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片付けるべきジョブ(Job to be done)理論

Job to be done

犬のジョブ理論:犬は齧りたい欲望(=ジョブ)を実現したいために、ビニール草履をバラバラにする

池田光穂

■片付けるべきジョブ(Job to be done)理論について

クリステンセンのジョブ理論においては、「消費を、あ るジョブを雇用する」という枠組みで考える。

たとえば、あるビジネスパースンが、出張の行きがけ の空港のスタンドで新聞を買うとする。その時、ジョブ理論では、新聞をコスト(=代金)を支払って雇用したと考えるのである。では、何のために雇用したの か?さまざまな事前の理由や事後の理由が考えられる、たとえば情報入手(=昨日起こった事件の詳報が載っている)なのか、飛行機のなかでの時間つぶし(= 退屈な機内の安全手段を手持ちぶたさで聞かないで済む)、あるいは、出先のビジネスホテルの風呂の中で連載小説を読む、あるいは、濡れた靴に入れて翌日の ために乾かすためにとっておく。新聞はそれぞれの用途に、雇用され、顧客(=ビジネスパースン)に対してジョブをおこなう。

我々は物事を単に消費しているわけでなく、消費した もののなかにジョブを見出しているわけである。金を支払ったから、元を取りたい。消 費を真剣に考える人は、その消費にさまざまなジョブを見出せば、投下し た資本よりもより多くの利益を回収できるわけである。これは、物を大切に使う以上に、資本の増殖をも加味している点で、生産的である。そし て、雇用主に とって、満足できることは、投下した資本に対して、それに見合ったジョブをその消費財が果たしてくれることである。また、雇用主が、その消費財を購入(= 雇用)して、もとめることは、最初の片付けるべきジョブ(Job to be done)をやってくれること(=求めていた情報を提供してくれる/暇を潰してくれる)である。あるいは、製品を提供する人は、それぞれのユーザーが未だ満たしていないジョブを提供(=表出)するように、デザインすべきなのだ。

ベスト&ロングセラーである『破壊的イノベーターの ジレンマ』 の著者であるクリステンセンが、このジョブにこだわるのは、なぜだろう。それは、こ の世の中の消費は、すぐにはジョブを見出さない、なあなあの消費、ある いは「儀礼としての消費」があることで、これは、投資効果を考えていない非合理的な消費である。また、雇用者も、消費財を提供する製造業者も、「片付ける べきジョブ」をより明確に意識することが重要である。さらに、イノベーションを加速する理由として、クリステンセンは、イノベーションを、(1)ローエン ド破壊、(2)市場創造、そして(3)持続的イノベーションの3つに分類しているが、ジョブ理論は、(2)の市場創造、とりわけ無消費のユーザーに、ジョ ブを売り込むという点で、大きな市場価値があると考えるのである。さすが、破壊的イノベーション(Distruptive Innovation )という、パラドキシカルな用語を創案しただけの大物(実際に身長が高かった!!!)である。


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