大学教授になるとはどういうことなのか?
How/Why/What do you become a university professor?
大
学の先生になるには、どうすればよいか?:進路講座(26分)
発行人:池田光穂
これからみなさんに対して、大学教授(=大学の先生)になるには、ということについて講義(レクチャー)します。これまで中学生に対して、そし て高校生に対して「大学の先生になるには?(中学生編)」「大学教授になるには?(高校生編)」をレクチャーしてきました。これから、年齢に関 係なく、小学生にも、そして、大学の外側にいる一般市民の人たちに、大学教授にな るとはどういうことなのかについてお話します。
これからみなさんに対して、大学教授(=大 学の先生)になるには、ということについて講義(レクチャー)します。レクチャーのあらすじは次のとお りです。 1.大学の先生とはなにか? 2.大学とはそもそもどういうところか? 3.大学の先生の仕事とはどういうものか? 4.そして大学の先生になるにはなにをどのようにすればよいのか? という4つの柱からなります。 |
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文化人類学者クリフォード・ギ アーツ(1926-2006)は、大学の教授になるために探求している高校生たちに、ここで考える視点として重要な名言を私たちにもたらしまし た。それはこういうことです。「ある学問について知りたければ、その分野の学者がどういうことをやっているのか調べればよい」というものです。すなわち、 みなさんに、なりたい職業というものがあるとすれば、その職業に従事している人たちの活動を直接知ればなんらかの手がかりに見つかるかもしれないというこ とです。 | |
残念なことに、すでに亡くなっていますが、クリフォード・ギアーツさんという先生は次のよう
なお姿の方でした。 ・ちなみに私の職業だった「文化人類学者とは何をしているのか」の 解説! |
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このギアーツの格言を守るとすれば、もしみなさんが生物学という学問について知りたければ、次のようなことをやる必要があります。 1.具体的な生物学者(すでに死んだ/もう引退した/現在活躍中の/学者の卵の/生物学を学んでいる学生など)を捜し出す。 2.その生物学者(人物)が、いったいどんな研究をやっているのかについて調べる。 3.できれば、その先生のところに会える約束をとりつけることができるならば行ってみる。いまだったら、電子メールなどを書いてみ て、実際 に会えるかどうか試してみる。ただし、その時にはグループで訪問したり、きちんと面会時間を約束し、面接場の最低のルールを守らないとならないことは言う までもない。 4.他の生物学者を捜し出す(→1にもどる) 5.すでに物故(=亡くなっている)した研究者なら、その先生の本や伝記などを読んで、バーチャル(仮想的に)にその学者のやって いること を想像上でイメージを組み立てるという方法もある。ただし、やはり実際に活躍している人と出会うことは重要だ。 |
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細胞についての勉強を思いだしてほしい。学者の人たちもまた、自分たち の研究対象を表現する方法や、研究対象を抽象化するために、さまざまな学 問上の手がかりや装置あるいはイメージを使っていることがわかるはずだ。 | |
もし、言語学について知りたければ、言語学者のところにいって話を聞く ということは重要である。 | |
次のスライドは、近代言語学の父、あるいはその開拓者フェルディナン・ ド・ソシュール(1857-1913)の横顔と、この先生が授業中に黒板 に書いた内容が、のちにイラストレーターの助けを借りて再現されたものがある。近代言語学の歴史的発展を知る際に、ソシュールの理論と、この先生が学生た ちにどんな授業をおこなったのかに知ることは、言語学(すくなくともソシュール派のそれ)を知ることにつながる。 | |
ここで用語法のチェックをしよう。大学の先生(=大学教授)は、学者としばしば言われるけど、両者はおなじ意味なのですか? 私の見解ですが(ということは異論を持つ人も世の中に多くいるが)「学者と大学の先生は違う者である」私は理解しています。 私がここで言う学者とは、学識ある人すなわち、知恵を持つ人のことで、私にとっては、多くの大学の先生は、そのような学者になろう と日々努 力しています。 つまり、大学の教授(=大学の先生)には、なろうと思えばできないことはないですが、真の学者になることはなかなか難しい、つまり ハードル が高いと思います。 もちろん、学者のなかの学者と思われているノーベル賞受賞者ですが、そのような人たちにおいてすら、真の学者を見つけるのは難し く、ノーベ ル賞をもらっていなくても、あるいは学位というものがなくても学問的に優れていて、かつ知恵をもつと多くの人から尊敬される人は世の中にいます。 |
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ここで言う大学の先生とは、真の学者になろうと努力している人たちであると、定義しておきます。 つまり、学者の卵、かなり上級の(ときには、とうが立った)予備校生と言っておきましょう。 大学の先生が、ある意味で質を保証できるのは、真の学者になろうとする努力だけです。その代表的試練は、人びとへの愛、学問への愛、真 理への愛 (チェ・ゲバラの言葉に由来します)です。 ここが、小学校、中学校、高等学校の先生と「職業的な環境として」大学の先生を違った存在にしている特徴だと言えるでしょう。 ♪:もちろんそうです。 がんばって! |
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大学の先生と、小学・中学・高校の先生とどのように違うのでしょうか? その具体的な違いはなんでしょうか? 大学の先生は、学生(大学では「生徒」と呼ばず「学生」と言います)を教えるだけでなく、自分自身の研究テーマをもち、勉強(= 「研究」と 言います)をしている人でもあります。これが、大学教授(大学教員)は研究しているとよく言われることです。 大学での研究とは、これまでの大学の先生の先輩たちの研究成果の、継承、再検討、見直し、批判、そして再発見を通して、人間社会の ため、勉 強のため、真理のためになにか役立つことをすることです。 |
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でも、大学の先生はどこにいるでしょうか? みなさんにとって大学の先生のイメージはどのようなものでしょうか? 身近なところ知人や親戚でいらっしゃいますか? マンガやテレビのドラマで大学教授はしばしば登場しますよね?_でもなぜ、これだけ頻繁に大学の先生が登場するのだろう?不思議と 言えば不 思議です。 偉人伝にも大学教授が沢山、タレント教授というスターなみの人気をもつ人もいますね? でも、タレント・スター教授と言われる人も、身近な存在になれば(例えば同僚になる)、普通の人が多いです。 ということは、私たちがイメージする「いかにも大学教授」という人は意外と少ないのですよ。 |
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ここから、大学とは?とうことについて検討します。整理しましょう。 大学とは、小学・中学という義務教育の後にくる、高校あるいは高専の後に進む学校のことです。ただし、高専は、短期大学と同じ扱い がされて いて、高専の先生は「教授」と呼ばれます。また、高専から大学に進学する場合、大学での一部の勉強の科目が免除されることもあります。 大学を卒業すると、大学院(だいがくいん)というさらに上の学校があります。 大学はふつうは4年生です。また、医歯薬獣医などの学部では6年制という奇妙な(正確には中途半端な)専門教育があります。 私は真の専門家にするには、通常の4年生教育終えた後に、(高等司法研究科のように)大学院で専門教を受けるという区分わけの ほうが合 理性があると思いますが、その多くは教育改革に熱心に取り組まない医学部教育制度を模倣するという弊害から来ていると思いますが、これ以上言及すると脱線 するので、詳しくはリンク先へ[Medical Education]) |
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大学という場所は、行ってみてわかりますが、いかにも勉強するところという雰囲気があります。 時計台や、校章や、図書館などがその代表ですね。 ♪:はいどうもありがとうございました。がんばりましょうね。 |
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教育に携わる人にはさまざまな呼び方があります。 1.教諭(きょうゆ):小中高、養護、ろう、盲学校、特別支援校などの先生は、教員免許法による合格者だけが名乗ることができます。ま た、その 資格の維持や剥奪についても、きちんと管理指導されています。 2.教授(きょうじゅ):先にも触れましたが、大学の高専の先生です。高専のほうはよくわかりませんが、大学の教授になるための資格試 験という ものはありません。私が、大学の先生(=教授)というのは、誰にもなることができると言ったのは、このような意味からでした。 ♪:すごいだけでなく、苦労も多いぜ〜。がんばりましょうね。 |
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もちろん、大学の先生は教授だけではありません。 教授のほかに、准教授(じゅんきょうじゅ)、講師(こうし)、助教(じょきょう)というランキング分けの身分というものがあります。ま た教授の 肩書きにも大学ごとに特任(とくにん)、特命(とくめい)教授、名誉教授などのさまざな制限や利点がついた役職があります。それ以外に、研究員というもの もあります。これらは、身分あるいは階級というものに近いと言えます。 世間で一番エライはずの大学の先生たちは、すでに古くさくなったと言われ、多くの民主主義社会で廃止された階級制という世界の住人であ るのと嫌 みを言うこともできます。ただし、このクラス分けについては、ボクシングのウエイト(例:ライト級、ウェルター級、ヘビー級など)などのランキングと変わ らないとか、会社で言うところの係長、部長、重役のような違いと同じなので、大学の先生の頭が古くさくないと屁理屈を捏ねる意見もあります。 ●ここで、教授になるためにどんな約束があるのか?「大阪大学教員選考基準」というものをみてみよう! 大 阪大学教員選考基準(リンクします!) |
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さて、ここからが大学の組織についてです。 大学の組織は、4年間の学生が所属する学部(がくぶ)というものがあります。大学院では、所属組織としては研究科と呼ばれる集団に 属してい ます。大学院は、2年間の履修期間の修士課程(しゅうし:あるいは博士前期課程)および博士課程(はかせ/はくし・かてい:あるいは博士後期課程)という 組織があります——ただしこれにはいくつかの変種があります。 学部と研究科が大学のメインの組織ですが、大学での研究と教育を支えるために、必要な組織があります。つまり、各種の研究所、研究 セン ター、図書館、そして、これが必要不可欠で大切な組織なのですが、事務組織があり、ここでは、将来の計画や設計、実際の運営、および経理を担当する会計と いう組織があります。 |
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大阪大学とはどういうところでしょうか? 2009年4月現在で、10学部、11研究科と、学部をもたない5つの研究科があります。さらに5つの研究所、3つの病院、1つの 図書館た だし、分館が数館あるいはそれ以上あります。また、学内には21以上のセンターがあります。 学部学生と大学院生をあわせるとなんと2万4千人もの人たちが勉強しています。まさにひとつの共和国のような感じです。ちなみに、 阪大の豊 中キャンパスのサイズは、バチカン市国と同じ大きさがあるのです。 この2万4千人ちかくの学生を支えているのが、5千人の教職員です。 |
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このような数字を聞いて、阪大はでかい、あるいはでかすぎる!と言わないでください。 上には上があります。 現在、大学の廃校化がようやく始まりましたが、2009年4月の時点では、日本の大学数は役720校、そのうち私立大学は560校 ほどあり ます。 国公立大学は160校ほどあり、国 立大 学——と言っても国が経営しているのではなく国の費用で運営している国立大学法人という法人資格の組 織——は、全国に87校もあります。 大学の先生の数は、およそ16万7千人です。これは日本の医師の数よりも少ない数です、スライドをみて、男女比についてもよくご覧 くださ い。 大学の学部生の数のランキングでは、日本大学7万、早稲田大学4万5千人、立命館大学3万6千人、東海大学3万2千人、近畿大学と 明治大学 が3万人います。阪大の学部学生は1万6千人です。 |
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大学の先生の仕事にはどんなものがあるでしょうか? 大学の先生の仕事は昔から、研究と教育にあると言われてきました。 しかし、私じしんが実際に働いてみると、大学の運営という仕事が結構多くあります。 ここでの大学の運営業務とは、管理、入試、予算、広報などの活動に関わるものです。 |
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大学の先生の教育上の仕事あるいは使命(ミッション)とはなんでしょうか? それは以下の2つです。 1.学生に勉強を教えること 2.学生が学問の習得にもとづいて、現在および将来においてただしく生きることができるように「知恵」を授け、また学生が自分自身 でそれら の知恵を身につけるようにすることできるように、側面から指導することです。 |
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大学の先生になるには、どうすればよいでしょうか? むかし「教授の上司に毒を盛ればよい」などの冗談で盛り上がりました。もちろん、そんなことはできません。それは前項で説明したよ うに、大 学の先生の使命=ミッションは、学生が正しく生きることを教えることですので、先生がそれを破るわけにはいきません。それどころか模範にならなければなり ませんんで、大学の先生は、民主的で、公平で、かつ公正でなければなりません(これは厳しいことですが、逆にこの部分をクリアすれば「自由に」教育や研究 をすることが保障されているので、みんなの模範になることには、それなりの意義もあります)。 もとい。ふつうのコースは、大学を卒業してから、大学院に進学し、博士号(はかせごう)の学位をとり、研究を続け、大学教員の募集 に応募す ることです。 もちろん、一度社会人になり、大学院に入って勉強し、大学教員になる人も増えてきました。 ♪:いいでしょう? がんばりましょうね。 |
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以下のコメントは、このページで使われたスライドを使って、大阪府の公立中学校の生徒たちに授業したときの感想と私のコメントです。 授業の感想(抜粋):「今日はとてもきちょうな経験をしたなと思いました」 ♪:そうでしょう、そうでしょう。がんばりましょうね。 皆さんの質問・コメントが私の話題提供をより深いものにするでしょう!!
写真は、グアテマラの先住民マヤーマムの社会運動家ロランド・ロペスさんとの、第5回ラテンアメリカ水法廷の会場での記念写真です。 |
■ 本当に大学教授になりたい人には、さらに具体的な計画と専門的知識が必要です。
■ 中学生・高校生のための文化人類学講座
ラスプーチン教頭からのご挨拶でした!