生態学と観光
27-6 Ecology and Tourism(Farrell, Bryan and Dean Runyan)
・環境と観光は学問領域ではなかなか具体的な問題とならなかったが、現実にはその間の関係が以前にも増して重要な課題になりつつある。現在では、生態学的な観光に触れないような観光研究の入門はあり得ない。
・さらに持続可能開発に触れない研究もない。熱帯や地域研究も重要だが、疑いもなく、それは理論化されていて維持管理=マネージメントの問題と統合される[必要がある]。
・観光は、自然環境のなかでそうあるべきだというよりも、なるようなかたちのままできたのが現状である。自然をそのまま享受してだけで、それを維持運営管理するという発想が、観光にはなかったが、現在では関連する会議などでは盛んに論じられるようになってきた。
・観光が観光客に対して真空の環境を提供することを任じてきた、また観光客も観光のシステムに対してそのように期待してきた。しかし、エコロジーの理念が観光にも重要な影響を及ぼすまでにいたって、観光が社会性をもつことを、つまり観光地の自然環境や社会や文化との関わりが強調されるようになってきたのである。
・観光することが、何かの責任の一端を担うようなものにかわりつつある。そのような状況(イデオロギーである――引用者)は持続可能開発の中から生まれてきた。それは観光研究アカデミーの89年の集会でもとりあげられた「観光のもうひとつの形態」「責任ある観光(responsible tourism)」などの動きと明らかに連動している。
【文献】
Farrell, Bryan and Dean Runyan, 1991, Ecology and Tourism, Annals of Tourism Research 18:26-40.
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