北中淳子『うつの医療人類学』ノート
Prof. Junko KITANAKA's Excellent
Book, "Medical Anthropology of Depression," 2014.
北中淳子教授の『うつの医療人類学』は、理想的な日
本の医療人類学のモノグラフである(→「うつの文化人類学」)。
序章 うつと自殺の医療人類学
うつ病の世界的流行/医療化批判/医療人類学の立場
から/うつ病の
拡散をどう捉えるか/病との格闘で生み出される新しい「自己」
相互作用の産物としてのうつ病/反科学・反精神医学という枠組みを
超えて
第1章 「意志的な死」を診断する―自殺の医療化と その攻防
日本人の文化的自殺観/自殺の増加とバイオロジカル
な病的自殺/病
的自殺を診断するバイオロジカルな自殺モデル/バイオロジカル
な自殺モデルが破綻するとき——覚悟の自殺/「意志的な死」をめぐ
る精神医学的論争の歴史/魔術的思考 vs 科学者としての精神科医/バ
イオロジカル・オプティミズムの台頭と自由意志
第2章 気のやまい―前近代の鬱
稀な病/鬱の証/気の心理化/メランコリアから躁鬱
病へ/経験的言語からの断絶
第3章 「神経衰弱」盛衰史―「過労の病」はいかに 「人格の病」へとスティグマ化されたか
「過労の病」はいかに「人格の病」へとスティグマ化
されたか
「まじめな人がうつ病になる」という言説/「神経衰弱」の時代/も
うひとつの「過労の病」ー鬱病の台頭/「うつ病」の現在
第4章 「精神療法」と歴史的感受性―二〇世紀日本 のうつ病
精神療法の禁忌?/鬱の身体と治癒神話としてのメラ
ンコリー親和型
/患者の抵抗/歴史的感受性/身体的言語と回復のビジョン/社会変
動と「回復」
第5章 鬱、ジェンダー、回復1―男性と「諦観の哲 学」
鬱のジェンダー/男性のうつ病/社会と結びつくうつ
病/もうひとっ
の物語/自助グループでの語り/回復と「諦観」の哲学
第6章 鬱、ジェンダー、回復2―女性はうつ病をど のように経験してきたか
女性のうつ病/社会的・医療的認識/医師・患者関係
/回復と病の意
味をめぐって/鬱の脱ジェンダー化
第7章 「労働科学」の新たな展開―“ストレスの 病”と脆弱性再考
電通裁判/素因としての性格論/状況因の模索とメラ
ンコリー親和型
/実存的うつ病論/政策の転換とその余波/社会的言説のもたらす矛
盾/「労働科学」の新展開/「脆弱性」再考/ストレスの科学
第8章 自殺論―労働の病、レジリエンス、健康への 意志
自殺の流行/社会運動としての医療化/「社会化」さ
れた医療化の問
題点/「脆弱性」を相対化する/主体化へ向かうリワ—ク/「正常」
から「レジリエンス」へ/過労自殺のグローバル化/マス•スクリー
二ングと監視医療の台頭/健康への意志
第9章 ローカル・サイエンス、グローバル・サイエ ンス
「鬱のバイオロジー」の相対化/感情労働へのまなざし/口—カリテ
ィを超えて/うつ病の普遍性と多様性/ローカル•サイエンスからグ
口ーバル•サイエンスヘ/「うつ病」の盛衰
◎『うつの医療人類学』のコンテキスト
1)日本文化論としての「うつ」
2)近代社会における医療化と心理化——ソマタイゼーションの衰退
3)自殺理由の変遷
4)うつとジェンダー:かわりゆく女性のジェンダロールとうつ
5)自殺と過労:労働観と労務管理の日本的近代化
6)ローカル・バイオロジーあるいはローカル・メディシンとしての「うつ」
◎Depression in Japan : psychiatric cures for a society in distress, Princeton University Press c2012
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