熊野訳ヘーゲル『精神現象学』小見出し一覧
Hegel's Phenomenology of Spirit
☆熊野純彦訳の『精神現象学』 には、原著にはない訳者の小見出しがついている。これが、小見出しのない、なぐり書きのようなヘーゲルの原著を格段に読みやすくする。以下は、目次に収載 された小見出しをOCRで文字情報に変換したものである。変換ミスがあるが、おりおり修正していく予定である。まずは、この小見出しを、ざっとみて『精神現象学』の全体像をはやく掴んでほしい。
★ 精神現象学 / G.W.F. ヘーゲル著 ; 熊野純彦訳, 上,下. - 東京 : 筑摩書房 , 2018.12.,からの小見出しを引用する
The Preface | 序文 |
哲学書に「序文」は必要か? 哲学的体系 どうしの関係について/ 教養のはじまり は、実体的な生からの離脱にある/ 真理は学的な体系としてのみ実現される/ 直接 知の立場が、このことに反対している/ 精神の現況はどのようなものであり、哲学 になにが要求されているのか?/ 哲学に対するそのような要求の背後にあるもの/ 私たちの時代は誕生の時代である/ 登場してきたばかりの学には、避けがた<欠陥 がある/ 学の内容と形式をめぐるあらそい/形式主義の批判—すべての牛が黒く なる夜/ 真なるものは主体として把握され、表現されなければならない/ 実在と、 それをとらえる形式は不可分である/真なるものとは、自己展開してゆく全体であ る/ アリストテレスの「不動の動者」にことよせて/ 「主語ー述語」という命題形 式の不十分さについて/ 知はただ体系としてのみ現実的なものである/ 真なるもの は体系として現実的となるが、それは絶対的なものが精神だからである/ 絶対的に 他であるもののうちで純粋に自己を認識すること/ 精神の現象学は、学一般あるい は知の生成を叙述する/ 精神現象学の課題—特殊な個人から普遍的な個人への道 程/ 精神現象学が叙述するのは、世界精神が遍歴してきた形態のすべてである/ 熟 知されていることがらは、認識されたことがらではない/ 表象の分析ー~精神の生 は死に直面して、死を超える/ 古代における予備学のありかたは近代のそれとこと なっている/ 論理学と精神現象学との関係—後者があきらかにするのは意識の世 界性である/ 学の体系•第一部としての精神現象学の課題/意識の経験の学から思 弁的哲学としての論理学へ/ 精神の現象学はたんに否定的な道程であるか/真理と 非真理との関係について/ 歴史記述上の真理について/ 数学的な真理と哲学的な真 理/ 数学的な認識の欠陥について/ 数学の目的と素材—最と空間/ 純粋数学と応 用数学―あるいは時間について/ 数学的詔識と対照されるかぎりでの哲学的認識 について/ 哲学では、数学的方法はすでに時代おくれである/ ふたたび形式主義に ついて一ーその自然哲学を中心に/ 形式主義的な「構成」の例―医学理論その他 の場合/ カント的なt吾性の立場と学の立場との差異/ 「存在」と「思考」とが一致 することの意味/ ヌース、イデア、エイドス/ 存在するものはそれ自身において概 念であり、形式である/ 「序文」における断言が、べつの断言によって反駁される ことはない/ 哲学研究にさいして要求されることはなにか/ 詭弁的な思考のふたっ の側面(一)/ 詭弁的な思考のふたつの側面(::)/ 命題形式・再考/哲学的テクストが難解であるとされる理由/ 弁証法的な運動とその叙述/ 命題的形式と 弁証法的方式/ 哲学もまた修得されるべき一箇の仕事である/ いわゆる「健全な悟性」と「詩的」 な「哲学」/ 「健全な人間悟性」とその欺瞞/ 「学問に王道はない」ということ/ プ ラトン、アリストテレスの受容史にことよせて/ 「普遍性」の時代と、個人の役割 |
|
Introduction | はじめに[序論] |
「認識=道具/媒体」説とその困難/ 「認 識=道具/媒体」説の前提/ 絶対的なもの のみが真であり、真なるものだけが絶対的である/ 「現象する知」を叙述すること / 「自然的な意識」と「たましいの宿駅」/ 「懐疑」の道と「絶望」の途/ 進行の必 然性と、「規定された否定」/ 意識は自己自身を超越する/ 探究の困難—吟味の尺 度は存在するか/ 意識は或るものをじぶんから区別し、同時にこれに関係する/ 意 識はみずからのうちに尺度をそなえ、意識は自己自身を吟味する/ 知が変化すれば、 対象もまた変容する/ 弁証法的運動としての「経験」/ 意識に対して対象であるも のは、私たちに対しては生成である/ 意識の経験の学としての「精神の現象学」の 理念 |
|
A. Consciousness | I. Sense-Certainty, This, & Meaning | A.意識 I. 感覚的確信、これと、その意味 |
直接的な知とはなにか?/ 感覚的な確信の 農饒と貧困/ 直接性のなかの媒介— 「この者」と「このもの」の区別/ 「このもの」とはなにか一ー第一に「いま」をめ ぐって/ 「このもの」とはなにかーー第二に「ここ」について/ 「このもの」から 「この者」への移行/ 「この者」である〈私〉をめぐる経験と、その弁証法/ 「この もの」と「この者」の全体という場面への移行/ 直接的で全体的な確信の真理を 「指示」することへ/ 直接的な「指示」とその弁証法/ 「いま」とは多くの「いま」 である/ 「ここ」もまた多くの「ここ」である/ 感覚的確信の総括1バッカス の秘儀/ 感覚的確信の総括2—意識の普遍性と言語の普遍性 |
II. Perception, Thing, & Deceptiveness | II. 知覚、物とその錯覚 |
感覚的確信から知覚の真理へ/ 知覚の対象 とは「多くの性質をそなえた事物」であ る/ 「このもの」とは「このものではないもの」である一「止揚」の意味/ 事物 であることの二面性—肯定的な「また」と否定的な「一」/ 「事物」の概念と諸契 機/知覚にさいしての意識の第一のふるまい/ 知覚する意識が経験する第一の弁証 法/ 第一の弁証法から第二の弁証法へ/ 知覚する意識が経験する第=の弁証法/ 第 二の弁証法の反転一「また」と「かぎりにおいて」/ 「私たち」の立場から意識の 経験を比較すること/ ひとつの事物と他の事物一対自と対他/ 本質的な性質と非本質的な性状という区別/ 事物は他のものとの関係においてのみ自立的に存在す る / 個別性と普遍性の弁証法/総括—悟性の領圏へ |
|
III. Force & Understanding | III. 力とその理解 |
知鎚から悟性へ—無条件的に普遍的なもの
の生成/ 「無条件的に普遍的なもの」 という結果の二面性/ 「力」の概念/ 「誘発するもの」と「誘発されるもの」/ 力の たわむれ/ 内容と形式の区別とその解消/ 力の概念と「内なるもの」/ 「内なるも の」と「現象」/ 「超感覚的なもの」と現象/ 現象の真のありかたは「法則」である / 限定された法則と普遍的な法則/さまざまな力と法則/ 「説明」とはなにか/ 「第 二次の法則」と内的な区別/ 顛倒された世界/ 顛倒した世界とは現象に対する「自 体」ではない/ 「内的な区別」と「無限性」/ 「無限性」と「法則」/ 「絶対的概念」 としての「単純な無限性」/ 「自己意識」の段階への移行/ 内的な区別、無限性、自 己意識 |
|
B. Self-Consciousness | IV. True Nature of Self-Certainty | B. 自己意識 IV. 自己確信の真理(120) |
自己自身にかんする確信の成立/ 自己意識 とは真理の故郷である一ー先行形態との 関係/ 欲望としての自己意識の対象は生命あるものである/ 円環を形成する生命の 本質/ 生命と生命あるもの一一円環としての生命/ 類としての生命と、自己意識の 登場/ 自己意識が満足に到達するのは他の自己意識においてのみである/ 自己意識 の概念/ 精神の概念―「私たちである私、私である私たち」 |
A. Lordship & Bondage | A.支配と隷属 |
自己意識は他の自己意識に対して、承認さ
れたものとして存在している/ 承認の概 念とその運動1/ 承認の概念とその運動2/ 自己意識の確信とその相互性/ 承認を めぐる生死を賭した闘争/ 「主人」と「奴隷」の成立/ 支配と隷属1一「主人」 であること/ 支配と隷属2不均等な承眩の成立/ 支配と隷属3反転する関 係/ 支配と隷属4「奴隷」であること/ 支配と隷属5「労働」という契機 をめぐって/ 「死」という絶対的主人一「恐怖」と「形成」 |
|
B. Unhappy Consciousness | B.
自己意識の自由——ストア主義、懐疑主義、不幸な意識 |
主人と奴隷の対立から、ストア主義への移
行/ 「ストア主義」の原理—主人と奴 隷からの解放/ ストア主義の限界—抽象的な自由/ストア主義を実現するものと しての懐疑主義/ 懐疑主義における弁証法的なもの/ 懐疑主義とこころの平静/ 「不幸な意識」への移りゆき/ 「不変的なもの」と「可変的なもの」との対立/ 勝利 なきたたかいとしての不幸な意識/ 不幸な意識がたどる運動の概観/ 不幸な意識の「経験」と「私たち」の視点/ 「受肉」の意味とイエスの死/ 可変的なものと 不変的 なものが「ひとつ」であること/ 純粋意識としての非本質的意識/ 不幸な意識にお ける欲望と労働ならびに享受の次元/ 不変的な意識の犠牲と、個別的な意識の感謝 / 不幸な意識における第二の関係から第三の関係への移行/ 意識の不幸と個別性の 廃絶/ 不幸な意識における個別性の断念—喜捨と苦行/ 「自己意識」の段階から 「理性」の段階への移行 |
|
C. (AA) Reason | C. (AA) 理性 | 「不幸な意識」から「理性」ヘ一「媒語」
としての意識/ 理性の立場と「観念論」 の成立/ 「断言する」観念論/ 「カテゴリー」と悪しき観念論/ ひとつの純粋なカテ ゴリーと、多くのカテゴリー/ 空虚な観念論はむしろ絶対的な経験論である |
|
V. Certainty
& Truth of Reason 確実性と理性=合理性の真理 |
A. Observation as Reason | A.観察する理性 |
観察する理性への移行―理性とは世界であ
り、世界は理性的である/ 観察する理 性とその運動 【自然の観察】 記述すること一般について/ 諮識の「標識」に ついて/ 観察と記述の限界/ 「標識」の観察から法則の概念へ/ 法則の概念と「経 験」/ 「実験」は「真理」を確証するか?/ 「実験」とはなにか?/ 物質あるいは 「素」から「有機的なもの」へ/ 有機的なものと非有機的なもの/ カントの「自然 目的」について/ 目的論的関係をめぐって/ 目的論と自己意識/ 有機的な事物の合 目的性と偶然性/ はたらきとしての有機的なもの/ 「内なるもの」と「外なるもの」 の登場/ 「内なるもの」にかんして一ー感受性、反応性、再生/ 神経システム、筋 肉システム、内臓システム/ 有機体をめぐる諸法則の絡みあいについて/ 諸法則の 絡みあいの実相—同義反復としての諸法則/ 法則定立という空虚なたわむれ/ 「内なるもの」、内なるもの自身の「外なるもの」/ 内なるものと「形態」としての 外なるものについて/ 「法則」という表象と思想について/ 質的区別の盪的区別ヘ の転換/ 感覚的なものと有機的なもの、知覚されたものと悟性が把捉するものとの 取りかえ/ 外なるものにとっての内なるものと、外なるものとの関係について/ 内 なるものの外なるもの、外なるものの内なるもの/ 有機的なものにとっての数と量 —比重について/ 非有機的なものとしての非有機的なもの/ 有機的なものと非有 機的なものの比較から生じる帰結/ 有機的なものにおける類、種、個別性/ 有機的 なものにおける「推論」の成立/ 普遍的な生命をは偶然的理性である/ 有機的なも のを観察する理性の限界 【b 自己意識をその純粋なありかたにおいて、また外 的現実への関係で観察すること論理学的法則と心理学的法則】 思考の法則の二 面性—その抽象性と実在性/ 思考の法則における「形式」と「内容」/ 観察する 意識から行為する意識へ/ 心理学的法則について/ 法則における個体性と普遍性/ 環境、状況、習慣、習俗、宗教等々が個体に与える「影響」なるもの/ 心理学 的法 則の崩壊 【c 自己意識がみずからの直接的な現実に対して有する関係の考察 人相術と頭蓋論】 心理学的観察から人相術へ/ 身体が与える形態ー一「身体」と 「相貌」について/ 語る唇、はたらく手/人相術と占星術、手相占い/ とくに「手」 について_手とは精神の器官である(アリストテレス)/ 手、口、声、書記をめ ぐって/ 「なすこと」(行為)と「外化」(表情)/ 「外化」としての相貌から「内な るもの」を表現する行為へ/ 人相術はじっさいにはなに全問題としているか/ 人相 術の「法則」なるものとはなにか/ 「思いなされたこと」から「なされたこと」へ / 「頭蓋論」へと移行するにあたっての予備的考察/ ふるまいと器官との対応_ 行為の器官、生殖器官、プラトンの肝臓/ 神経系、脳髄、頭蓋/精神の座はどこに あるか_脳髄ならびに脊髄と、頭蓋ならびに脊柱/ 脳髄と頭蓋の関係、頭蓋と自 己意識との関係/ 脳髄と頭蓋との関係をめぐるさまざまな語られかたについて/ 観 察する意識にとっての課題の限定/頭蓋骨はなにも語るものではない/ 頭蓋骨はな にも感じるものではない/ 頭蓋論の本来的な欠陥をめぐって/ なお残される、しか し空虚な可能性_頭蓋論の拡大?/ ひとつの空虚な逃げ道_「素質」とその 「実現」をめぐって/ 素質も頭蓋も精神の活動とはかかわりがない/ 「救いの戸口に 立つものこそが、もっとも遺棄される」/ 観察する理性の回顧ー)_非有機的な自 然と有機的な自然/ 観察する理性の回顧口—ー一思考の法則から人相術へ/ 観察する 理性の回顧曰_頭蓋論の到達点「精神とは骨である」/ 頭蓋論と「不幸な意識」 との関係_「事物」と「カテゴリー」/ 観察する理性の帰結_生殖器官と排泄 器官 |
B. Realization of rational self-consciousness | B.合理的な自己意識の実現 |
自己意識としての理性の現段階/ 観察する 理性と活動する理性_あるいは意識と 自己意識/ 習俗、人倫、人倫的実体/各人は意識的ー無意識的に万人の労働を遂 行する/ 自由な民族の幸福な共同体とその限界/ 自己意識と世界との関係-実践 的な意識について/ 人倫的な世界の経験_人倫性と道徳性/ 世界のなかで活動す る理性の諸段階 【a 快楽と必然性】 「はじめに行為があった」(ゲーテ)/ 自己 意識と快楽と、その享受/ 必然性あるいは運命(Notwendigkeit)のありか/ 快楽 に生きる意識の没落/ 移行の意味と自己意識のあらたな形態 【b 心情の法則と うぬぽれの狂気】 心情の内なる法則へ/ 心情の法則と現実の法則/ 心情の法則に よる個体性と必然性の統一/ 心情の法則の実現とその解消/実現された現実が心情 の法則を解体する/ 心情の法則をめぐる知と不知/ 心情の法則の錯乱(Verrucktheit) と狂気(Wahnsinn)/ うぬぼれの錯乱と、心情の顛倒/ 心情の法則と「おお やけの秩序offentliche Ordnung」/ 自他の個別性の解消と「世のなりゆきWeltlauf 」の成立 【c 徳と世のなりゆき】 先行する形態とあらたな形態との差異に ついて/ 徳のいきつくところとはなにか/ 徳と世のなりゆきとのたたかい/ 徳にあって、善はなお潜在的で普遍的なものである/ 徳の験士と世のなりゆきとのあ いだ の奇妙なたたかい/ 世のなりゆきの強さと確実さ/ 世のなりゆきの勝利と、徳の敗 北/ 徳と世のなりゆきの対立から帰結するもの |
|
C. Individuality | C.個的性 |
ここで理性が立つにいたった立場はどのよ
うなものか?/ 自己意識とカテゴリー、 円環としての行為 【a 精神的な動物の国と欺眺、あるいはことがらそのもの】 根源的に規定された自然/ 行為における、目的、手段、対象について/ 素質(根源 的自然)と行為と目的との円環/ 「仕事」の成立と才能の比較―あるいは、個体 性の自足/ 根源的自然における限定性と普遍性/ 仕事における行為と存在の対立、 概念と実在性の対立/ 仕事における偶然性の契機とその克服/ 行為と存在の統一と 「ことがらそのもの」の成立/ 現実と個体性の統一としての「ことがらそのもの」/ 普遍的なものとしての「ことがらそのもの」/ 「ことがらそのもの」における意識の 誠実と不実/意 識の誠実さはその不実にほかならない/ 「ことがらそのもの」にお ける意識のからくり/ 欺きの具体相—「制作」と「批評」という欺晩/ あらゆる ひとびとの、またおのおののひとの行為である「ことがらそのもの」 【b 法則を 定立する理性】 「ことがらそのもの」から「人倫的実体」へ/ 人倫的実体、自己意 識、〔道徳〕法則/ 法則の例(→一ー「だれもが真実を語るべきである」/ 法則の例に) ー「きみの隣人を君自身のように愛せ」/ 法則を定立する理性から、法則を吟味 する理性への移行 【c 法則を吟味する理性】 法則を定立する理性と吟味する理 性とのことなり/ 法則の吟味の実例—「所有」と「非所有」/ 所有と非所有をめ ぐる検討の総括—吟味の基準は失効する/ 立法的理性、査法的理性、ことがらそ のもの/ 定立する理性と吟味する理性の統一と「精神的実在」の成立/ 立法し、査 法する理性から、ほんらいの「人倫的」実体への移行 |
|
(BB). Spirit | (BB).精神 | ||
VI. Spirit | VI. 精神(VI Der
Geist) |
理性から精神への移行と、その条件/ 万人 の、呼び人の「仕事」としての人倫的実体 / これまでの意識の諸形態と、人倫的な生としての精神/ 「精神」章は以下、どのように展開するか |
|
A. Objective Spirit: the Ethical order | A.真の精神——共同体精神(300) |
意識をつうじた、人倫的実体の分裂―「人
間の掟」と「神々の掟」 【a 人倫的 世界人間の掟と神々の掟、男性と女性】 「人間の掟」について—ポリスの法と 秩序/ 「神々の掟」(―)--国家共同体と家族共同体/ 「神々の掟」に←一家族がかか わるのは生者ではなく死者である/ 「神々の掟」曰—死者を葬る義務について/ ふたつの掟の区別と連関/ 国家共同体とその部分—戦争と「地下の国」/ 家族が ふくむ諸関係、とりわけ夫婦と親子の関係について/ 家族、とりわけ兄妹というと くべつな関係について/ 両性としてあらわれる家族の人倫的意義について/ 理性の 先行する形態との関係について/ 復讐の生起ー一人倫的共同体における均衡とその 攪乱/男性と女性の結合—婚姻の意味 【b 人倫的行為人間の知と神々の知、 責めと運命】 「なされたこと」と「運命」の絡みあいへ/ 人倫的意識において義務 の衝突はなく、すべては決定されている/ 人倫的意識における掟と威力の対立/ 知 と不知との対立、意識の権利と実体の正義/ 「なされたこと」と「罪責」/ オイデイ プスの物語の場合/ まちぶせする正義と罪責/ 悲劇にみられる人倫的心情のゆくえ / 国家の権力をめぐる同胞の争い/ 冥府の掟と忘却の河/ 女性は共同体にとって永 遠のイロニーである/ 自然的人倫〔ギリシア世界〕の没落と法状態〔ローマ世界〕 の成立 【C 法状態】 人倫的世界と「法状態」との差異について/ 「法状態」と ストア主義ならびに懐疑主義との関係について/ 「世界の主人」たる皇帝—「法 状態」と「不幸な意識」との呼応 |
|
B. Culture & civilization | B.疎外された精神——教養(330) |
人倫的世界、法的世界、教養の世界/ 疎外 とは自己と実在がたがいに疎遠となることである/ じぶんにとって疎遠となった精神は二重の世界を形成する |
|
I. World of spirit in self-estrangement | I. 疎外され
た精神の世界(333) |
【a
教養とその現実の国】 精神は疎外によって現実的世界を獲得する/ Bildung (教養)、Espece (流儀)、Art(種、しかた)/ 個体は教養を積み、みずからを形成 することで世界を獲得する/ 当面の考察の課題ー一疎外こそが全体を可能とする/ 四大への展開—自然的実在と精神的実在の類比について/ 考察の対象と手順につ いて/ 「可とされるもの」と「否とされるもの」、「国権」と「財富」/ 自己意識こそ が威力と実在を判断する/ 自己意識による判断の基準について/ 国権と財富に対す る「可否」の判断/ じぶんとの同等性と不等性という規準/ 「高貴な意識」と「下 賤な意識」/ 分離したふたつの判断はひとつの推論へと転化する/ 「高貴な意識」と 国権との関係について/ 廷臣による忠言、三部会、革命前夜/ 〈私〉がそこに現に 存在することとしてのことば/ 媒語=中間項としてのことばと、推理的連結の構造 をめぐって/ 国権と高貴な意識という両極と、その不完全さ/ 奉仕するヒロイズム から追従するヒロイズムヘの転化—絶対君主制/ 国権はかくてそれじしん財富ヘと移行する/ 「高貴な意識」は「下賤な意識」となりはてる/ 引き裂かれた自己 意 識一「ラモーの甥」をめぐって/ 恩恵を与えるものと与えられるもの一ー財富を めぐる賤しき弁証法/ 分裂することばと、分裂する人格/絶対的に顛倒した精神と しての「教養」の世界/ 「音楽家」の語りと「哲学者」の語り(「ラモーの甥」か ら)/ 「樽のなかのデイオゲネス」とルソーの「自然状態」/ 「純粋な洞察」と「信 仰」の立場の意味/ 自己の空しさと事物の虚しさ―「純粋な〈私〉」の登場 【b 信仰と純粋な洞察】 純粋な意識と現実的な意識/ 純粋意識と「信仰」の立場/ 疎 遠になったものとしての純粋意識/ 信仰と純粋な洞察/ 信仰の世界の分化一「三 位一体」論瞥見/ 信仰する意識にとっての現実と「内なるもの」/ 純粋な洞察にと っては、すべてが概念である/ 「教養」の世界と「精神的な動物の国」 |
|
II. Enlightenment | II.啓蒙 | 純粋な洞察と、その対象である信仰/ 信仰 に対立するものとしての純粋な洞察 【a 啓蒙と迷信とのたたかい】 純粋な洞察というあらたな次元/ 一般大衆、僧侶 階級、専制政治/ 洞察と信仰のひとしさと、純粋な洞察の拡散/ 洞察の暴力的なた たかい/ 純粋な洞察のたたかいとはじぶん自身とのたたかいである/ 啓蒙の信仰批 判と、信仰の立場/信仰を批判する啓蒙の自己矛盾/ 純粋な洞察が信仰にかかわる 第一のしかた一一偶像の暴露/ 第二の契機一一信仰と啓蒙は相互に伝染する/ 第三 の側面―信仰における行為への洞察の関係/ 啓蒙の真理の第一の契機/啓蒙の真 理の第二の契機/ 啓蒙の真理の第三の契機/有用性の次元—自体的存在と対他的 存在/ 啓蒙の肯定的真理/ 信仰の神的権利と、啓蒙の人間的権利/ 信仰とおなじく 啓蒙もじぶん自身については啓蒙されていない/ 啓蒙の主張—信仰が崇拝してい るのは、ただの木であり石である/ 信仰する意識における知と行為と所有—喜捨 と禁欲の欺腸について/ 信仰の有する二重の眼、二重の耳、二重の舌とことば/ 信・ 仰する意識と啓蒙とは同一の意識である 【b 啓蒙の真理】 純粋な洞察、純粋な 思考、純粋な事物/ 純粋な実在、純粋な思考、純粋な物質/ 有用性の次元へ/ 啓蒙 という段階の回顧と展望 |
|
III. Absolute Freedom & Terror | III.絶対の自由と死の恐怖(398) |
啓蒙と絶対的自由/ 一般意志と絶対的自由 / 個別と一致する普遍という名のテロリ ズム/ むぞうさな恐怖政治の登場—「キャベツの玉」と「水のひと飲み」/ 革命 政府とは党派であり、その主要な行為はテロルである/ 絶対的自由のゆくえと、純 粋な知のありか/ 絶対的自由から道徳性への移行 |
|
C. Morality | a. The Moral View of the World | C.道徳(407) | 人倫的世界、教養と信仰、自己意識の知そ
のものとしての道徳性 【a 道徳的世 界観】 自己意識にとって義務が絶対的実在であり、自然がその他なるものである/ 道徳的意識と義務、あるいは倫理と自然/ カントの要請論をめぐって—道徳性 と自然=幸福の統ーは不可避である/ 第二の要請—内なる自然=感性と道徳性の 調和/ 要請論・再考―純粋義務の単一性と、さまざまな義務の複数性/ あらたな 要請—純粋義務と限定された複数の義務/ その前提と帰結一―·行為の個別性と幸 福の偶然性/ 道徳的世界観の完結と、道徳的意識/道徳的世界観の総括とその帰結 / 「置きかえ」への移行 |
b. Dissemblance | 【b
置きかえ】 道徳的世界観とは「矛盾の巣窟」(カン ト)である/ 第一要請·再考/ 個別的行為と目的全体—自然法則と道徳法則/最 高善とその置きかえ/ 道徳性は一箇の中間状態であり、中間状態とはひとつの非道 徳性である/ 道徳的判断の内容はたんなる嫉妬であり、道徳性の偽装である/ 第三 要請・再論/純粋な道徳性とは一箇の仮象にほかならない/ 道徳的世界観の解体と 意識の遁走/道徳的世界観から良心論への移行 |
||
c. Conscience: The “Beautiful Soul”:Evil and the Forgiveness of it | 良心、美しい魂、悪とその赦し |
【c 良心美しきたましい、悪
とその赦し】 道徳的世界観の帰結—道徳性のアンチノミーとその解消/ 良心と いう自己と、これまでの自己との比較/ 行為するものとしての良じ/ 良心にとって の実在はじぶん自身にかんする確信にほかならない/ 良心という知における対他存 在の側面/ 良心における承認の契機について/ 精神の領圏における「良心」の位置 / 行為にさいしての良心に帰属する知について/ 良心の自己確信とその恣意性につ いて/ 純粋義務における「対自」と「対他」/ 義務の対立を回避するこころみとそ の挫折/ 義務にかんする知としての良心の至上権/ 良心の欺腑ー一良心は行為し、 不等性をもたらし、かつ断言する/ 良心とは承認された存在であり、承認はことば にもとづいている/ ことばとは精神の現存在であり、他者に対して存在する自己意 識である/ 良心はことばをつうじて、みずからの確信こそが義務であると断言する / 良心が語るとき、内面の意図は廃棄されている/道徳的天才としての良心/ 良心、 神、教団のことば/〈私〉=〈私〉という抽象と「美しいたましい」/ 行為する良 心における個別性と普遍性/ 行為する良心と、その悪/普遍的意識もまた特殊な法 則に依拠している/ 行為する意識と判断する意識は同罪である/ 判断する意識の欺 腑と偽善/行為する意識は、評価する意識に和解を期待する/ 評価する「美しいた ましい」は矛盾のなかで解体する/ 「赦し」と「相互承認」の成立—絶対的精神 の形成へ/ 和解する「然り」の登場と宗教への移行 |
|
(CC). Religion | 意識、自己意識、理性ならびに精神につい
て/ 人倫的世界、啓蒙、道徳性/精神の これまでの諸形態と、宗教という段階(一)/ 精神のこれまでの諸形態と、宗教という 段階に)/ 宗教とは精神が完成されたありかたである/ 宗教はこれまでの諸形態にと ってその実体である/ 宗教の段階の区分—自然宗教、芸術宗教、啓示宗教 |
||
VII. Religion in General | A. Natural Religion | 意識、自己意識、精神と、宗教の諸形態 【a ひかり】 精神の本質という暗夜、 「純粋な〈私〉」/ 光の存在(Lichtwesen) とはなにか 【b 植物と動物】 植物の 生と動物の生、トーテムと民族精神 【C 工匠】 ビラミッドとオベリスクにつ いて/ エジプト的な精神のさらなる課題について/ 植物的生命、神殿の装飾/ スフ ィンクスの謎 |
|
B. Religion as Art | 芸術としての宗教 |
「工匠」から「精神的に労働する者」へ
—エジプトからギリシアヘ/ 人倫的民族 の宗教とその特徴/ 芸術宗教という割期と「純粋形相」 【a 抽象的な芸術作品】 作品、精神、自己意識/ エジプトとギリシアの対比ーー建築について/ ギリシアの 神殿に住まう者たち/ 神々と芸術家と作品/ 芸術家は大衆との関係においてなにを 経験するか/ 彫刻からことばへ/ 賛歌のことばについて/ だれひとり知ることもな く、いつからか現われていた神々のおきて/ 彫像と賛歌と祭祀について/ 「祭祀」 と「浄化」/ 祭祀における行為のありかたについて/ 犠牲と供犠/ 神々による享受 と人間たちによる享受 【b 生きた芸術作品】 光の宗教と芸術宗教,再論/ 祭祀 における女性的原理と男性的原理/ 祭祀における享受が実在をあらわにする/ 美し い身体と競技一一精神的芸術作品へ 【C 精神的な芸術作品】 パンテオン、さま ざまな民族とひとつの国家/ 民族精神の集合と神的な実在/ 叙事詩(1)—詩人、 神々、英雄/ 叙事詩2ー神々と人間たち/ 叙事詩3ー一神々のたそがれ/ 悲劇(1) ―その一般的な規定について/ 悲劇2一神々、英雄、観客/ 悲劇3——家族と 国家、知と不知/ 悲劇4アポロンと復警の女神、忘却の河/ 悲劇5知の欺 眺と行為の凶兆/ 悲劇における最高神ゼウスの意味/ 悲劇から喜劇へ/ 喜劇1一 仮面をはずす俳優たち/ 喜劇2ー自然的なものと人倫的なもの/ 喜劇3ーー理性 的な思考の役割/芸術宗教の完成と啓示宗教への移行 |
|
C. Revealed Religion | 啓示宗教 |
芸術的宗教の到達点について/ 命題「自己 こそが絶対的な実在である」とその換位 / 啓示宗教の基盤としての「法状態」について/ 喪われたムーサとその帰結/啓示 宗教が出現する条件としての芸術宗教/ 啓示宗教の信仰箇条一ーマリアの処女懐胎 /啓示宗教に先行する狂信の闇夜について/ 神が人間となること―イエス=キ リストの意味/ 絶対的宗教における「啓示」をめぐって/ キリスト論—父と子の 関係、あるいは「神は存在する」ことについてグイエスの生と死、その復活—原 始キリスト教団の成立をめぐって/ 表象としての啓示宗教とその限界/ キリスト教 史の一断面をめぐって/ 不幸な意識、信仰する意識、啓示宗教の教団/ 啓示宗教に おける純粋思考と、区別なき区別/ 「表象」という教団的形式と、その限界/ 啓示 宗教における「表象」の立場の権利について/ 啓示宗教における表象の展開1ーー「世界の創造」について/ 啓示宗教における表象の展開口~「楽園の喪失」に つ いて/ 啓示宗教における表象の展開曰—一神の息子、ルシフェルとイエス/ 啓示宗 教における表象の展開四ー一善悪のはざまの人間/ 啓示宗教における表象の展開国 —神的実在の自己疎外、神の死と復活/ 啓示宗教における表象の展開伏トー漁全括、 神の「受肉」とその意味/ 啓示宗教たるキリスト教の信仰箇条(-}--「洗礼」につ いて/ 啓示宗教たるキリスト教の信仰箇条コ—-「ミサ」について/ 神の死と復活、 あるいは「神自身が死んでいる」/ 啓示宗教における「自己を確信する精神」の意 味/ 啓示宗教の限界—表象の立場の臨界 |
|
(DD). Absolute Knowledge | |||
VIII.Absolute Knowledge | VIII
Das absolute Wissen |
啓示宗教の精神とその克服/回顧(1)—
意識の諸段階をめぐって/ ひとつの頂点 ー「頭蓋論」をめぐって/ 回顧2「啓蒙」と「有用性」の視点/もうひとつ の頂点—道徳的自己意識をめぐって/ 精神の「和解」と「承認」の場面/和解と 承認の二側面/ 回顧3「美しいたましい」の位爵/最後の頂点—「良心」と 「宗教」をめぐって/ 「絶対知」という境位をめぐって/ 精神、自己、時間をめぐっ て/ 経験のうちにあるものが知られるものである/ 精神の労働、現実の歴史、近代 哲学史/ 「私たち」の立場をめぐって/ 前途瞥見(1)—論理学と思弁哲学について / 前途瞥見2ーー自然哲学について/ 回顧一「精神現象学」の理念・ふたたび |
|
出典関係 |
☆︎ 【ヘーゲルリンク】
リ ンク
文 献
そ の他の情報
CC
Copyleft,
CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099