文化人類学におけるフィールドへの旅立ちについて
On Journeying into the Field in Cultural Anthropology; 知的生産学入門:学術情報の収集と発信2:文系
Fotos: Las Imagenes del trabajo del campo. Jovén
Primatólogo Dr. Koshin Kimura trabajaba en la cuenca del Amazonas, ca.
1976-1977. Con probación por Dr. Kimura
★このページでは、フィールドワークへの旅立ちを、1)資金調達、2)リサーチプロポーザル
の作成、3)現地語の習得、という3つの柱から考えます。
【資金の調達】
世の中なんだかんだと言っても、やはり先立つもの=資金がなければ、立派な計画も絵に描いた餅。しかし、一度フィールドワークを経験したも のならば、海外の事情も多少なりともわかるでしょうが、全く経験のないものにとっては、完全な未知の世界。そのような学生・院生に未来は開かれるのでしょ うか?
残念ながら、日頃の研究成果を学会誌などで公開し、知名度をあげおき、研究奨励金や助成金をもらうか、自腹を切って調査旅行をおこなうしか ないようです。
知名度の上げ方ですが、ファーストハンドのオリジナルの民族誌データはなくても、文献を資料にした研究論文で学会誌などに投稿はできます し、その種の論文を通して、来るべくフィールド調査のために頭を鍛えておくことはとても有用なことなのです。
結論、外部資金が調達できればそれに越したことは、ありませんが、最悪、自分の資金だけで、貧乏旅行してもかまいません。現地にでかけること、それが大切です。ただし、現在では、外務省の海外危険情報などのサイトをチェックして、危険な地域、紛争地域は避けたほうがいいです。命あっての物種です。
現地調査のためのリサーチプロポーザルについてのマニュアルはありませんが、学 部の初学者むけに書いたリサーチプロポーザル(調査計画書・研究計画書)の書き方をふくめた文化人類学調査研究入門なるものを書きましたので、この行でリ ンクしてください。
(ヴァーチャルな夢の実現ですら)リサーチプロポーザルを作成することがなぜ重要なのでしょうか?その理由は3つにわけられます。1)自分の研 究のテーマ、方法論、フィージビリティ(実現可能性)を具体的に考える機会を与えてくれる、2)フィールドの情報に関するインターネットならびに文献情報 を収集し、それをリサーチプロポーザルに反映させることで、地域の研究者(ないしは卵)としての自覚を形成すること、3)プロポーザル点検中に、その研究 テーマに関する、先行研究を調べるだけではなく、他の地域の同一あるいは類似のテーマの情報を収集することができる(→下記の図を参照)。
【図の説明】私のフィールドは中央アメリカの地峡地帯である。しかしその地域には、北部には中央アメリカやメキシコ、南部には南米が控えてい
る。その中でフィールドワークをするのだ。そして、私が研究したいのは、現地の宗教である。しかし、現地の宗教をしらべるためには、現地の人たちのコスモ
ロジーや神話、さらには、気質(Ethosと記載)についての知識が必要である。
【現地語の習得】
文化人類学の内実をよく知らない門外漢の同僚は、文化人類学者を<異文化 の理解のプロフェッショナル>と読んでくれます(褒め殺しという説 もあるが!)。しかし、調査対象の現地のことを知れば知るほど民族誌が書けなくなるように、文化人類学における<異文化理解>というものが容易なものでは ないのです。それは、簡単に越せる丘のような甘っちょろい対象ではなく、厳冬期のマッキンレー、風速80mのチョモランマ、ブリザードの吹く南極のよう な、とんでもないハードな対象であることを忘れないでください。
その最初の難関は、あたり前ですが<異邦語の理解という言語の壁> です。ことばの学習には終わりはありません。言語能力は天賦の才能に左右 されますが、現地での原語による調査においては、言葉のニュアンスやあや、あるいは発話の文脈の理解などがリアルタイムに総合的判断してゆく必要があり、 これだけは場数を踏んでゆくしか上達の道はありません。
フィールドでは、あともうちょっと現地語を理解できたらなあ〜、という焦燥の気持ちが永遠になくなくことはないでしょう(研究者によってそ の程度はさまざまでしょうが)。
というわけで、フィールドにいようが、ホームに帰ろうが、現地語を学び続ける努力は必要になってきます(もっとも不完全性を理由に悲観する ことはまったくありませんが・・)。
現地語は、現地でならうほうがよいに越したことがありませんが、よくみられる困難が2つほどあります。1)正統な文法知識とりわけ記述言語学に
ついて知識のある現地人がすくないこと(最近は言語復興運動のおかげて、地元の人でも力をつけて、論文をバリバリ出している人たちが増えてきたのは頼もし
いことです)、2)限られた時間のなかでは、言語の習得を重視するのか、それとも調査データの収集を優先するのか、時間が限られていますので、こまること
です。でもそのような葛藤を抱えることで、さまざまな工夫をすることで、フィールドが、研究者(あるいは研究者の卵)を鍛えてくれることもあります。
■クレジット:知的生産学入門:学術情報の収集と発信2:文系「文化人類学における研究成果にいたる道」(フィールドへの旅立ち) Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
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