はじめによんでください

研究におけるギャップ=スポッティング

gap-spotting in research

池田光穂

☆社会のなかで研究者が増大すると、「研究パラダイムの共有」という事柄がおこる。つまり、研究している研究者の頭のなかが、規格化され、研究論題の探求がパズル解きになる傾向である(→「トマス・クーン科学革命の構造』」)。そこでの研究者の問題探索は、先行研究の中に各種のギャップを見出し、その穴埋めをするという傾向が増大する。このような、ギャプの穴埋めという「知的行動」をギャップ・スポッテング(gap-spotting)という。

★アルベッソンとサンドバーグの主張をまとめてみよう

1)社会科学の論文は総じてつまんない

2)その理由はいろいろ考えられる。論文を書いて業績をあげ、就職したり、職位をあげたりしなればならない、研究者の側の事情である。

3)だが、そのような「つまんない」状況を放置するわけにはいかないとアルベッソンとサンドバーグは考える。

4)なぜなら、そのような「つまんない」状況は、後進の研究者に対して魅力を感じないものにさせると同時に、その研究分野の衰退を生むからである。

5)「つまんない」状況の原因を考えてみよう。その大きな理由は、パラダイムの刷新に向かうのではなく、パラダイムの内部のまだ、十分に研究がされない部分(ギャップ)を埋めよう(スポッテング)とするのが「定番化」しているのが原因だ。

6)ギャップ・スポッテングは、論文を書く側には、無難で査読を通るためには、不可欠な手段にも思える。しかし、最大の問題は、パラダイム内部を埋める、ギャップ・スポッテングは、その研究分野のイノベーションを生まないからだ。

7)パラダイム変革や分野のイノベーションをめざす改善(カイゼン)のための処方を、アルベッソンとサンドバーグは「問題化」という術語で表現する。

8)より具体的には、社会科学の方法論を導くために、「問題化」の刷新が重要であると考えるのである。それを、アルベッソンとサンドバーグは「面白いリサーチ・クエスチョン」を構築することを提案する。

9)「面白いリサーチ・クエスチョン」を構築することが、それに連鎖して、方法論の新たな模索、解決への道のり、社会との関わりにおける、研究者の役割の再考に繋がると考えるのである。そのような研究者の姿勢を、アルベッソンとサンドバーグ(2023:201)は「自省的革新者(reflexive inventor)」と呼ぶ。

Here are some ways to identify research gaps:

1. Look at published literature: Published literature can provide inspiration.
2. Use digital tools: Digital tools can help you find popular topics or research papers that are cited the most.
3. Check journal websites: You can check the websites of influential journals.
4. Analyze systematic literature reviews: Systematic reviews summarize information, answer research questions, and identify gaps in the literature.
5. Consider the population: A population gap occurs when a population is not adequately represented in prior research.
6. Look for disagreement: A disagreement gap occurs when there are conflicting or inconsistent findings in the literature.
7. Consider the empirical evidence: An empirical gap occurs when there is a lack of sufficient empirical evidence or studies in a specific area.
8. Consider the knowledge: A knowledge gap occurs when there is a lack of awareness of theories and literature from related studies.

Identifying research gaps is important because it helps inform researchers, policy makers, and funders on what questions need to be addressed and what types of studies are needed.
研究ギャップを特定する方法をいくつか紹介しよう:

1. 発表された文献を見る: 出版された文献はインスピレーションを与えてくれる。
2. デジタルツールを使う: デジタルツールを使えば、人気のあるトピックや、最も引用されている研究論文を見つけることができる。
3. ジャーナルのウェブサイトをチェックする:影響力のあるジャーナルのウェブサイトをチェックできる。
4. 系統的な文献レビューを分析する: システマティック・レビューは、情報を要約し、研究上の疑問に答え、文献のギャップを明らかにする。
5. 母集団を考慮する: 母集団ギャップとは、ある母集団が先行研究で十分に代表されていない場合に生じる。
6. 意見の相違を探す: 不一致のギャップは、文献に矛盾や一貫性のない知見がある場合に生じる。
7. 経験的証拠を検討する: 経験的なギャップは、特定の分野において十分な経験的証拠や研究がない場合に生じる。
8. 知識を考える: 知識のギャップは、関連する研究の理論や文献に対する認識が不足している場合に生じる。

研究ギャップを特定することは、研究者、政策立案者、資金提供者に、どのような問題に取り組む必要があるのか、どのような種類の研究が必要なのかを知らせるのに役立つため、重要である。
Constructing research questions : doing interesting research, Mats Alvesson & Jörgen Sandberg, SAGE 2013
About the authors vi
Preface vii
1 Research questions: a core ingredient in developing interesting theories 1
2 The context of constructing and formulating research questions 10
3 Gap-spotting: the prevalent way of constructing research questions in social science 24
4 A critical evaluation of gap-spotting research: does it lead to interesting theories? 38
5 Problematization as a methodology for generating research questions 47
6 Applying the problematization methodology in practice 71
7 Why does gap-spotting dominate when it reduces the chance to create interesting theories? 92
8 Constructing interesting research questions: problematization and beyond 111
Appendices 124
References 129
Index 139

















リ ンク

文 献

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