J エコツーリズム・ガイドライン』同協会、1994 年/ただし、引用は佐藤晴子編訳『ホーエルウォッチング読本』クジラ・イルカ保護協会、1995年より]
【テクスト5】
「エコ・ツアーに参加する人びとが求めるものはおよそ、つぎのように要約できるだろう。つま り“安全性が確保された適度の危険の中に身を置きながら、好奇心と差別感を満足させてくれる”こと。」[出典:藤原英司「エコ・ツーリズムの出現と新しい 文化創造」『(不明)』(特集:環境観光)p.16
【テクスト6】
「ところで日本でのエコツーリズムの紹介のされ方は、IUCNの検討を中心として紹介されて いる、コスタリカ、ケニアの例などを中心として、どちらかというと開発途上国において自然資源、地域社会を維持しつつ外貨獲得を図るためのツーリズム、ひ いては地球上の自然遺産、文化遺産の保全手段という面が強調されて捉えられている傾向が強い。」[出典:水谷知生「グリーンツーリズム」『環境研究』 No.85,p.121,1992]
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